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異世界再干渉

尋賀が始めて異世界に行った山のふもと

尋賀は振り返り、真剣な表情で質問する。


「もう一度聞くぞ? おめえら本当について来るのか?」


尋賀は三人全員に聞く。

優作は表情を変えずに答える。


「ついて行くよ。言ったよね? 君の力になるって」

「オレの印象だと異世界は随分と厄介なところだったぞ。人や魔物に殺されて死ぬかもしれねえ。それでもついて来るのか?」


優作は静かに頷く。


「……分かった。好きにすりゃーいいさ。死んでも知らねーぞ」


尋賀は美玲にも尋ねる。


「おめえもついて来る気、満々だよな?」

「もちろんだ! 異世界に行けることに私の感情は! 大きく燃えている!」

「……おめえはあんまり異世界の事を聞いてねえだろうから言っておくけどな。異世界の騎士なんて酷いもんだぜ。気に入らない奴は誰彼構わず極刑だって、向こうの世界の騎士が言ってたぜ」

「なっ!」


美玲は心底驚いた表情になる。

自分の信じていた騎士というものが、実際には理想よりも大きくかけ離れている事にショックを受ける。落胆し、しばらく落ち込む彼女だが、すぐに顔を上げて答える。


「……私もついて行くよ。こんなチャンス、二度と無いから」


その声は、いつもの演技がかった声ではなく、ひどく弱々しいものだった。

それでも美玲は続ける。


「……例え本物の騎士が異世界にはいなくても、私は本物の騎士を知っているから」

「あん? どういう意味だ?」

「本物の騎士の心。その心を持っている人を知っているから、異世界について行けば私はその人のように本物の騎士になれるよ」

「……なんだそりゃあ?」

「……ふっ、弱気になって私らしくなかったな。私がついて行くのは異世界の騎士に出会う事、そして異世界で真の騎士から騎士道を学ぶことだ!」

「……相変わらずお前は訳分からねえのな。もう理由聞かねえから好きにしろ」


尋賀がそう言うと、優作が、君は意外と鈍感なんだね、と彼の耳元で呟くが、尋賀には全く意味が理解できなかった。

最後にナゲリーナにも質問しようとしたが、尋賀は異世界に行く理由を改めて確認しようとする気にならなかった。


(こいつに異世界に行く理由は聞く必要はねえな。こいつはただの魔王。あんまり深く関わるのは、まじーよなぁ……。どうするべきか……)

「…………」


ナゲリーナは無言のまま、一切表情も変えずに立っている。

見た目こそ普通少女に見えるが、考えていること、今までやったことを考えると、とても人間ができること、人間がやることではない。

近くに彼女を置いておくと酷い目に会うことは目に見えている。

だが、彼女がいないと異世界に行き来できない。

こちらの世界に帰ろうとするならば彼女の協力がどうしても必要になる。

どうするべきか考え込む尋賀に、優作はアドバイスを送る。


「どうせ連れて行くかどうか迷ってるんでしょ? 一緒に連れて行くべきだとボクは思うよ」

「へえー、そいつはどうしてだ? 優等生?」

「彼女は異世界で暮らしてるからね。きっと異世界の暮らしや文化に詳しいはずだよ。後は彼女がボク達に危害を加えるかどうかなんだけど……」

「それが不安なんだから考えてるんだって。オレの身体を奪おうとするし、美玲を魔物化しようとした。信用なんてできるわけねえだろうが」

「うーん、それじゃあナゲリーナ」


優作は尋賀との会話を中断してナゲリーナに話しかける。


「ねえ、もうボク達に無断に薬品を使ったり、ボク達を傷つけるような真似はしない?」

「しない」


ナゲリーナの答えを聞いた優作は尋賀に視線を向ける。

だが、尋賀の顔色は変わらない。


「そんな口約束で信用できるかっつうの。そんな言葉よりもとっとと根拠をだせよ、根拠をよぉ」

「相変わらず君は捻くれているね……」

「今はオレがどうのこうのじゃなくて、こいつが信用に足る存在かどうかだろ。お前の考えはどうなんだ?」

「とりあえず彼女はもうボク達に危害を加えないと言った。もし、また彼女が何かしようとしていたら、ボク達、三人それぞれで彼女を警戒すればそれでいいと思うよ」

「……分かった。とりあえずは優等生の考えに賛成しとくわ」


朝の日差しが強くなってくる。

全員の意思表示が済んだところで、尋賀は自身の顔を叩いて気合いを入れ直す。


「よし! おめえら行くぞ! 異世界へ!」

「「おー!」」


尋賀の言葉に、優作と美玲は手を上げる。

ナゲリーナ以外の全員がやる気充分だと確認すると、尋賀は山の中を歩き始める。三人は彼の後ろについて行き、山の中をゆっくりとした足取りで歩いて行く。

やがて、ナゲリーナが地面に陣を描いた場所にまでやって来る。


「陣が消えてるな」

「時間が経てば自動で消滅する。長い時間、術を長時間維持させるのは難しい」

「んじゃあ、術でコネクターズカオス現象ってのを止めるのも難しいのか。

ま、術でもなんでもいいけど魔物がこっちの世界にやって来ると困るからな。全てが終わったら、はえーとこその現象を止めてくれよ」

「……無理」

「はぁ? ……なんで?」

「コネクターズカオス現象を解決するためには、二つの世界が干渉させない、つまり引き離す必要がある。でも二つの世界を強引に切り離すのに強大な力が必要。この時、力があまりにも強すぎると二つの世界が滅んでしまう。 わたしの友も切り離しができないから片方の世界を潰す事で世界の安定化をしようと考えていた事もあった」

「……よーするに解決しようとしたら両方の世界が危ねえってことか。解決できねえなら山の周辺は、いつ魔物に襲われても仕方ない状況がずっと続くのか」


魔物の脅威に常にさらされ、山に入れば異世界に行ってしまう人が続出するかもしれない。

尋賀は顎を触りながら考える中、魔物の話題に美玲が食いついてきた。


「ふはははははは! たとえどんな魔物に襲われても我々騎士団、全力で魔物を狩って見せるぞ!」

「騎士団じゃなくてお前のジィさんと愉快な仲間たちだろ。いくらおめえのジィさんが狩りのプロだからって相手は魔物だぞ。流石に無理があるだろーが」

「むっ! 我々騎士団を愚弄する気か!」

「愚弄してんじゃえねーよ、老骨どもにバカな事をさせんじゃねえって言ってんだ」

「それが愚弄しているって言っているのだ!」

「無茶させるなって言ってるんだよ」

「我々は負けぬ!」

「危ねえから家で俳句でも読ませとけ」


喧嘩しそうな勢いの二人を優作がなだめる。

その言い争いの中、ナゲリーナの様子がおかしい事に優作は気づく。

なぜだか周りをキョロキョロと見回しており、異世界へ行くための陣を描こうとしない。


「どうしたのナゲリーナ? なにかあったの?」

「……おかしい」

「? 何が?」

「コネクターズカオス現象が……すでに発生している。それも全員に」

「え? それって異世界にもう着いてるってこと?」

「……コネクターズカオス現象の発生率は1パーセント未満。それが四人全員同時発生したと考えると、確率はほとんど0に近くなる。つまり、そんな事が起こりうるのは、コネクターズカオス現象の発生率が現在、極端に上昇している」

「そ、そんな! それじゃあボク達の世界で魔物に襲われたり、山に入るだけで異世界に行ってしまうって事!?」


優作の声に尋賀と美玲は始まりそうになっていた取っ組み合いを中断し、ナゲリーナの話を聞いている。


「それだけではなく、そう遠くない未来に二つの世界がぶつかり合い、滅ぶ。この危険状態を危惧して友は、世界の片方を消そうとしていた。なのにそのことに気づけなかった……」


突然聞かされるナゲリーナの言う世界の危機に、三人は慌てる。

美玲は、慌てつつもいつもの演技口調で話す。


「ちょっと待ってくれ! そのなんとか現象で異世界に渡るのだったな!? 昨日は騎士団の面々……おじいさま達は全員帰ってきていたぞ! まだ確率は低いのではないか!?」

「……それは恐らく昨日の段階ではコネクターズカオス現象の発生確率が数パーセントだったから。今は数十パーセント近くにまで上がっていると思う。急いで解決策を考えなければ約一ヶ月で世界が滅ぶ。そうでなくとも友がこの事態に気づけばどちらかの世界は滅びることになる」


ナゲリーナの突然の告白に全員、ただただ黙って聞いていることしかできなかった。



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