僕TUEEEけどドラゴンもっとTUEEE! 神様ニートだし
「きみたち誰ぇ!?」
と、小さな女の子が現れた。
単に体が小さいだけじゃない。見るからに年端もいかなそうな彼女は、推定○学生(八歳くらい?)の少女というか幼女だった。
生徒たちが目を瞠っていた。
中に人がいるというのも意外だったが、それが幼女で。
その上、その彼女と来たら独特な服装までしていて。
「何者ってきみこそ誰? この極寒地でそんな薄着一枚って?」
許可なく人のハウスに侵入してきた好美が、自己紹介もせずそんなこと聞いていて。
薄着一枚……そうである。室内にいた少女は、なぜか白いビキニ姿だったのだ。
暖房がよく効いた室内とはいえ、普段着(?)としてはどうにも風狂な姿で。
「この格好のどこが問題? 雪原らしく雪をイメージしたこのビキニのどこが?」
礼儀知らずな好美に、不快感を露わに口を尖らせ少女が言い返していて。
「どこがって全部おかしいぞ。雪をイメージかなんだか知らないけど、そんなカッコとか。それに、きみ、その頭に付いてるのって何?」
幼女の黒髪頭に、垂れ耳……白くてぺろんとしたイヌ耳が付いていた。
首や手首、足首辺りにもふわふわした羽毛状の白い布を巻き、白いふかふかしたブーツまで履いていて。
「このイヌ耳もどこがおかしいの!?」
「どこって? そんなの普通誰も付けてないよ。こんなとこで変なコスしてんじゃないよっ」
喧嘩腰で罵り合う幼女と女子高生。
ドア入口付近で状況を見守る生徒たちも、うんうん頷いていて。
「このイヌ耳が変だって!? これこそあたしみたいな超可愛い神にふさわしき、マレびとスタイルじゃないぃぃ!!」
突如理解しがたき主張をしてくる幼女に、
「超可愛い神ぃ? マレびとスタイルぅ? 何言ってんのきみぃ!?」
声を荒げる好美。
(おかしすぎるよ、この娘。服装もアレだけど発言もアレすぎ。こんなとこに住んでる変コスプレイヤーって何者? 神とかありえないだろ。生活費とか電気代とかどうしてるんだ?)
が、引き続き少女が返してくるのはこんな台詞で。
「寝ぼけたことぉ? あたしの名前はモンチュ・UT。正真正銘の神だからぜんぜんちっともおかしくないぞっ。何も寝ぼけてないだもんっ♪」
首と一緒にイヌ耳をぶるぶる振ってきて。
「はああああ? モンチュ・UT……正真正銘の神だとぉ?」
(何言ってんだ。モンチュ・UT? それが名前? その名前のどこが正真で何を正銘してる? 病んだ不思議ちゃんかこの幼女? 雪原に一人でいてほとんど人にも会わないだろうからあたしが世界になっちゃったのか?)
ボケ倒してくるような幼女の台詞に、そんなこと考えつつも好美は圧され気味で。
自称するだけあって、確かにこのちびっ娘は可愛い。
いわゆる瓜実顔ーー色白卵型で前髪パッツンしてないロング(ピンで止めてる)。黒髪ツインテールにぱっちりお目々。頬がぷくっとした美少女、じゃなくて美幼女で。
「寒いから、早くみんな室内に入ってドア閉めてよっ」
ドアを開けたまま入り口付近で立ちすくむ生徒たちに、腕を組み背を伸ばした幼女が威圧的に言って。
「「「「はいぃ……!!」」」
戸外にいた二年A組の生徒三十八人(除く・僕と綾香と生徒会長とロサ)が、次々室内に入っていく。一人二人三人四人続々と。全員が入ってばたーんとドアが閉まると。
ビキニ幼女が椅子に座って、デスク上にあるキーボードを叩き出していて。
室内中央で、槍を持った好美が話している。
「神って? もうこんなこと聞くだけ無意味な気もするけど聞いてやろう。きみがいったいなんの神様なんだ?」
そう言って床をとんと槍を付き、Dクラスの胸を突き出す好美に
「何って? 正真正銘の戦の神様だよ♪」
パソコンに向かったままうそぶく幼女。
「「「いくさの神~~!?」」」」
と声を上げたのは、好美だけでなく今室内に入ってきたばかりの生徒全員で。
(ビキニ幼女が「戦の神」? 何それっ。なんで、そんな小さくて変コスした神様がこんな辺鄙な雪国のプレハブ在住?)
「戦の神? とか言われても信じるの無理なんだけど」
好美が一呼吸置いてから続けて。
「神様ってきみ何才なんだ? 見た感じ八歳かそこらだけど」
そう問われ、パソコン画面から振り返り「”むー」と頬をぷっくりさせた幼女が次に口にした台詞があまりに予想外というか衝撃的で。
「あたし? あたしは三千九百四十五歳だよ〜~っ!!」
んなこと言って、天真爛漫な笑顔でにんまり幼女。
「「「”えええ!?」」」」
その信じがたき告白にまたも全員どよめいていて。
「神って寿命が長いんだよ。人類から見たら不老不死なくらいに」
奇怪な主張を続けるビキニ幼女に
「きみって超お年寄りのくせしてそんな幼女みたいなの!?」
思いっ切り不覚を取られた好美がそう言い返せば。
「なんだよ、ババアみたいな幼女って礼儀知らずなやつだな。神に向かってなんて口聞きやがるこのJK!!」
(って、ほんとにこいつは神なのか!? 病んでる世界系じゃなくて?)
「だって幼女じゃん。そんな幼児体型って」
「幼児体型~~!?」
と素っ頓狂な声を上げ椅子の上で背筋を伸ばしてない胸を張る自称神様。
その姿を目にした好美が、頬をゆるめ意地悪な声音で。
「戦の神って、ぺちゃんこ幼女が普段何してるのよ?」
「何もしてないよっ。ぺちゃんこでも幼女でもないしぃっ」
またもない胸張って断言幼女。
「じゃ。きみ、ニートか。いや、それは違う? 神様だから親はいない? こんな厳寒の僻地に住んでる孤独な身だし?」
幼女と女子高生の戯れトークが脱線していき、その様子を眺めていた生徒たちもツッコむ隙すらなき幼女トークに沈黙する羊の群れと化していて。
「いや、立派なニートだぞ」
ダメ押しのように幼女神ない胸張って
「ニートって?」
イヌ耳を両手でなでなでしながら、椅子の上で語り始めたのだ。
「説明しよう。神であるあたしの数奇な運命とその悲哀を(右手で右目を抑え、さも演技っぽくぐすんとやって)。かつてあたしは、誰もが恐れ敬う戦の神だった。世界の何処かで戦があり戦力がほぼ互角であれば、最終的な結果は神であるあたしに委ねられる、かほどのレベルの上位神で。人々もそれを知り、年中盛大な儀式や祭りをやらかして、あたしを喜ばせようとしていた。しかし、その状況がある時一変した。近代に入ってからだ。産業革命以降、兵器や工業に依存する戦争……血も涙もなく、ただ結果のみを効率的に求める殺伐とした銃器戦が世界的に広まり。互いの武力や魔力を競っていた中世の対人戦(戦)は、終焉を迎えた。戦がなくなれば、畢竟その神に祈る者もいなくなる。古い神であるあたしも、すっかり出番がなくなってしまってなー」
「「「へええ……」」」
滔々と語り出す幼女だったが、好美もクラスメイトも特に感情移入することはなくテキトーに聞き流していて。
◆ ◆ ◆
雪原でバトルが始まっていた。
黄金龍VS僕と綾香と生徒会長と魔法使いリサの。
ブレスをやめた龍が、九つの頭を振り四人に襲い掛かってきた。
「風船防御」
杖を掲げリサが唱えた。
ぼふわんっ。彼女のそばにいた僕ら四人が、シャボンみたいな透明な球状の膜に包まれた。
一見薄い、表面張力でそこに存在するかのような膜だったが、それは見た目に反し、僕らを中に包んだままふわり宙に浮かび上がるほどの丈夫さで。
がしゅるぅ!! 球膜へと龍頭が角で襲いかかってきた。
しかし、それらもゴムボールに当たったようにばうんと弾き返されて。
やつも引かない。九頭で球膜を囲み複数の眼を血走らせてぼふああん! 白い霧を吐いてきた。その霧に覆われた半円バリアが白く染まっていき。
「「「……視界が閉ざされていくぅ!?」」」
膜内部から外に見えていた九頭が、膜が曇ったせいでこちらから見えにくくなっていた。じきに龍だけでなく全景が白くなっていって。
ぼしゅっ。ぼしゅるるっ。
霧の効果だったらしく、それに当てられた被膜が一部溶解し始めていた。一箇所、二個所と穴が開き始めたら、ぷっしゅ~~っ。開いたところから空気が漏れ、宙に浮かび上がった僕らと共に球膜が降りてきて。
溶解が進んだそれが、地に着いた頃にはほとんど消滅していて。
「「「消えちゃった」」」
雪原に放り出された僕らを、上方から九頭たちがきょどきょどと見回していて。
……この状況、守備に徹することは不可能。とは言え、魔物のあの頑強さ……並みの攻撃も通じない。でも、ここはだからこそ……。
やるしかない?
場当たり的ではあるが、その場で決意した僕は。
「武器召喚」
その禁呪を口にしていた。
武器召喚。読んで字のごとくだ。
使い魔や使役獣の召喚ではなくツールの召喚。武器を携帯せずに、一部ハイクラス武器を除き、ほぼすべての武器をその場に呼び出せる魔法。
ほぼすべての武器を呼び出せること、イコールそれらを使いこなすスキルも必須になるから、この魔法は封鎖者でも使える者が少ない。通常武器だけでなく、古代の神器や想像上の武具までコール可能なゆえ、世界を波乱に陥れかねないほどの危険な攻撃力を潜在的に持つ。
それゆえ、どうしても倒せぬ魔物を前にした時や絶体絶命のピンチにある他封鎖者を助ける時等しか使ってはならぬというキビしい枷が使用者に課される禁呪でもあって。
「ロンギヌス」と続けた。
ぼふわあん。目の前に白い煙幕が立ち上がる。
中に切っ先を上にした一本の槍が浮かび上がっていて。
煙に両手を伸ばし槍を掴む。その場でさっと右斜め上から振り降ろすと、ひゅううん。小気味良い音を立てていて。
……まるで空気を切るような。黒光りする刃に金属質に冷たい柄(なのだが、プラスチックとの合成物であるそれは軽い)。この風合い、普通の武器じゃない。
キリストの死を確認するためにローマ兵が刺したと言われる聖遺物、「所有するものに世界を制する力を与える」との言い伝えまで有する聖槍だから、当然と言えば当然だが。
「ぼげあああ!」
「ぐぎゃりゅりゅう!」
「うぎゅじゃああ!」
上方から襲い掛かってくる九つの龍頭。赤い舌を出し牙を剥いて来たのをがあああん! ぐああああん! 片っ端からロンギヌスではらっていって。
ところがまたも。
「え……? 効いてない?」
槍に一閃されて顔をのけぞらせた九頭が、すぐさま態勢を整えぎろぎろと睨み、「「「ぐぎゃるぎゃああ!」」」と復活してきて。こっちが力尽くだったというのもあるが、他の武器同様、龍自体には傷を与えられていなかったようで。
ズガガガガ! ついに、綾香のマシンガンまで火を吹き。
右横から僕に襲い掛かろうとする龍頭と頸部を銃撃。
やつも頭を退いて刹那苦悶の表情を浮かべていたものの、「「「ぐぼるげええ!」」」と復活するのには数秒とかからず。
「いんばるねばらぶりてぃ!?」
……マシンガンも効かない?
びびびびび。生徒会長も、十字架から七色の光線を発していて。
光に九頭は一瞬目をつむったが、色魔の時のような目覚ましい効果は見られず、迫り来る龍頭にびびびびび、うさ耳生徒会長が後退しながら光線を浴びせる脱力気味な展開。
ぽっこん、ぽこぽこ。魔法が通じないロサも苦し紛れに弱小な杖で対抗していて一応それが当たりはするものの、首を引っ込める魔物はタイムサービスででもやってくれているようで。すぐに舌を出し首を出してくる。
ほんと、両者ともにその場しのぎだ。
……この戦況苦しすぎる。一転させるのに何か良策は?
ロンギヌスを上下左右に振れば「「「ぎゅぬおお!」」」と後ろから来るし。
振り返って大上段からがううううううん! とやってもまた逆から「「「がしゅらあああ!」」」
……キリがない。これが続けば消耗戦。
こっちは焦りすら覚え始めていた。




