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序章
右に緋を、左に紫を持つ銀髪の神威。
それはある伝説に登場する、最強の存在。
『私』はその伝説を子守唄代わりに聞かされて育った。
一夜で幾千の敵を焼き払い世界を混沌に貶める反面、誰より命を奪うことの残酷さを重く受け止めていた。
敵を無慈悲に殺しては、殺した敵を弔い。
抵抗する意志のある者だけの命を奪い、意志のない者は安全な土地に逃がし。
その矛盾が『私』にとっては憧れだった。
伝説上の存在と言えば、全てが完璧で、全てが正しくて…そんな存在だと思う。
でも、そうじゃなかった。
その伝説のおかげで、私は「全て完璧な人なんていないんだ」と思うことが出来た。
そしていつしか私は成長し、高校2年生の春を迎えた。
無論、小さい頃に聞かされたその伝説のことなど微塵にも覚えてはいない。
だけど5月の連休が過ぎてから、クラスの空気が変わっていた。
そう、誰も根本的に気付かないが私には多少なりとも感じる違和感がそこにあった。
それこそが、今回の騒動の始まりだった――――――……。