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だんごによって保健室へと連れて行かれた俺。きょろきょろと辺りを窺うだんご。
「どうやら、保険医の先生は居ないようですね」
「……まぁ、放課後だしな」
本来、保険医の先生が仕事をしているのは、休み時間や昼休みばかりでしょうし。
今日のような放課後に先生が居るのも珍しいけれども。
……まぁ、保健室の先生は、髪ぼさぼさの白衣を着た狂科学者と言えるような先生だし。出来るだけ俺も会いたくないから良いのだけれども。
「おや? 君達も何か用なのかい?」
と、見覚えのある少し大きめのセーラー服を着た、流れるような黒髪をした女性がカーテン付きのベッドの中から出てきた。
誰かと言われれば、図書副委員長の妹尾綺理ちゃんだった。
「綺理ちゃん、じゃないですか……」
「妹尾綺理ちゃん先輩……ですか」
「君達は何だい? 私を先輩として敬う気が無いんですか?」
何故かは分からないが、保健室に居た妹尾綺理ちゃん先輩はガクッとした表情で床に手を付いた。
落ち込んだ表情で、指で床に『の』の字を書いている。
「ま、まぁ……。君達が来るのは驚いたな……。で、君達は何の用だい?」
いや、それはこちらが聞きたい所なのだが。それを聞いたらいけないのだろう。
「じ、実は……敦が背中に傷を……」
「そうなんだ……」
俺はそう言いながら、背中を綺理ちゃん先輩に見せる。
「あらー……。これはやばいですね。仕方ないですね、絆創膏を借りるとしますかね」
そう言って、綺理ちゃんは机から絆創膏を取り出す。そして、だんごに渡す。
「あっ……ありがとうございます」
「気にしないで良いよ。悪いのは君達のような怪我人を放って置いた学之宮先生が悪いんだよ」
だんごさんは俺の背中の傷痕に絆創膏を貼る。まぁ、これで大丈夫だろうな。
「もうこれで安心だな。ありがとな、だんご」
「い、いえ! 敦が良いなら、それで!」
そう言って、だんごは深々と頭を下げた。
「君達は先輩を忘れすぎだ。まぁ、良いがさっさと帰りたまえ。あまり学校に長居するのはいけないよ」
「そう言う先輩もそうでしょうが」
実際、確かに先輩は皆に頼られてるけど。
同じ学生って事には変わらないんだし。
「私はもう少しやる事があるからね。君達は仲良く、手を繋いで、恋人みたいにに帰ると良いさ」
キラーン!
別にそんな音がなった訳じゃないが、そんな音が聞こえた気がした。
「さぁ、敦! 一緒に帰りましょう!」
「えっ! ちょ! 待ってって!」
俺は上機嫌なだんごに引きずられるようにして、その日は家に帰ったのであった。
勿論、2人仲良く。