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翌日、俺は朝早く1人で学校へと登校した。蓮華と一緒に行かなかったのは、俺の精神が不安定だからだろう。今、蓮華と会ったとしたら、何を言ってしまうか分からない。今の俺の精神状態はそんな感じだった。
俺が学校の教室に入ると、皆が1人で登校する俺を怪訝そうな顔で見ていたが、挨拶をしたら皆、怪しげな顔のままだがなんとか納得してくれたようだ。無理してでも笑顔を作ったのが、功を成したとも言えるだろう。
そして、俺は自分の席に座る。席に座ると隣の席で本を読んでいただんごが本を閉じて顔を上げた。
「おはよう、敦」
「あ、あぁ。おはよう、だんご」
「クフッ……。どうしたの、敦? 鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしてね」
そうだんごはクスッ、と笑う。その顔は昨日までと違って、笑みに溢れていて、生真面目さと言った彼女の人を寄せ付けない要素が薄れていた。むしろ可愛らしさなどの女らしさが強くなっていた。
実際、周りの人間は彼女の変わりように驚いていた。
「どうしたんだよ、だんご。今日はいつもと違うような……」
「昨日、言ったでしょ? 今日からは本気で敦を落としにかかるって……」
そう言いながら、俺の腕をその豊満な胸に押し付けるだんご。
「ちょ、だんご!」
「何よ、何か文句でもあるの?」
別に文句がある訳ではない。むしろその胸の感触がなんとも……!
「おはよう、あっくん! 今日は1人で行ったって聞いてボク、びっくり……」
扉を開けて、そう元気良く入って来た蓮華の言葉は俺とだんごの姿を見て止まった。もっと言えば、だんごの身体も固まっていた。彼女の肩から鞄が床に落ちる。
「えっと……蓮華。これはな……」
「蓮華ちゃんじゃない。私はね、敦の事が好きなの」
そのだんごの言葉を聞いた瞬間、クラスの誰も彼もが固まった。
なんだい、この公開告白は!? いじめか! いじめなのか!
「えっと……だんごさん。ボクは別に敦の恋人じゃないからそんな事を言わなくても……」
「あら、そう? ならば、こんな事もしても良いわよね?」
そう言って、だんごは体勢を変えて、俺に向き合う。そしてだんごは身体をだんだん俺へと近付けて行って……
「ちょ……!」
そして、だんごは
俺の唇にキスをした。
「むぐっ……!」
「ぷはっ……!」
数秒キスをした後、だんごは俺から離れる。その光景を唖然とした表情で見つめるクラスメイト、そして信じられない様子で見つめる蓮華。
「ただの幼馴染さんならば……こんな事をしても文句は言えないわよね?」
「くっ……! あっくん……!」
今にも泣きだしそうな表情で俺を見つめる蓮華。そして、
「あっくんの……馬鹿!」
そう言って、蓮華は扉を出て、廊下へと飛び出していった。
「ちょ……! 蓮華!」
俺は蓮華を追いかけるようにして、廊下へと飛び出して彼女の後を追った。