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月見山だんご。
『委員長』をそのまま人間にしたような生真面目の塊とも言えるような彼女は、確かにクラスでの人気は低い。宿題の回収などで口を酸っぱくして宿題の回収と言う仕事に打ち込む彼女は、敵意や憎悪とまではいかないにしても、少しクラスメイト達も苦手に思っている節があるようで。
まぁ、その苦手意識が悪い方向に進行しないように、不肖ながらも副委員長を務める俺はクラスの調和に勤めていたのだが。
……少なくともそれはうまくいっていると思っていたし、実際上手くいっていた。
だから、俺は気づくべきだった。
それは掛け値なく、別の物も生むと言う事に。
例えば、それはー
「……私と付き合って……くだちゃい」
ー彼女の好意とか。
放課後、窓から差し込む夕日と同じくらい、赤い顔を見せる彼女。
彼女の顔はいつもの凛とした顔立ちではなく、年頃の女の子らしい顔つきだった。
そんな彼女、月見山だんごの一杯一杯な告白に、俺は
「……」
唖然としていた。
驚いていた。まさか……彼女が俺を好きだとは思ってなかったから。
ただのクラス委員長と副委員長。それだけの存在だと思っていたから。だから戸惑いの表情のままで居る俺に、だんごは言葉を続けた。
「別に私は今すぐ、敦から返事を貰えるとは思っていないわよ。あんたにはあんたなりの事情があるんでしょ」
「それは……」
だんごの言いたい事情とは、恐らく榎蓮華の事だろう。俺と蓮華が長年の幼馴染である事情は、クラスメイト全員が知っている。勿論、クラス委員長である彼女も。
「返事はまたいつかで良いわ」
と、彼女は赤くなった顔から噴き出る汗を、ポケットから取り出した可愛らしいハンカチで拭きながらそう言う。
「でも、良いのか? 待たせても……」
「そんなはいそれと、告白を受け入れられるとは思ってないわよ。だから結論が出たら、真っ先に教えなさいよね♪ 勿論、その間も気に居られるようにアプローチは続けるけど」
じゃあまたね、と彼女は帰って行った。あまりにも呆気ない終わりに唖然とする俺だが、顔を触ると自分の顔も熱くなっている事に気づいた。それがこれが現実である事を告げていた。
「帰って……考えるとするか」
俺はそう言いながら、机の横にかけた鞄を取って、いそいそと家へと帰って行った。
その一部始終を目撃していた人物は1人、小さく呟く。
「そんな……ボクは……どうしたら……」
ー俺とボクの今までの関係性は、既に壊れていた。
どうしても蓮華ちゃんの要素が少なくなってしまう現状。
次回は前面に押し出して書くので、よろしくお願いしますです。