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遂に『俺とボクとは釣り合わない』の第2巻、『天才にはあと1歩が足りない』の最終章になります。
「ここに居たのか、綺理」
彼、梶原義人君の声が聞こえたので、体育座りの体勢のまま顔を上に向けて彼に向き合う。
どうやらあの場からすぐさまこちらに来たみたいで、彼の顔には汗が見えていた。
「……やぁ、梶原君。姉川さんは大丈夫なんですか?」
とそう言う。
梶原君と姉川さんに恋愛関係は無い事は分かっている。クラスメイトで、彼の事を観察してきた私には、そう言うのはきちんと理解している。
……でも、こう言うのはそう簡単に割り切れないのが現状でして。
「姉川? あぁ、さっきのね。気にしなくても良いぞ。俺はあいつにそう言う、恋愛感情は抱いて無いからさ」
「……じゃあ、誰となら付き合いと思っているんですか?」
そう言いながら、私は立ち上がって彼の首に腕を巻き付けていた。彼の首は座っている私を見るために、かがんでいたため私でも存分に首に腕を巻きつける事が出来た。
「……え? き、綺理?」
梶原君は驚いている。まぁ、それもそうか。
来たらこれでは、びっくりするのも当然と言うべきでしょう。
そんな驚きの表情の彼の唇に、私は自身の唇を重ねていた。
「え……? 綺理?」
「じゃあ……梶原君は誰が好きなんですか!?」
私は彼に怒り顔でそう言っていた。
「私は梶原君の事が好きですよ! もうそりゃ、ぞっこんラブです! ですから、梶原君と付き合いと思っています!
そして、付き合えるようにこちらでも色々と、画策してきました! なのに……その当人が恋愛に興味が無いなんて……私はどうすれば良いんですか……」
と、そう言いながら、私は彼の腹を自身の小さな手をぐーにして叩いていました。
「……教えてくださいよ、私はどうすれば……梶原君と付き合えるんですか?」
「綺理……。お前……」
梶原君は小さく頷いた後、うんうんと首を頷く。
「……じゃあ、好きな人が出来るまで私と付き合ってくれませんか? 梶原君?」
「それじゃあ……良いけどさ……。俺も……前々から……綺理の事はその……」
梶原君がそう言ってくれるのを聞いて、私の感情は好印象に支配されていた。
私はそう思いながら、彼に抱きついていた。
「お、おい! 綺理!」
「うーん、嬉しい―! 梶原君、私、メッチャ嬉しいよー! うん、愛してますー!」
「キャラ崩壊してるぞ、綺理!」
そう言って、クリスマスの夜。
妹尾綺理と梶原義人と言うカップルが誕生したのであった。
うん、とっても嬉しいです。本当に。
第2巻、『天才にはあと1歩が足りない』
ーfin.




