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1年1組。俺は教室に入ると共に、友達に挨拶をする。ちなみに俺と蓮華の席は机3つほど離れている。小説じゃないので、幼馴染としてもそう席が近い訳じゃない。
「じゃあボクは皆が待ってるから」
「あぁ、行って来ると良いさ」
「ごめんね、あっくん」
蓮華はそう言って、自分の席へと向かって行った。もう既に蓮華の席の周りには数人の女生徒が居た。蓮華は軽く会釈した後、女友達との世間話を始めた。
俺はと言うと、男友達数名女友達数名と軽く挨拶がてらニ、三、話をした後、席に座る。
「よっ、だんご」
「おはよう、敦」
今、俺が会釈した相手、月見山だんごはそう言葉を返した。月夜に生えるだろう銀色のツインテール。端正な顔立ちに赤の瞳の凛とした鋭い目つき。ボン、キュッ、ボンのモデル体型。そして学校指定の黒の制服を着崩さずに着た、人によっては見るだけでその者の性格が分かる着こなし。
俺の隣の席の生徒、このクラスの委員長を務める月見山だんごである。
「今日も今日とて、仲が宜しくて羨ましいわね」
「仲が良いのは確かだろう……。なにせ、幼馴染なんだから」
長年付き合えば、そりゃあ仲も深く深く、良くなるさ。まぁ、中には仲が逆方向で深みに嵌って行く物もあるが。うちは前者の好結果でありがたい限りとでも言うべきか。
「あの、ね! 幼馴染として付き合うのは勝手だけど、きちんとクラスの決め事も守ってよね!」
「あー、はいはい。分かってますよ」
彼女、月見山だんごがクラス委員長だと言うのは話したが、実は俺はクラス副委員長なのだ。
他薦だが。友達が多いのを良い事に、とんとん拍子で結束を固めて俺を生贄にしやがって……。
おかげで、『美人、ただし彼女としてはお断り』でお馴染みの真面目系美少女の愚痴を聞かなくてはならんとは……。つくづく、忌々しい。
「とにかく今日の放課後は用事を入れないでね! 大事な用があるんだから!」
「へいへい、了解したよ」
そして、彼女は廊下へと走って行った。トイレか、それとも友人、はたまたは職員室で何か報告でもしているのだろうか? 一番最後のだと、まさしく委員長の鏡だ。
この時、俺は確認を取るべきだった。
何の用なのか? それを彼女に問い詰める、もしくは先生達から聞けば良かったんだ。
そうすれば良かったと、今でも後悔している。
しかし、俺は「クラスか何かの出来事だろう」と鷹をくくっていた。
そして、1時間目の数学の準備を始めた。その途中、良く話す男友達にノートを貸してやった。
まぁ、数学始める前に、だんごが教室へと帰った直後くらいに返してくれたので、問題は無かったのだが。