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それは秋も深くなってきた11月。
2人の男女は整備されたアスファルトの上に落ちた落ち葉を踏みながら、その道の先にある高校へと足を運ばせていた。その男女は傍から見ている第三者の視点から言わせてもらうと、はっきり釣り合っていないと言えた。
その男のほうである俺、三輪惇はどこにでも居るような平凡な容姿をした男子生徒だった。
首の辺りまで伸びる黒髪、日に焼けた少し黒味がかかった肌。中肉中背の、自分自身で言ってても悲しくなるくらい、どこにでも居るような普通の高校1年生の男子生徒だった。
それに対して俺の隣を歩くこの女、榎蓮華は美少女だった。
肩を越えるあたりでさらさらと風を受けて流れる金色の髪。まるで神が直接作ったかのように精錬された整った顔立ち。リスを思わせる大きな青い瞳と、透き通るような白い肌。少し低めの身体つきながら胸のサイズは大人顔負けと言う、童顔ロリ巨乳で、さらにそれをまるで嫌味と思わせない笑顔は誰の瞳も引き付けられる。
はっきり言おう。俺の隣で歩いているのは、国が保護すると言ってもなんら不思議でない絶世の美少女であり、断じて俺のような人間の隣で歩く人間ではない。
そんな彼女は隣に居る俺に対して、若干上目遣いで声をかけてくる。
「今日も寒いね、あっくん」
親しげに俺を呼ぶ彼女の髪には、去年誕生日プレゼントと称してあげた星の髪飾りが光を放っている。
「あぁ、そうだな。蓮華」
と、僕も彼女に親しげに声をかける。右腕には去年彼女から貰った、明らかに男向けではないビーズのブレスレットが淡い光を放っている。
俺、三輪惇と彼女、榎蓮華とは幼馴染である。小中高と家が近い事もあり、非常に仲良く過ごしていた。
はっきり言って、昔の俺は彼女の事を自慢の幼馴染と思っていた。
勉強も運動も出来て、引っ込み思案で、俺の後ろをひっついていた、「ボク」と言うなんとも可愛らしい幼馴染。
そんな幼馴染をくれた事を、神様に感謝していた。
だが、時の流れは残酷というべきか。俺は悟っていた、彼女の隣には俺は相応しくないと。成長するたびに実感した。
勉強も運動も、ましてや美しさも可愛らしさも併せ持った椿と違い、俺にはちょびっとばかりの社交性くらいしか誇れる物は無かった。
いつか彼女は俺とは別の人物と恋をして、結婚する姿を、何度も何度も夢を見た。
なんとか変えようと思い、勉強や運動も頑張ったが、彼女の足元にも及ばなかった。
その時、分かったのだ。
理屈ではなく、原則として。
ー俺とボクとは釣り合わない。