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その歌を  作者: うわの空
第二章
21/33

9

 明らかに顔色が悪い。私はそう思いながら、目の前を通り過ぎる茶髪の男の子を見ていた。男の子といっても、私と同い年くらいか、あるいは少し年下くらいだろう。


「相変わらず乗り物に弱いな。乗らなきゃいいのに」


 そばにいた黒髪の男の子が、茶髪の彼に声をかける。彼らは、私たちの近くにあるベンチに腰掛けた。

 顔色の悪い男の子はため息をつくと、吐き捨てるように言った。


「うるせーなー。来年受験生になるんだから、今のうちに遊んでおきたいんだよ」


 あ。この子たち、私よりも年下か。そんなことを考えていたら、同級生らしき女の子たちが、彼らのもとに近づいてきた。一人は、白くて大きなぬいぐるみを腕に抱えている赤茶髪の女の子。もう一人は、かなり華奢な黒髪の子だった。


「おいおい。まーた、でっかいヌイグルミを取ったのかよ」


 呆れたような口調でそう言いながら、顔色の悪い男の子がぬいぐるみをわしゃわしゃとなでまわす。黒髪の男の子はその様子を見ながら、腕を組んでしばらく考えた後、


「すまん。これ、なんていう動物だったっけ?」


「アルパカ」


 華奢な女の子が、ぶっきらぼうに答えた。


「一年半前も、同じ質問してたじゃない」


 赤茶髪の女の子が突っ込んで、皆で笑う。

 四人はしばらく談笑してから、どこかへ行ってしまった。



 楽しそうだな。


 そんなことを、ぼんやりと思った。





「私! バイキングから、さなちゃんとかすみに手を振ってたのよ! 気づいてた!?」


 うきうきした声でマスターにそう言われて、閉口した。残念ながら私はその時、近くにいた高校生たちを観察していて、バイキングの方なんて見ていなかった。大体、


「見えないよ。ここから見たら、乗客なんて米粒みたいな大きさなのに」


 私が思っていたことを、かすみちゃんがすっぱりと言いきって、マスターと隼人は苦笑した。





「なんだかんだでさー。チョビさんとかすみちゃんって、仲いいね」


 二人の後ろを歩きながら、隼人が呟くようにそう言った。彼は、子供を見守る保護者のような優しい目をしていた。


「親子って感じがしてるし。園内ここでも浮いてないよ」


「そうね」


 私は笑いながら、目の前で喧嘩しつつも笑い合っている二人を眺めた。初めて会ったころに比べれば、雰囲気が良くなった気がする。なんだかんだで、かすみちゃんも優しい子なんだ。……初対面の時は、性格がきつそうだとか思ってしまったけれども。


「俺達はさー、はたから見たらカップルに見えてるかな」


 隼人がそんなことを言って、私は立ち止まった。

 低く唸るようなジェットコースターの音と甲高い悲鳴が、頭上を通り過ぎていく。


「……見えてないんじゃない?」


 年齢だけなら、カップルに見えるかもしれない。けれど。


「私、園内ここで浮いちゃってるから」


 自嘲気味に笑うと、隼人が一瞬だけ悲しい顔をした。どうしてそんなこと言うんだ、と言わんばかりの顔をしている。



――そうだね。隼人は、知らないから。



「こういう場所は、私には似合わないのよ」


 小さな子が、風車かざぐるまを持って向こうから走ってきた。楽しそうに笑っている。カラカラと音をたてながら、風車は回る。その子が走っている間は。


 立ち止まる。風車が止まる。振り返る。親がいることを確認して、笑う。再び走り出す。風車が、回りだす。


 その一連の動作を見ながら、私は笑った。


「ほんと、似合わない」


「……じゃ、俺と君は、周りからはどんな風に見えてると思う?」



 隼人は何が聞きたいんだろう。

 ……知らない。分からない。どうでもいい。


 私は大して考えもせずに、思ったことを口にした。



「人間と化け物にでも、見えてるんじゃないの?」



 彼の瞳が暗くなるのが、遠目からでも分かった。



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