表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/19

第七話 属性鑑定

俺の名前はリーン・ボーン。

鼻を折るたびにランダムでスキルを得る無属性。

農業と料理では少し役立ったけど、村人たちからは未だに「鼻折れ王子」呼ばわりだ。


今年、俺は六歳。

そして兄ギータは九歳になった。


この世界では、生まれた子は九歳までに“属性鑑定”を受けることになっている。

赤ん坊のうちはまだ属性が安定していないが、九歳を迎えると完全に定まるのだ。

そのため、各村の教会で正式に鑑定を行う。


俺はまだ対象外だけど、兄の鑑定を見に行くことになった。



兄ギータは王都のシー・オタール学園から一時帰省していた。

学園は七歳から入学可能で、難関試験を突破した天才ばかりが集う場所だ。

兄はその中でも優秀で、すでに“未来の英雄候補”と噂されているらしい。


村人たちは兄の帰郷に大はしゃぎ。

「ギータ様が帰ってきたぞ!」

「学園でも優秀なんだってな!」

「やっぱりボーン家の誇りだ!」


一方の俺は……

「おっ、鼻折れ王子も一緒か」

「最近は料理でちょっと役に立ってるらしいな」

「でも鼻、まだ赤いぞ」


……うるさい! 鼻は俺のアイデンティティなんだよ!



教会の中。

白い石造りの祭壇に、属性を見抜く魔法具が置かれている。

大きな水晶玉のようなそれに手をかざすと、属性が光となって現れるのだ。


司祭が厳かに言った。

「さあ、ギータ・ボーン。あなたの真なる属性を示しなさい」


兄は堂々と前に進み、水晶に手を置いた。


最初に現れたのは――眩い光。

「光属性……やはりな」

誰もが納得の声を上げる。


だが次の瞬間、水晶は黒く染まり、さらに風のような緑の光を放った。


「なっ……!」

「光に、闇……それに風……!?」


司祭は震える声で告げた。

「三属性……! これは十万人に一人とされる奇跡の才!」


村人たちがざわめき、歓声が広がる。

「三属性!?」「ギータ様すげぇ!」「学園でも絶対に英雄になる!」


父バーバリーは鼻を鳴らし、母キヨルは涙ぐんでいた。

「我が子ながら誇らしい……!」


そのとき俺は、胸がズキリと痛んだ。

俺と兄の差は……さらに広がった。


ギータは三属性。俺は“鼻折れ無属性”。


でも、ただ落ち込んでいるわけにはいかない。

俺には仮説がある。


(思いがスキルになる。強く願えば、俺だって――!)


俺はこっそり教会の柱に鼻をぶつけた。

ゴンッ!

《無属性スキル:スプーンを回すとちょっとカッコいい》


「……いらねぇぇぇ!」


さらにもう一発。

ゴンッ!

《無属性スキル:剣を握ると小声で効果音が鳴る》


「ぶぉん……って鳴った! けど弱ぇぇぇ!!」


必死に鼻を押さえてうずくまる俺を見て、兄は苦笑した。

「リーン、お前は本当に変わらないな」

でもその目は、ほんの少しだけ優しかった。


村人たちは兄を称え続ける。

「ギータ様がいればこの村も安泰だ!」

「リーン坊ちゃんも……まあ、面白いしな」


面白いってなんだよ!


幼なじみのミザリーだけは、俺の肩を叩いて言った。

「リーン、大丈夫だよ。ギータはすごいけど……私はリーンが好きだよ」


……お、おおおお!?

今“好き”って言ったか!?

いや、“人として好き”の可能性大か……!



夜、布団に潜りながら俺は考えた。


(兄は三属性、俺は鼻折れ無属性。でも……俺にしかできない道があるはずだ)


俺は小さな拳を握り、鼻を押さえながら決意を固めた。

「……俺は痛みによって強くなる! 兄にだって負けねぇ!」


こうして、俺と兄の差は歴然となった。

だが俺の鼻折れ革命も、まだ終わっちゃいない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ