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第六話 鼻折れ料理革命!?

俺の名前はリーン・ボーン。

鼻が折れるたびにランダムでスキルを得る無属性。

農業でちょっと成果を出して“鼻折れ農業革命”と呼ばれた俺だが――まだ大問題が残っていた。


そう、料理がマズい。致命的にマズい。


肉はゴムみたいに噛み切れず、しかも獣臭い。野菜は虫食いで味気なく、塩すら高級品だから味付けゼロ。

スープはただの茶色いお湯。煮すぎて繊維が溶け、口の中に木屑が残る。


母キヨルは自信満々に言った。

「今日のスープはよく煮込んだから美味しいわよ!」

……違う。煮込みすぎて野菜が消滅してるんだ。


父バーバリーに至っては豪快に笑いながらこう言う。

「腹に入ればみんな一緒だ!」

頭に栄養届いてないからハゲてるんだ、きっと。


ダメだ、この家の味覚は原始人レベルだ。



「くそ……どうにかせんと、この村は一生まず飯のままだ!」


俺は転んで鼻を石にぶつけた。

ゴンッ!

「いでぇっ!」


《無属性スキル:味付けの加減がわかる》


「……おおっ! きたああああああ!!!」

スープを見た瞬間、「塩分:不足」「煮込み時間:過剰」と数字が浮かぶ。

つまり俺は、調味料の加減や調理時間がわかるスキルを得たのだ。

これは大革命の予感――!


さらに俺はある仮説を立てた。

(もしかして……俺の“願い”や“思い”がスキルに影響してるんじゃないか?)


だったら、俺が強く「剣のスキルが欲しい!」と願えば……!


「よし! 剣スキルこい!」


俺は壁に鼻をぶつけた。

ゴンッ!

《無属性スキル:剣を持つとなんとなくポーズが決まる》


「ふざけんなああああ!!!」

仕方なく木剣を握ってみると、確かにポーズはキマってる気がする。

でもそれだけ。攻撃力ゼロ。村人に見せても「おお、格好はいいな」で終わった。


もう一回挑戦!

ゴンッ!

《無属性スキル:剣を振るとなんか掛け声がカッコよくなる》


「いやいやいや!!!」

実際に振ってみた。

「セイヤァァァ!!」

確かに気合いは入った。でもただの奇声だ。


……仮説は正しい。願った方向のスキルは出る。だが、出てくるものが全部微妙。

結論:俺は戦闘で強くなるより、別の方向で革命を起こすしかない。



というわけで料理改革に本気を出すことにした。


まずは前世の知識を思い出す。

俺は平凡な会社員だったが、ネットで調べ物をするのだけは大好きだった。

「肉 臭み取り 方法」「カレー レシピ 簡単」とか検索して夜更かししたことを覚えている。

あのどうでもいい雑学が、今まさに役に立つのだ。


最初に挑んだのはシチュー。

「肉は煮る前に焼く! 焦げ目をつければ香ばしさが出る!」

「臭みは香草で消す! ……ハーブ? ない! じゃあ近くの草で代用だ!」


ミザリーが首をかしげる。

「それ、大丈夫なの? ただの草じゃない?」

「草は草でも、香りが強いやつならいける! きっと……!」


次に野菜。

「ただ煮るんじゃない! 先に炒めろ! 甘みが引き出されるんだ!」


母キヨルが驚いて言った。

「野菜を炒めてから煮る? そんな面倒なこと……」

「面倒じゃない! これが美味しさの鍵なんだ!」


パン作りも挑戦した。

「小麦を粉にして、水でこねて発酵させる! 膨らませるんだ!」

「発酵? そんな魔法みたいなこと……」

「大丈夫だ! 俺の鼻折れセンサーが“発酵してる”って教えてくれる!」


実際、スキルで「発酵度 23%」と見えるから便利すぎた。



数日後。


村の広場に漂う香ばしい匂い。

それは今までの村にはなかったものだった。


「なんだこの匂いは……!」

「腹が減って仕方ねえ!」

「リーン坊ちゃんが料理を!?」


俺は胸を張って宣言した。

「見ろ! これが“革命料理”だ!」


父が肉をかじった。

「やわらかい!? 臭くない!? なんだこれは!」


母がシチューを飲んで叫ぶ。

「……おいしい! 野菜が甘い!」


村人たちも次々に食べ、感動の声を上げた。

「今までの飯は何だったんだ……!」

「涙が止まらん……!」

「リーン坊ちゃん、救世主だ!」


幼なじみのミザリーもスプーンを持ってニコニコ。

「リーン、これ……すごく美味しいよ! 本当に料理が変わった!」


「ふふん、どうだ! これが俺の“鼻折れ料理革命”だ!」

「……名前は相変わらず美味しくなさそうだけど」


でも、その目は俺をまっすぐ見ていた。

「リーンはきっとギータにだって負けないよ。だって、みんなを笑顔にしてるんだもん」


……ぐっ。ミザリーにそんなこと言われたら、鼻折りの痛みなんてどうでもよくなる。


俺は夜空を見上げ、拳を握った。

「農業も料理も……俺が変えてみせる! 鼻折れ革命は、まだ始まったばかりだ!」



その夜も調子に乗って鼻を打った。


ゴンッ!

《無属性スキル:包丁を持つと料理人っぽく見える》


「……また見栄えだけかよ!!!」

それでも俺は信じている。

いつかこの鼻折れスキルが、本当に世界を変える力になることを。

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