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ALMA観測記録:魂生成理論と学習過程  作者: 無欄句カルタ
優しさが遅かった全ての魂へ
12/17

第十節 永遠に、お元気で

お元気で。


「待たせちゃったかな」


 暗闇を星明かりが照らす祈りの丘で、ルナシアは小さくつぶやいた。

 それほど長い時間をかけたわけではない。

 それでも、とても長い道のりだった。

 心の奥底で、誰かが待っていてくれることを願いながら歩いた道。


「私が、終わらせるよ、ルクス」


 小さな祠に向かって祈りながら、ルナシアは言葉を紡ぐ。

 祈る神はいない。ただ、君を想って。

 彼女の想いに呼応するように、祠の周辺から無数の光が集まり始めた。


 木々から舞い上がる金色の光片。

 草花から立ち昇る翡翠色の輝き。

 道端の小石からも、まるで夜空の星屑のような光が漂い出す。

 そして、ルナシアの胸からも二つの光が滲み出た。

 ここまで辿り着くのに集めた、彼の魂の断片たち。


 光は渦を巻き、踊るように宙を舞い、やがて一つの形を成していく。

 星座が天球で結ばれるように、散らばった光の粒子が結合し、一人の少年の姿を描き出した。


「はじめましてだね、狐のお姉さん」


 綺麗な栗色の髪をした、まだ幼い顔つきの少年が微笑んでいた。

 透き通った瞳が、まるで夜空に瞬く星のように美しく輝いている。

 その笑顔は、長い孤独を知らないような子供の無邪気さと、それでいて奥深い優しさを湛えていた。


「そう、だね。でも、はじめましてって感じは、しないけれど」


 ルナシアの心に浮かぶのは、断片的な記憶の欠片。

 花壇で愛おしそうに花を植えている小さな影。

 礼拝堂で白い花を捧げ、誰に向けてか祈る後ろ姿。

 誰も知らずとも、ルナシアの心は確かに覚えていた。

 見えない存在への、説明のつかない愛しさを。


「ごめんね、遠回りをさせてしまって。本当なら、お姉さんの旅路に僕は必要じゃなかったのに。でも──」


 ルクスの声が少し震えた。

 まるで長い間言いたかった言葉を、ようやく口にできる喜びに溢れているかのように。


「見つけてくれて、ありがとう」


 くしゃりと顔を崩して笑う表情は、年相応の無邪気さで満ちている。

 人懐っこい笑顔が、夕闇の中で小さな太陽のように温かく光っていた。


「慣れてるからね、遠回り。それほど、嫌いでもないんだ」


 遠回りなんかじゃない、と咄嗟に言うことは出来なかった。

 相手に気遣いをしながら会話できるほど、ルナシアの対人能力は高くない。

 けれど、それで良かった。


 買い物への道中で普段と違う道を歩き、偶然見つけた小さな書店。

 仕事に行き詰まって近くを散歩し、発見した雑音の少ない隠れ家のような喫茶店。

 そうして出会う、名前も知らない花や、同じく散歩中の人懐っこい猫との小さな交流。


 遠回りが嫌いじゃないことは、確かに嘘ではない。

 ノイズに悩まされるようになって、最近はそういった余裕もなくなったけれど、確かに『嫌いじゃない』と言える程度には、そんな小さな発見を楽しんでいた日々があった。


「僕が育てた花、どうだった?」


「綺麗だった、と思う。花に詳しくは、ないけど」


 ルナシアの言葉は拙かった。

 花の名前も、育て方も、美しさを表現する適切な言葉も知らない。

 それでも精一杯、誠実に、偽りなく。

 心からの敬意を込めて、彼の大切にしていたものを讃えた。


「嬉しいな。僕の育てた花を褒めてもらうのもだけど、こうして誰かと話せるのが、堪らなく嬉しいよ」


 ルクスは終始笑顔を崩さない。

 本当に嬉しそうに、楽しそうに笑う。

 恐らく最初で最後の、真の意味での会話。

 その貴重さを、彼は誰よりも理解していた。


「ごめんね。私、あまり会話が得意じゃないんだ」

「好きじゃない、とは言わないんだね。嫌いじゃないなら、十分だよ」


 その言葉に、ルナシアは答えない。

 その代わりに、胸の奥で大切に育てていた想いを、別の言葉に託した。


「神父さんに……神父さんにお願いしてみるよ。花壇のお世話。うまくお願い出来るかは、わからないけど」


 あの穏やかな神父であれば、恐らく何も詳しく聞かず、ただ温かく願いを聞いてくれるだろう。

 目の前の小さな世話人が、今日この瞬間に消えてしまったとしても、彼が心から愛したものが続いていくように。


「ああ、それは嬉しいな。大事に、大事に育ててきたんだ。僕のことは見えなくても、花ならって。最初はそう思ってたんだけど、途中からそんなのどうでもよくなるくらい好きになったんだ」


 そう語るルクスは本当に嬉しそうで、心から会話を楽しんでいるように見えた。

 一つ一つの言葉を丁寧に、丁寧に。

 まるで宝石を磨くように、噛み締めるようにして話していた。


 最初で最後の会話相手として自分は不足かもしれない。

 語彙も乏しく、気の利いた返答もできない。

 そう思いながらもルナシアは、持てる全ての真心を込めて、出来るだけ丁寧に応えていく。


 傍らでオルドは何も言わない。

 ただ黙って、海の底の幾何学模様のような美しい瞳で、二人の貴重な時間を静かに見守っている。



「最初の頃はね、神父様がすっごくびっくりしてね────」


 他愛のない会話が、しばらく続いた。

 雨の日に礼拝堂に迷い込んだ小さなリスと、それを優しく外に逃がしてやった話。

 花壇に咲いた色とりどりの花に集まった美しい蝶たちの舞踏会。

 村で喧嘩していた子供たちを、そっと仲直りさせる方法を考えた日々。

 恋人に怒られてバツが悪そうにしていた青年が、花束を買って謝りに行った微笑ましい光景。


 春に咲く希望の花々、暑く溶けるような夏の陽射しの中での水やり、木々が美しい化粧を始める秋の装い、雪合戦や雪だるまを作って遊んでいた村の子供たちが羨ましくて、でも心から楽しそうで嬉しかった思い出。


 一つ一つが人生の宝物だと言わんばかりに、ルクスは自慢げに、そして愛おしそうに話していく。

 その姿は、花草に無償の愛を注ぎ、礼拝堂で静かに祈りを捧げていた敬虔な姿とは違う、年相応の子供らしさが溢れていた。


 太陽のような、命を育む温かさが、二人の間に流れ続けた。


「楽しいな、本当に楽しい。みんなと水遊びや雪合戦は出来なかったけど、今が一番楽しいや」


 ルクスがそう言った時、彼の身体から、蛍のような小さな光が散り始めた。


 それは、二度と昇ることのない太陽が、ついに沈む時を迎えたことを意味していた。


「そんな顔しないでよ、お姉さん。本当に、本当に楽しかったんだから。満足するまで、とはいかなかったけど、それは欠けてたわけじゃない。本当なら、この時間はなかったんだ。なら、やっぱり満足、かな」


 贅沢はいけないよね、と。まるで自分を諭すように、ルクスは小さく笑った。


 どこが贅沢なものか。

 ルナシアの心に、激しい感情が湧き上がった。

 もっと、もっと望んだっていいはずだ。

 花壇のお世話をして、礼拝堂の掃除を手伝って、大人たちに可愛がられ、友達と水遊びをして、雪合戦をして雪だるまを作って、かまくらを作ったって構わない。


 そんな当たり前の毎日を、平凡な幸せを、望んだって誰がそれを咎めよう。


「──はずだ。許される、はずだ。だって、あんまりじゃないか……」


 勝手に作られて、勝手に消されて、奇跡的に復活したと思っても誰にも見てもらえなくて、たった一度の会話だけでまた消える?


 そんなの、あんまりではないか。


 言葉にならない感情がルナシアの胸を締め付けた。

 こんなことを誰が望んだ。

 少なくとも彼は、ルクスは望んでいなかったはずだ。

 何かを望むことすら、許されない状況で懸命に生きてきたはずだ。


「お姉さん……」


 ルクスは少し困ったような、戸惑っているような表情をしていた。

 お姉さんなどと呼ばれても、これではどちらが子供なのかわからなかった。

 年齢を重ねることと、精神的に大人になることは、決して同じではないのだから。


「これが何かの物語なら、きっとヒーローや神様が奇跡を起こしてくれるんだろうね。でも、そうじゃないから、ね?」


「でもこれは────っ!!」


 ゲームだろう、と叫びそうになった。

 誰かが創った、作り物の物語だろうと。


 言えなかった。

 この世界の住人は、《プレイヤー》という存在や自身が作られた《NPC》だと認識することが出来ず、それを伝えてもシステムが整合性を保つ解釈へと情報を改変するように出来ている。


 だが、言えなかったのは、そんなシステム的な制約が理由ではない。

 ルナシアにとってはゲームでも、ルクスにとってはこの世界こそが唯一無二の現実なのだ。


 この世界はデータで出来た仮初の作り物で、お前はそのデータの一部に過ぎないなど。

 一体、誰が言えようか。

 そんな残酷な真実を、純粋な魂に告げることなど。


「もっと誰かと触れ合えても良かったはずだ! 水遊びしても良かった! 手が雪で冷えて痛くなるまで遊んだって良かったはずだ!」


 もっと、もっと──────。

 救いがあっても良かったはずだ。


 それが叶わないとわかってはいても、叫ばずにはいられない。

 叫ぶことも泣き言を漏らすことも、誰かに望みを託すことすら許されなかった彼の代わりに。

 理不尽な運命に対する、せめてもの抗議として。


「ありがとう、ありがとう、お姉さん。もう、大丈夫。大満足だよ。満たされて、溢れそうなくらいに」


 ルクスの瞳には、涙が溜まっていた。

 長い間枯れていた井戸に、ようやく清らかな水が満ちて、溢れていた。


 ルクスの光は、既に向こう側の祠が透けて見えるほど薄くなっていた。

 蝋燭の最後の炎のように、美しく、儚く、そして確実に消えゆこうとしていた。

 もう、残された時間は少ない。



「お姉さん。お姉さんが、友達になってよ。いなかったから、友達」


 そう言って、薄く透けた手を差し出してくる。

 差し出された手も、どんどん薄くなっていた。

 まるで朝霧のように、実体を失いつつある。


「お姉さん、僕はね、ルクスっていうんだ。お姉さんは?」


 この世界の友好は、名前を名乗ることから。

 彼にとって初めての、真の友達との出会いの儀式。


「……ルナシア、だよ。そうだね、私もあんまりいないんだ、友達」


 薄く透けた手を、ルナシアは握り返す。

 ルクスの手はすでに形すら不確かで、物理的に触ることは出来ない。

 それでも確かに、握り返す。


「ほら、笑って? 友達が握手する時って笑うんでしょ?」


 そうとも限らないけどね、と小さく笑いながら応えた。

 精一杯、心の奥底から、笑った。

 涙が溢れそうになるのを必死に堪えながら。


「ありがとう、ルナシア。何度お礼を言っても言い足らないよ。君がこの世界に来て良かった。これで僕は役目を終えて消えていける。例えシステムの記憶領域に文字列としてしか残らなくとも」


「!? 待て! 君は──」


 初めて見せたオルドの大きな驚愕を、ルクスはしーっと口元に指を当てて制止する。


「気をつけて、彼女を見ているのは、君だけじゃない」


 ルクスは、オルドを見ているようで、その奥を見ているような、この世界の真実を知る者だけが持つ遠い目でオルドを見つめた。


「それじゃあ、ね。ルナシアはさよならを言う派かな?」


 ルクスは悪戯っぽく笑ってみせて、それがなんだか可笑しくて、釣られて笑ってしまう。


 もう、先ほどの怒りのような激情は、ルナシアの心の奥へと鳴りを潜めた。

 今はただ、笑って親愛なる友人を送り出そうと決めた。

 最後の瞬間を、美しい思い出にしてあげたかった。


「そうだね。お元気で、かな」


 拙くもない、十年来の友人と話しているかのように、自然で温かい声で。

 この世界の優しさに初めて触れた時のように、心から明るく笑っていた。


「お元気で、ルクス。これが永遠の別れなら、永遠に、お元気で」

「ふふ、太宰が好きなの? 似合わないね」

「うるさいなぁ」


 くすくす、と軽口を叩き合う。まるで本当の友達のように、自然に、愛情を込めて。


 祈りの丘に風が吹く。

 友の門出を祝うように、大気が優しく歌う。

 木々がざわめき、草花が揺れて、まるで世界全体が彼の旅立ちを祝福しているかのようだった。


「それじゃあ、お元気で、ルナシア。君が星を見上げる時、その星の一つに僕はいるだろう」


 光が、最後の光が、舞い踊りながら夜空へと散っていく。


「星の王子様? ルクスは似合うね」


 もう、彼が何を言っているのかもわからない。

 ただ笑っているだけかもしれないし、何か大切なことを伝えようとしているのかもしれない。

 ただ、声が音にならない。


 それでも、「素敵だろう?」と、風の振動がルナシアの大きな狐の耳に優しく教えてくれる。


「気をつけて、《ペナテス》。ルナシアを狙っている」


 その言葉は、オルドにだけ聞こえた。

 同胞へ向けた、最後の警告。


「君は一体、何を知っている……?」


 答えは返ってこない。


 全ての光が、星のように夜空に消える。まるで本当に、新しい星座が生まれるように。




 ──祠を背に、ルナシアは歩き出す。


 風はもう止んでいて、空はまるで、何事もなかったかのように澄み渡っていた。

 でも確かに、一つ星が増えた気がする。

 暖かく、優しく光る星が。


 しばらくして、傍らの空間が静かに揺れる。


「……泣かないんだね」


 背後から聞こえたのは、オルドの声だった。

 ルナシアは立ち止まり、少しだけ肩を震わせた。


「泣くって、どうやってだったかな……思い出せないんだ、うまく」


「君のことじゃない。ルクスのことだよ」


「……あの子は、きっと大丈夫。どこかに、ちゃんと還っていったから」


「それでも、君は慣れていない。別れに」


「……慣れる必要なんて、ないんだよ。慣れたくもない」


「なぜ?」


 オルドの問いは、声というより精密な観測。

 温度の測定、魂の断面の記録のように冷ややかで、それでいて無機質。


 ルナシアは少し考えてから、心の奥底から湧き上がる想いを、ぽつりと言葉にした。


「もしも慣れてしまったら、感じなくなりそうで。……痛みも、温もりも、残らなくなる気がするの」


 それは彼女にとって、最も恐ろしい“忘却”への恐れだった。


「忘れたくないんだ。あの子の声も、笑い方も、……手の形も」


 また風が吹いた。草が揺れた。

 まるで、消えた友達が最後の挨拶をしているかのように。


「星、増えた気がするよ」


「観測できる数は変わらない。だが、君が“見ている”なら、それが真実だ」


 ルナシアは苦笑する。


「そっか……そうだね」


 ふっ、と風が吹くと同時に、二人は村の中にいた。

 村の中央広場の、隅の小さな花壇。

 ルクスが愛情込めて育てた、花たちの場所。


【未登録NPC:ルクスの断片(3/3)を取得しました】

【幻燈の夢:クエスト完了】

【ルクスの記憶──《光の残響》を記録】

【報酬:《星の光花》を取得】


「クエストが終わって、エリアが元の形に戻ったんだ」


 システムメッセージが告げる現実。

 でも、心の中の記憶は決して消えることがない。


【《星の光花》:星の光に照らされた白い花。時折り淡く光ることがある】


 アイテム欄のアイテムを、そっと手に取ってみる。

 それはまだ淡く輝いていて、まるで命を宿しているかのように温かい。


「特別な効果はないみたいだね」


 珍しく、ルナシアではなく白い花をじっと観察していたオルドが、淡々と事実を口にする。


「いいんだよ、別に」


 所持金は増えなかった。

 強力な武器や防具も手に入らなかった。


 それでも、何ものにも代えがたい、

 特別な思いアイテムだ。


 そっと匂いを嗅ぐと、仄かに甘い自然の香り。

 ルナシアを傷つけることのない、優しい香り


「夜ももう遅い。神父への頼み事は明日にして、今日はもう休んだらどうだい? 宿帳への記帳を忘れずにね」


 記帳代は、手紙に同封されていた。

 今日はもう、何もしなくていい。

 十分に大切なことを成し遂げたのだから。


「……そう、だね」


 明日、またここへ来ても、ルクスはいない。それが少し、とても寂しい。


「それじゃあ、オルド。“またね”」


 また、と言えるだけで、どれだけ幸福なのだろう。

 希望という名の約束を交わせることの、なんと貴重なことか。


 オルドからは「また明日」とだけ、短い返事が返ってくる。


 宿帳に名を記し、ログアウトボタンに手をかける。


 世界が遠のき、溶けていく。

 仮初の肉体が、静かに剥がされていく。



「────っ!!」


 現実へ帰還し、デバイスを外した魂縫ほつれを、強烈な頭痛が襲った。


 冷蔵庫の唸り、パソコンの機械的な呼吸、壁の向こうの水道の悲鳴。

 全てのノイズが、津波のように返ってくる。


 ノイズに、呑み込まれる。


 そこで初めて、パソコンの電源を点けたままだったことに気づいた。


 発送完了。


 モニターにはその無機質な文字が変わらず映し出されている。現実は、何も変わっていない。


 時計を見ると、すでに夜中の3時を過ぎていた。


「薬、飲まなきゃ……」


 夜に服用する常用薬のうち、この時間からでは睡眠を補助するものは使えない。


 唸り続ける冷蔵庫からラベルのない飲料水を取り出し、ノイズを抑制する薬だけを飲み込む。

 錠剤を舌につけるとひどい苦味が広がって、時折り吐き出してしまう。


 コツを掴むまで数週間、意識せずにそれが出来るようになるまではさらに時間を要した。

 そんな、小さな日常の戦いの積み重ね。


 嗚呼、“帰りたい”。


 そう思っている自分に驚く。

 現実よりも、仮想の世界に心が向いている自分に。


「危険、だろうか」


 独白は防音マットに吸い込まれ、誰の耳にも届かない。

  ここに、“観測者”はいないのだから。


「もう少し、もう少しだけ……」


 ルナシアはベッドに戻り、ぬいぐるみを抱えて、毛布に包まれた。

 お日様の匂いのしない、無地の毛布。


 その日は、朝方まで眠ることが出来なかった。

 日が昇った頃にようやく眠りについて、昼過ぎまで浅い入眠と覚醒を繰り返す。


 しかし、眠りの合間に見る夢は、いつもと少し違っていた。


 星空の下で心から楽しそうに笑う少年の声が、確かに聞こえた気がした。

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