06話 変わる心、変わらぬ絆
俺、佐藤健太、今はエリック、13歳。
貴族バルトン家を捨て、冒険者として旅を続けている。
母・アリシアを探す目標は心の奥にあるけど、最近、俺の視線はリナに釘付けだ。
腰まで届く三つ編みを振る、負けず嫌いな転生者の少女。
彼女は俺のライバル「ベテラン精子」の生まれ変わり。
でも、最近のリナは、いつもとどこか違う。
…いや、変わってきてるんだ。
交易都市の冒険者ギルドで、俺とリナは新たな依頼に挑んでいた。
魔狼出没地帯での商隊の護衛任務だ。
いつものように、リナは「オレが魔狼をぶっ倒すぜ!」と鼻息荒く剣を構える。
だが、戦闘中、彼女の動きに迷いが見えた。
魔狼の牙を避ける際、胸元を押さえて一瞬固まる。
猪突猛進だったリナが、だ。
戦闘後、俺が「大丈夫か?」と聞くと、
彼女は三つ編みを握りしめ、「…うるせえ、平気だ!」と顔を赤らめてそっぽを向く。
キャンプに戻ると、リナは女冒険者たちの輪に混ざっていた。
リーダーの女剣士マリアと、魔法使いのクレアだ。
リナはこの2人にのみ、自身の精神と身体の不一致を告げている。
いつもなら酒樽を叩きながらバカ話してるのに、今日は様子が違う。
俺は荷馬車の影で耳を澄ませた。…いや、盗み聞きじゃない。
ただ心配なだけだ!
「なあ、マリア、クレア…ちょっと相談が…」リナの声は小さく、珍しく弱気だ。
「最近、なんか…体が変なんだ。胸が…こう、張ってきて、痛えし…。
それに、頭の中もフワフワして、昔のオレじゃねえみたいで…怖えんだ。」
マリアが豪快に笑う。
「ハハッ、リナ、そりゃ思春期だ!女の体と心が目覚めてるのさ。
胸の痛みも、すぐ慣れる。怖がるな、布でも巻いて胸張れ!」
クレアが穏やかに補足する。
「精神が…少女に寄っていくのも自然なこと。
リナの魂は男だったかもしれないけど、今の体は女の子。
それに抵抗せず、受け入れてみなさい。案外、悪くないわよ。」
リナは三つ編みをいじりながら呟く。
「…受け入れるって、簡単じゃねえよ。今までのオレは、こんなんじゃなかった。
ガムシャラに突っ走ってたのに…今は、鏡見るたび、知らねえ奴が映ってるみたいで…」
マリアがリナの肩を叩く。
「お前はリナだ。男だろうが女だろうが、剣振って魔獣をぶっ飛ばすカッコいい奴だろ?
姿が変わっても、お前の芯は変わらねえ。自信持て!それに…」
彼女はニヤリと俺の方をチラ見する。
「あの金髪ガキ、お前のことちゃんと見てんだからよ。」
「は!?エリック!?何!?アイツ今関係ねえだろ!」
リナの顔が真っ赤になり、三つ編みをブンッと振る。
俺は慌てて荷馬車に隠れる。…やばい、バレてた!?
翌日、護衛任務の帰路。
リナはいつもより静かだ。
俺は彼女の悩みを知らないふりで流したかったが、やっぱり放っておけなかった。
「なあ、リナ…昨日、ちょっと聞いたんだけど…大丈夫か?なんか、悩んでるみたいだな。」
リナは一瞬目を逸らし、渋々口を開く。
「…まあ、隠す気もねえけど。体が変わって、頭ん中も…なんか、女っぽくなってきてる。
前のオレなら、こんなことでグズグズしなかったのに。…情けねえよ。」
俺はベテラン精子を思い出す。
あの尾をビシッと振る、自信満々の奴。
でも、今のリナは、戸惑いに潰されそうだ。
俺は真っ直ぐ彼女を見る。
「情けなくないよ。変わるのは怖いけど、お前は…その、変わっても、めっちゃリナだ。
剣振る姿も、値切りでドヤる顔も、全部カッコいい。…だから、リナはリナのままだよ。」
リナはポカンと俺を見る。
やがて、顔を赤らめて三つ編みをいじる。
「…何だよ、金髪、急にマジメくせえこと言いやがって。
…けど、なんか、ありがと。ちょっとは…気が楽になったかも。」
彼女の笑顔は、いつものドヤ顔じゃなく、どこか優しい。
俺の胸が、またドキッとする。
…やべえ、リナ、こんな顔もできたのか。
数週間後、ギルドの訓練場で、俺とリナは剣の稽古を続けた。
リナはマリアのアドバイスで、胸に布を巻いて動きやすく工夫してる。
彼女の剣は鋭さを増し、時折見せる笑顔は、少女らしさと闘志が混ざった新しいリナだ。
俺はそんな彼女に、ますます惹かれる。
ベテラン精子はライバルだったけど、今のリナは…ただの友達じゃない。
なんか、もっと大事な存在だ。
「よお、金髪!次はお前をぶっちぎるぜ!」リナが三つ編みを振って叫ぶ。
俺は笑って剣を構える。
「望むところだ!けど、リナ、どんなお前でも、俺は応援してるぜ!」リナは一瞬照れ、すぐ
「うるせえ!勝負だ!」と突っ込んでくる。
女神の転生レースは、俺たちをライバルとして引き合わせた。
でも、この世界で、リナとどんな絆を築くかは、俺たち次第だ。
母を探す旅も、冒険も、リナとの未来も。
俺の転生人生、ますます熱くなってきた!