03話 旅立ちの決意
俺、佐藤健太、今はエリック・バルトン 5歳。
壮絶な転生レースを勝ち抜き、中位貴族バルトン家の庶子として生まれたが、
母・アリシアの悲劇と貴族社会の冷たい目に晒されてきた。
母がシスターとして暮らす修道院が魔物に襲われていると知り、
俺は果物ナイフと初級魔法「光球」を握り、救援の馬車に忍び込んだ。
「母さんを救う。それが俺の転生の意味だ!」
…そう信じて。
修道院への道中。
馬車が森を抜ける中、魔狼の群れに襲われた。
救援部隊の門番や庭師たちが慌てふためく中、俺は動いた。
「ここでビビってたら、転生した意味が無い!」
暗闇から迫る魔狼の目を眩ませるため「光球」を連射。
眩惑された隙に、馬車の荷物から油を撒き、火打石で着火する。
炎の壁で魔狼を足止めし、馬車を逃がした。
「坊っちゃん!?何でこんなところに!」
「5歳の子供が…こんなこと!?」と周囲が唖然とする中、俺はニヤリ。
「俺、結構タフだったんだぜ。」
修道院に辿り着くと、状況は絶望的だった。
魔狼の群れが石壁を叩き、シスターたちが祈りの中で震えている。
━ ━ ━ さほど重要ではないシーンなのでダイジェストでお送りします。━ ━ ━
俺は屋根裏に潜り、修道院の古い仕掛けを発見。
錆びた罠のレバーを動かし、魔狼の半数を落とし穴に叩き落す。
さらに、厨房の唐辛子粉を風に乗せて撒き、魔狼の目を潰した。
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
そこへ、タイミング良く冒険者集団が到着する。
どうやらバルトン家が手配したらしい。
リーダーの女剣士が「お前、ガキのくせにやるじゃねえか!」と笑い、残りの魔狼を一掃。
特に難なく修道院は救われた。
だが、喜びは束の間だった。
シスターたちにアリシアのことを尋ねると、彼女は一週間前、別の修道院へ移ったという。
「…母さん、どこに…」再会を夢見た俺の心は空っぽだ。
彼女の閉ざされた瞳を思い出し、胸が締め付けられる。
だが、落ち込んでる暇はない。
冒険者たちが俺に声をかけてきた。
「お前、頭キレるな。俺らと来ねえか?こんな修道院より、広い世界が待ってるぜ。」
俺を修道院の子供だと思ったのか?突然のスカウトだ。
彼らの自由な笑顔を見た瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「…貴族社会なんて、クソくらえだ。」バルトン家の冷たい目、母を救えなかった無力感。
もう、あの屋敷には戻らない。
屋敷からの救援部隊に別れを告げる。
俺の境遇を知っている庭師は止めようとはせず、寧ろ応援してくれた。
「坊っちゃん、アリシアお嬢様を守ってさしあげてくだせぇ…」
母さんは屋敷の皆から愛されていたんだな…
「任せてください。皆さんも、お元気で!」
俺は冒険者たちに頷き、彼らの荷馬車に飛び乗った。
「俺はエリック。これからよろしく!」
これからどんな冒険が待っているのか、楽しみしかない。
後日、バルトン家では俺の「死亡」が公式に発表された。
修道院での争乱で「一人の庶子が死んだ」と処理され、俺の存在は綺麗に抹消された。
俺はもうエリック・バルトンじゃない。
冒険者、ただのエリックとして、新しい人生を切り開く!
冒険者たちのキャンプで、女剣士が俺に木剣を渡す。
「ガキ、まずはこれで鍛えな。魔法も悪くねえが、剣も覚えろよ。」
星空の下、俺は木剣を握り、未来を誓う。
「母さん、いつか必ず会いに行く。その時まで、俺は強くなる!」
新たな仲間と共に、俺の冒険が始まる。
魔物、秘宝、未知の地平。
せっかく転生した二度目の人生、何が来ても乗り越えてやる!