最終話 家族の誓い 新たなレースの始まり
【注意】本作には性的表現の暗喩が含まれます。苦手な方はご注意ください。
大陸の辺境、星空が村を照らす。
エリック(15歳)は宿の広間で、リナの15歳の誕生日を祝う喧騒に笑う。
マリアがジョッキをテーブルにドンと置き、
「リナ!お前も15歳、もう立派な成人だ!飲むぜ!」
ガイルが酒瓶を掲げる。
「祝いの酒だ、逃がさねえぞ!覚悟しろ!」
クレアが微笑む。
「リナさん、大人への祝福よ、でも、ほどほどにね?」
リナが三つ編みを振ってドヤ顔。
「ハッ、アタシももう15歳!成人だ!酒なんて余裕!」
エリックがニヤリ。
「酔い潰れんなよ?」
焼き肉、果物、ケーキが並び、村の楽団が陽気な曲を奏でる。
成人年齢の15歳。盛大な誕生パーティーだ。
マリアがリナに酒杯を押しつける。
「飲め、リナ!大人の味だ!」
リナが一息に杯の中身をゴクッと飲み込む。
「うぇ、苦っ!でも、平気らろ!」と強がる。
普段はあまり飲まないエリックもガイルに勧められ、一口。
「…うわ、これ結構強くないか?頭クラッとするな」
呂律の回らないリナを見ながらマリアが笑う。
「ハハッ、いいぞいいぞ!かわいいねえ!」
クレアが優しく
「ほどほどよ?」とたしなめて笑い声で夜が更ける。
宿の部屋、月光が差し込む。
エリックはベッドに座り、ルミエールを振り返る。
聖女セレナ—母アリシアの抱擁。「母さん」と呼んだ瞬間の反応。
彼女が真実を隠した理由はわからないが、「今はまだその時ではない」と信じ、旅を続けてきた。
「母さん…俺、いつかまた会いにいく。約束だ。」
ドアがノックされ、リナが顔を覗かせる。
「なあ、エリック…またちょっと話さねえ?」
彼女の声は震え、三つ編みが月光に揺れる。
頬は酒で赤く、目は潤んでいる。
エリックが驚き、
「リナ?どうした、こんな時間に…?」
リナはベッドに座り、三つ編みを握りしめる。
「…今日、誕生日でさ。仲間と、村の人たちと騒いで、すっげえ幸せだった。
でも…なんだか胸が、張り裂けそうなんだ。」
エリックが目を丸くする。
「張り裂ける?リナ、飲みすぎたか…?」
リナが立ち上がり、叫ぶ。
「ちっげえよ、馬鹿!アタシ、15歳になって、
大人になって、自分の気持ち全部ぶちまけたいんだ!」
涙がこぼれ、声が震える。
拳を握り、続ける。
「アタシの両親は、小さい頃に山賊に殺された。
爺さんと婆さんが育ててくれたけど、今は家を飛び出してこんな生活だ。」
リナが家を出たのは10歳の頃だという。
「夜に手をつないで一緒に寝て、お前の隣に居たいって思った。
ルミエールでお前の涙見て、お前を支えてやりたいって思った。」
グスッと鼻をすすり、続ける。
「クレアが言ってた。そういう気持ちが愛情なんだって。
お前がアタシに、愛情ってやつを教えてくれたんだ。」
エリックの心がドクンと鳴る。
リナが一歩近づき、涙声で叫ぶ。
「アタシ、お前の笑顔も、弱さも、全部愛してる!
こんな熱くて、苦しい気持ち、初めてだ!だから…
エリック、アタシと家族になってほしい!
アタシの孤独、全部お前で埋めてほしいんだ!」
彼女の声は嗚咽に変わり、月光に涙が光る。
エリックは立ち上がり、リナをそっと抱き締める。
彼女の震える肩、温かい涙が胸に染みる。
「リナ…お前、そんなことを…。
俺もだ。お前は最高のライバルで、最高の相棒で、俺の全部だ。
家族になろう。一緒に、全部乗り越えよう。」
少し強く抱き締めると、互いの震え、鼓動を感じる。
二人は見つめ合い、月光の下で口づけを交わす。
情熱的で不器用なキスは、互いの傷を癒やす。
リナがエリックの胸に頭を預け、囁く。
「でさ、エリック…家族ってさ、二人だけじゃねえよな…。
新しい家族…、ほしいんだ。アタシの子供に、孤独なんて味わわせねえから…。」
エリックが笑う。
「リナ…お前、ほんとすげえな。…ああ、俺もだ。
新しい家族、作ろう。お前と俺の子供なら、絶対幸せだ。」
リナが涙を拭い、笑う。
「…バカ。エリック、やっぱ最高だ。」
二人は抱き合い、愛と未来への誓いで結ばれる。
月光が雲に隠れ、部屋は静かに暗転していった。
数分後、軋むベッドの音。
荒い息づかい。
見つめあい互いに高まる二人の頭に、突然、聞き覚えのある声が響く。
『まもなく転生レース、スタートです!準備はよろしいですか?』
「「ふぁ!?」」
エリックとリナが息を荒げ、驚く。
あの転生レース、女神の声—開始の合図だ。
声が楽しげに続ける。
『3…2…1…』
カウントダウンが頭に響き、
『スタート♪』やけに軽快な合図が響き、
「ふぅっ!」
エリックが一つ震えて動きを止める。
「くっ、あの女神、どこかで見ているのか!?」
息の荒い二人が顔を見合わせ、リナが目を丸くする。
「…エリック!何!?今の、え、マジで!?」
エリックがニヤリ、
「…俺たちの子供、ひょっとしたら転生者かもな?」
リナが三つ編みを振って大笑い。
「ハハッ、最高じゃねえか!新しい家族、どんな子供が生まれるかな?」
エリックが笑い返す。
「お前らしいな。きっと、賢くて強い子供だろ。」
リナがお腹をさする。
「ふん、どんなやつでも、アタシたちの子なら大丈夫!楽しみすぎる!
さあ、最初の試練、頑張れよ!」
転生レースに勝利した転生者は、女神の祝福を受けて産まれてくる。
二人はベッドで笑い合い、月光が再び未来への希望を照らす。
朝、陽光が部屋に差し込む。
エリックとリナは手を繋ぎ、宿の広間へ。
マリアがニヤニヤ
「おお、エリック、リナ!顔キラッキラしてんな!何かあったな!?」
ガイルもニヤニヤ
「エリック、リナ、大人らしい夜だったか?新しい家族の話でも?」
クレアが微笑む
「二人とも、素敵な未来が待ってるわね。
あと、声は少ーし抑えた方がいいですよ?」
リナが赤面し、
「う、うるせえ!黙れ!」
「お前ら、朝から元気すぎだろ。」
エリックはハハッと笑って窓から空を見上げる。
母アリシアのいるルミエールは、今はもう遠い。
だが、リナと仲間、そしていつか生まれる新しい家族が、旅を支えてくれる。
「母さん…俺、幸せになるよ。そしていつか、絶対会おう。」
リナがエリックに後ろから覆い被さり、肩越しに頬を寄せる。
「エリック、行くぞ。次はどんな冒険だ?
新しい家族も、全部ぜんぶ、置いていくなよ?」
エリックは笑う。
「ああ、約束だ。一緒に行こう!」
女神がこっそり見守る世界で、二人の旅は続く。
愛と希望を胸に、新たな未来へ。
END
これにて物語は終了となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。