10話 合同依頼 鉄角獣
交易都市の冒険者ギルドで、大型魔獣「鉄角獣」の討伐依頼が発令された。
鉄角獣は都市近郊の鉱山を荒らし、ギルドは複数のチームを動員する。
鉱山の入口は霧に閉ざされ、鉄角獣の咆哮が響く。
エリック(14歳)は剣を握り、隣のリナをチラ見する。
「おい、リナ、でかい魔獣だぜ。負けねえよな?」
リナは三つ編みをビシッと振る。
「ハッ、アタシが負けるわけねえだろ!鉄角獣だろうがぶっ飛ばす!」彼女の口調は乱暴だが、
「オレ」から「アタシ」に変わり、声に微かな柔らかさが混じる。
(…リナ、なんか可愛くなったな。)
そんなことを考えていると
マリアが大剣を担ぎ、
「ガキども、気合入れろ!鉄狼団のジジイどもに遅れんな!」と叫ぶ。
ガイルが軽く笑い、
「マリア、ジジイはやめろ。先輩だぞ」と嗜める。
クレアが眼鏡を直し、
「皆さん、連携を忘れずに。」
そこへ、鉄狼団が現れる。
ダリオスは寡黙に剣を構え、セリスは弓を手に皮肉な笑み。
ヨナは聖印を握り穏やかに微笑む。
エリックはセリスを見た瞬間、胸がざわつく。
「…この女、なんか…気配が?」リナがエリックの視線に気づき、ムッと三つ編みをいじる。
「おい、金髪!何だよ、あのオバサンに目ぇ奪われてんのか?」
エリックが慌てて手を振る。
「ち、違う!なんか…変な感じがしただけだ!」
━━戦闘開始━━
鉄角獣が突進し、鉱山の岩を砕く。
ダリオスが「鉄狼斬」で角を叩き、マリアが大剣で追撃。
セリスが「追尾射」で目を狙い、ガイルが「影刃」で足を削る。
エリックは「風刃」を連射して援護。
リナは剣で突進する獣を足止めし、クレアが「神壁」で防御。
ヨナの「聖光」が傷を癒やし、戦いは優勢に。
リナは剣を振るうが、獣の咆哮に一瞬竦む。
「くそ…まだビビるか!」
エリックが叫ぶ。
「リナ、お前ならやれる!」
リナは目を輝かせ、
「ハッ、言われなくても!」と突進。
エリックとリナの連携で獣の動きを止め、マリアとダリオスの一撃で鉄角獣は倒れる。
戦後、キャンプで両チームは酒を酌み交わす。
セリスがエリックに近づき、
「お前、噂の金髪のガキだろ?噂、聞いたぜ。頭キレるってな。」
エリックは彼女の目に再びざわつきを感じる。
(…なんでか、初対面って感じがしない…リナの時と同じような…?)
リナが割り込み、
「おい、ババア!金髪はアタシの相棒だ。絡むな!」と乱暴に吠える。
セリスが笑う。
「へえ、仲良いな、三つ編み。」
リナは顔を赤らめ、
「う、うるせえ!」と三つ編みを振る。
エリックがリナを引っ張り、囁く。
「なあ、リナ、あのセリスって女…なんか変な感じ、しないか?」リナは渋々頷く。
「…ああ、アタシもだ。ひょっとして…転生者か?でも、よくわかんねえな。」エリックも同意。
「んで、ひょっとして、だけど、…お前、嫉妬してたろ?」
リナが真っ赤になり、
「バ、バカ!アタシがそんな…!」
エリックはニヤニヤ、「可愛いな、お前。」リナは三つ編みをブンッと振り、
「金髪ぅ、ぶっ飛ばすぞ!」
ヨナがエリックに静かに話しかける。
「あなた…9年前、修道院を魔狼から救った少年かしら?金髪の、当時確か5歳の…?」
エリックは頷く。
「ああ、俺だよ。母さん…アリシアってシスターを救いたくて行った。
でも、母さんには会えなかった。別の修道院に移ったって…。」
エリックの目は遠くを見る。
「今も探してる。母さんを、絶対見つける。それが俺の冒険の目的だ。」
ヨナは聖印を握り、
「…神の試練です。あなたは導かれている。
アリシア…私、修道院でその名を聞いたかもしれません。少し調べてみます。」
エリックは目を輝かせ、「ほんとか!?ヨナ、頼む!」
ダリオスが呟く。
「ガキ、母を想う気持ちは強い。再会できるまで、絶対に生き延びろよ。」
セリスが酒を煽る。
「試練か運命か知らねえが、面白いガキだな。」
マリアも酒を煽る。
「そういや、あの修道院で初めて会ったんだったな!」
クレアが微笑む。
「もう9年も経ったんですね…。」
エリックとリナは見つめ合い、ニヤリ。
「なあ、アタシも、負けねえぞ!」
「望むところだ、リナ!」
女神の転生レースが引き合わせた絆。
エリックは母を探し、リナは自分を見つめ、鉄狼団は過去を背負い、戦い続ける。
この合同戦は、新たな冒険の始まりだ。