追い出されようとした時にお貴族様の馬車が来て、実はお貴族様の子供だったことが判りました
ドンドンドンドン!
そして翌朝、扉を叩く音で叩き起こされた。
いけない! もう昼だろうか?
昨日はほとんど準備もせずにぴーちゃんと寝てしまったのだ。
時計を見たらまだ、8時だった。こんな時間に誰だ?
私はムッとして、外に出ると、そこにはエイダを初め、昨日の連中が、雁首揃えて立っていた。
「パティ、あなたまだ準備が出来ていないの?」
両手を腰に添えてエイダが怒って言ってくれた。
「そんなこと言ったって、あなた、お昼までで良いって言ったじゃない」
私がムッとして文句を言うと、
「何を威張っているのよ。私はお慈悲で昼まで待ってあげるって言ってあげたのよ。それをあたかも当然のように言うなんて!
もう良いわ。あなたたち、パティを追い出して」
「ええええ!」
私は思わずエイダと男たちを見た。
「いや」
「そすがにそれは」
私の視線に男たちは躊躇した。
「パティ、あなたまた、流し目したわね」
男たちが動かないのに切れたのか、いきなり、エイダは私の方につかつか歩いてくると
パシッ
と私の頬をしばいたのだ。
「痛い」
私は思わず頬を押さえた。
この女、良くも叩いてくれたわね。前世で虐められたときでも叩かれたことは無いのに。
そう言えば私が黒服の神様は叩いた。これはその神様の仕返しなのか?
でも、あれはわたしの胸の中にいた神様が悪いのだ。
私は完全に切れていた。
こうなったら、神も仏もない。やってやろうじゃない!
私が決意した時だ。
ポカポカ言う蹄の音とともに、いきなり角を曲がって馬車がやって来たのだ。
「えっ?」
皆驚いて、馬車を見た。
こんな山奥に馬車が来るなんて滅多に無い。それも、農家のよく使う荷馬車なんかじゃなくて、貴族の使いそうな立派な馬車だった。
なんと、馬車は争う私達の前に止まったのだ。そして、御者の男がこちらに歩いてきた。
そして、驚いた事に、私の前に立ち止まると礼をしたのだ。
「パトリシア・ローギル様でいらっしゃいますね。私、ローギル家で執事をしておりますケイン・ブラインと申します」
貴族の執事らしい男が、私に恭しく話したのだった。
ええええ!
パトリシアって誰だ?
私達は唖然とした。
私はそのケインの言う意味が判らなかった。
でも待って!
ローギルってこの村も治めている、この辺りの領主様の事では。確か爵位は男爵だったはずだ。
でも、私がその一族なんてあり得るはずはない!
おばあちゃんはそんなことは一言も言っていなかった。
絶体に何かの間違いだ。そもそも私の名前はパティだし。
「あのう、私の名前はパティですけど」
「パトリシア様の愛称がパティです」
男はさも、当然のように言ってくれた。
「何を言っているの? あなた、この小汚ないパティが男爵様の親戚な訳無いでしょ」
私達のやり取りを見ていたエイダが我に返って口を挟んできた。
「お前は誰だ?」
執事は私とは180度態度を変えてエイダを見下ろしたのだ。
「私はこの村の村長の娘よ」
「村長の娘ならばよく知っていよう。パトリシア様のお姿は今は亡き前の奥さまにそっくりでおられる。前村長にはお館様からくれぐれも、宜しく頼むとお話もあったはずだ。祖父から聞いていないのか?」
執事はエイダに聞いていた。
「そんな、まさか」
エイダや回りの取り巻き達は唖然としていた。
「それよりもパトリシア様。その頬が少し腫れていますが、いかがされたのですか」
ケインは私の顔を見て驚いて聞いてきた。
「ああ、これ? その女に張られたのよ」
私はムカついていたこともあり素直に、そのまま話してしまった。
「な、なんという。そこの女。男爵様のお嬢様に手を挙げるとはどういうことだ」
「えっ、いえ、そんなつもりは」
エイダは真っ青になって慌てだした。
「どんなつもりで手を上げたのだ。時が時なら、縛り首だぞ」
「そんな」
エイダは涙目で茫然自失して地面に座り込んでいた。
「貴様らもお嬢様に手を出したのか」
「いえ」
「手を出したのはエイダ様だけです」
「ちょっとあんたたち私を見捨てるの」
「ごめんよ、エイダ」
「お貴族様には叶わねえわよ」
男たちは慌てて蜘蛛の巣を散らすように逃げ出したのだ。
「そ、そんな」
もう、エイダは悲惨な顔になっていた。
「ケインさん。エイダの件は良いわ。ちょっと手が当たっただけだから」
私が助け舟を出してあげようとしたが、
「そのようなわけには参りません。ここで甘やかせると平民共はつけあがりますからな。エイダ。直ちに村長ともどもお館様の所に謝りに来るのだ」
ケインはそう言いはると、
「さっ、パトリシア様、どうぞ、馬車にお乗り下さい」
私はケインにエスコートされて、馬車に乗り込んだのだ。
茫然自失しているエイダを残して馬車は軽やかに、動き出した。
一路この辺りの領主である男爵家に向かって。
私の優雅なお貴族様生活が始まるはずだったのだ……
実はお貴族様だったパティ。果たして幸せなお貴族様生活は送れるのか?
次話は今夜です。
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