魔法少女に変身できませんでした
私は夢を見ていた。
魔法少女になって、少年のジルにヒールをかけていたのだ。
ジルはとても可愛かった。
そんなジルを私は思わず抱きしめていたのだ。
めちゃくちゃ可愛い。
そんなジルが突然大きくなって、いきなり今の男らしいイケメンのジルになったのだ。
ええええ!
私は思わずびっくりして目を覚ましたのだ。
「ええええ!」
そして、現実でも目の前にジルの整った顔のドアップが迫ってきて、思わず、パンチでその顔を殴っていたのだ。
「「痛い!」」
殴った手がとても痛かった。
それは殴られたジルもそうみたいだけど。お互いの声が重なったのだ。
そもそも私は今、ジルにのしかかられているんだけど、何で?
「キャッ」
私は現実にかえって、真っ赤になった。
「ちょっとあんた達、何やっているのよ」
横からマチルダが呆れて声をかけてきた。
「し、知らないわよ」
私は慌ててジルを押しのけて体を起こした。
「すまない。あまりにも寝顔が可愛くて」
何かジルがとんでもないことをさらりと言ってくれるんだけど。
私はもう真っ赤だった。
そこは最初に連れらて来た倉庫のような場所でに寝かされていた。違うのは中が煌々と明かりに満ちていたことだ。
そして、その中央にはいかにも偉そうな男が立派な椅子に座って私を冷然と見下ろしては……いなかった。
なぜか、その男は顔を押さえていて、その横には取り押さえられたらしいブラッドが、おでこを腫らせていたんだけど、何があったんだろう?
「あの偉そうな人誰?」
私はマチルダに聞いた。
「アレクサンダーよ」
「アレクサンダー大王?」マチルダが言ってくれるんだけど判らない。アレクサンダーと言えば前世世界史に出てきた大帝国を築いたアレクサンダー大王だ。
「何を冗談言っているのよ。帝国の第一皇子殿下よ」
マチルダが訂正してくれた。
「えっ?」
そんな大物出てきたの!
「やっと目ざめおったか!」
その第一皇子が私の方を見た。顔が腫れている。おそらく、ブラッドが頭突きしたんだ。それで今捕まっているんだ。
ブラッドにしろジルにしろ、どうやってここまで来たか判らないけれど。
「そして、貴様は第三皇子のヴァージルだな」
「これはこれはお久しぶりです。兄上」
優雅にジルが立ち上がったんだけど、
ええええ! 今、アレクサンダーがジルの事を第三皇子って言った?
私は目が点になった。
そんな、ジルって第三皇子殿下だったの?
そらあ、マチルダの婚約者だから低位貴族じゃないと思っていたけれど。
皇子なら前もって教えなさいよ!
私はマチルダを睨み付けた。
「飛んで火に入る夏の虫だな。わざわざ死にに来てくれるとは」
アレクサンダーがにやりと不気味な笑みを浮かべてくれたのだ。
「それはこちらのセリフですよ、兄上。古代竜に殺されたいと見えますな」
ジルの言葉に私はぴーちゃんを探したがいない。
「古代竜ならばここに捕まえているぞ」
第一皇子は頑丈な檻を指差した。なんと、ぴーちゃんは第一皇子の横で檻に入れられてぐうすか寝ていた。
「ふん、そんな檻など古代竜にとっては一撃ですよ」
「何を寝ぼけた事を言っているのか。この檻は障壁を何重にもかけた帝国内でも最強の檻だぞ。いくら古代竜とはいえ、そう簡単には破れまい」
ジルの言葉に対して自信をもって第一皇子は反論してくれた。現実はそうなんだろう。
私達は捕まっているブラッドを入れても4人だ。
それに対して第一王子側はざっと見回した限り100人以上はいるみたいだ。
これは数的には圧倒的にやばい状況だった。
ぴーちゃんが元気なら一撃で勝てたかもしれなかったが、あろうことか今はよだれを垂らしながらスースー寝ているのだ。普通飼い主のピンチには犬なら吠えるだろう。
まあ、古代竜だけど。
「アレクサンダー、何をしているのです。せっかく第三皇子とその婚約者がわざわざ来てくれたのです。さっさと殺すのです」
第一皇子の隣のこれまた偉そうな女が言ってくれたんだが、これは誰だ?
「母上。しかしいきなり殺るというのはいかがなものかと」
第一皇子が躊躇してくれた。そうだ。人の命は大切なのだ。でも、母上ということは女は王妃様ではないのか。
「おっほっほっほっほ。さすが王妃様ともなると人の命を虫けらのようにお考えになっているのですね!」
マチルダが言ってくれた。
「フンッ。アラプールの小娘め。口だけは大きいのね。でも、私に対してそんなことを言って生きていられると思っているの?」
「それはこちらのセリフよ」
王妃に対して、マチルダは一歩も引かなかった。
「古代竜が馬鹿面下げて眠っているのに、あなた達にどんな手があるのかしら」
王妃は完全に馬鹿にしてくれた。
「ふんっ、その面の厚い皮を歪めてよく自らの馬鹿さ加減を良く思い知るが良いわ。さあ、パティ、やっておしまい」
マチルダはそう言うと私を前に押し出したのだ。
ええええ!
ここでいきなり私に振るの?
王妃たちの後ろから騎士たちがわらわらと出てきたんだけど。
そのままではやられてしまう。
もう、こうなったらやるしかないわ!
私は覚悟を決めたのだった。
「わっはっはっはっはっ! 私は無敵の沙季様よ! そこのトッチャン坊やも鬼ババアも私の前にひれ伏しなさい!」
私は両手を腰の横に置いてそう叫んだのだ。
しかしだ。
あれれれ……
でも、私は光り輝かなかったのだ。
いつもはこう叫ぶと光り輝いて変身するのに。
私はこの結果に完全に固まってしまったのだ。
変身できなかったパティの運命や如何に
続きは明朝です。





