帝国第三皇子視点7 魔物は古代竜のガキが退治しました
俺たち8人は馬車に乗ったのだが、ブラッドとローズは婚約解消した仲だし、お互い話しずらいみたいだ。もう一人の侯爵令嬢と二人の伯爵令嬢は俺に賢明に話してくるんだけど、それは俺も億劫だった。ここは強引にブラッドにも話を振るが、ブラッドは何かつれない。
女たちもブラッドとローズの話は聞いているのでブラッドには話しずらいのだろう
ブラッドリーの連れてきたアルフのほうが余程反応は良かった。
「そう言えば、この森には、ユニコーンがいるというお話ですわ」
セシリー・ダンドネル侯爵令嬢が言い出した。
「あ、それ聞いたことがありますわ。なんでも、ユニコーンが森を浄化するからこの森には魔物がいないって」
そのお供の伯爵令嬢が被せてきた。
「へええ、ユニコーンってヒールを使うだけじゃないんだ」
アルフが乗ってくるが、そうか、ユニコーンはヒールも使うんだ。ピンクの君みたいに、と俺は思った。
「まあ、ユニコーンは治療魔術も使えるのですね」
「まあ、人のためには中々使わないってことだけど」
「ぜひとも見てみたいですわ」
ダンドネル嬢がいうが、
「まあ、ユニコーンは処女を好むって言うから女の子だけならよってくるかもしれないよ」
アルフがおどけて言った。
「まあ、それは残念ですわ。私達には4人も騎士の方がいらっしゃいますから、ユニコーンは寄ってきませんわね」
ダンドネル嬢は俺たち男を見回して言ってくれたが、じゃあ、女だけで行ってもいいよ。と思わず言いそうになった。
そうすれば更にパティの班に近づきやすくなるし。
でも、まてよ。女だけって言えばマチルダの班がそうだ。
あいつ、まさか、ユニコーンを狙っているんじゃないだろうな……
俺は不吉な予感がした。
馬車を降りて公園に着いたら早速お弁当だった。
俺とブラッドはさりげなく、皆をパティの班の近くに誘った。
ここからはパティが良く見える。
「さあ、ヴァージル様こちらもどうぞ」
侯爵家のシェフが作ったと思われる肉料理を差し出されるが、これは弁当という物ではないだろう。外では食べずらい。
パティはサンドウィッチを食べていた。古代竜のガキにも与えている。
でも、古代竜のガキがこちらをチラ見して馬鹿にしたような顔をしてくれたのには切れそうになった。
まあ、我慢。ここは我慢だ。
古代竜のガキは女の子に囲まれて鼻を伸ばしていやがる。
パティがそれを見て少し切れていた。
そうそう、もっと嫌って!
俺はや思わず祈っていた。
散策の時間になると
「この噴水の北側にユニコーンを見かけたという情報があるのよ」
マチルダが言っているのが聞こえた。
やはりあいつの狙いはユニコーンか。しかし、いくらユニコーンが神獣と言えども女の子らには危険な獣だ。
いくらなんでも無謀すぎる。
まあ、もっとも古代竜のガキがいるからいくらユニコーンと言えども女の子を拐いには来ないと思うが。
「じゃあ、ユニコーン探しに北に行ってみよう」
マチルダの言葉に全員うきうきして歩き出したんだけど。
俺たちも少し離れて付いていくことにした。
でも、歩いても歩いてもユニコーンは出てこなかった。
当たり前だ。いくらユニコーンが処女好きだと言えども最強の古代竜がいるのだ。
出てくるわけはなかった。
いい加減にこちらの女どもも疲れてきた時だ。
「キャーーーーー」
そこに女の悲鳴が聞こえた。
「オードリー」
叫び声を上げてローズが駆け出した。
慌てて俺たちもついていく。
そして、その先には血まみれのオードリーが魔物に切り裂かれて倒れていたのだ。
何故、こんな所に魔物がいるのだ。
魔物がパティを見たのだ。
これはやばい。
俺は魔術をその魔物に向けて放っていた。
それは瞬時に魔物に命中して、弾き飛ばしていた。
「パティ」
「大丈夫か」
俺とブラッドがパティに駆け寄った。
「オードリーが……」
パティが指差すと、
「魔物どもめ、許さん」
「撫で斬りにしてやる」
俺たちは剣を抜くと魔物に斬りかかった。
俺は目の前にいた魔物を一刀両断する。そして、その横にいた魔物も。剣で次々に切り裂いてくれた。
対して、ブラッドは爆裂魔術を放って魔物を次々にやっつけていた。
でも、魔物たちはどこからか次々に出てきて、襲いかかってくるんだけど。
これでは流石にやばい。こちらは男が4人だ。守る女の子は12人もいる。
それに対して魔物はなぜこんなにたくさんいるというくらい多くいた。
そんな乱戦の時だ。
パティが突然魔物の前に立ち上ったのだ。
「パティ、危ない」
その瞬間、パティに襲いかかってきた魔物を俺は斬り伏せた。
「ありがとう」
パティがお礼を言ってくれるが、今はそれどころではない。
「危ない。パティ」
何故かパティはもう一度立とうとして今度はブラッドに後ろから押されて地べたに這いつくばった。今までいたところを魔物が腕を振っていた。
「パティ、危険だからしゃがんでいてくれ」
「そうだ。ここは俺たちがなんとかする」
俺たちはパティに二人して言った。
それでなくても大変なのだ。俺達に任せて欲しかった。
でも今度は古代竜のガキが立ち上ったんだけど。
まあ、こいつはやられたらそれでいいと俺は思ったのだ。
ガウォーーーー
吠えた、魔物が今度はガキに襲いかかってきた。
「ぴ」
でも、次の瞬間だ。古代竜のガキはその魔物の手をポイと触ったのだ。
その瞬間、魔物は飛んでいったのだ。
そうだこいつは古代竜だったのだ。
こんなカスの魔物が敵う訳はないのだ。
それを見た瞬間、俺たちを襲っていた魔物たちの動きが止まった。
そして、皆、古代竜のガキを驚愕してみているが、当然だろう。
ガキは魔物たちを睨みつけたら魔物たちはビクッとしたのだ。
「ぴーーーーー」
そして、今度は鳴いた。その声を聞いた途端に、魔物たちが一斉に後ろを向くや、
「ギャーーーー」
叫びながら一斉に逃げ出したのだった。
俺たちはそれを唖然としてみていたのだ。
さすがガキでも古代竜、でも、俺たちが戦っていたのは何なのだ!
「俺たち、ほとんど役に立たなかったのか」
「パティのペットの前に形なしだな」
俺とブラッドは唖然としていた。
「いや、お二人がいたから助かりましたよ」
パティが言ってくれたが、
「ぴーーーー」
古代竜のガキが否定してくれた。
それならもっと早く戦えよ!
「さすが、ピースケ。うちの男達と比べて余程役に立つわ」
マチルダの声が俺たちに塩をぬる。
女たちもガキを讃えていた。
肩を落とす俺らをしり目に、いや、古代竜には人間は勝てないと俺は自分を納得させようとしたのだ。
あろうことかマチルダはガキにユニコーンまで呼ばせたのだ。
傷ついたオードリーも一瞬でユニコーンは治していた。
ユニコーンは結局マチルダが飼う事になった。結局こいつの思惑通りになったのか?
「ま、私の美の前には、ユニコーンも古代竜も跪くのですわ」
マチルダは心の底から高笑いしてくれたのだ。
「そんな訳あるか!」
「ぴーーーー」
俺の文句と古代竜の不満そうな鳴き声が同時に発っせられた。
俺と古代竜のガキは珍しく意見が一致したのだ。





