私に近付いて口説いて来た皇子は窓の外に弾き飛ばされました
「何しに来たのよ。食事時に」
マチルダがブスリと言うと
「まあ、食事時と聞いて大変恐縮していらっしゃいましたが、パトリシア様にも御用がおありみたいで」
「パティ、あなた、何かジルにバラしたの?」
マチルダが聞いて来たが、私はばらしていない。
「何も話していないわよ。あのブラッドの奴がばらしたんじゃない?」
「そこをきちんと、聞きたかったんだけど、あなた、ブラッドの前で変身したの?」
マチルダの視線が厳しいんだけど、そもそも何故マチルダが私が変身することを知っているか、そちらの方が気になるんだけど……
私は仕方なしにその時の事を簡単に話したのだ。
ローズが襲われそうになって考えなしに変身した事を話すと、
「えっ、じゃあ、あなた、ローズの為に変身してあげたの?」
マチルダが聞いて来た。
「そうよ」
「何しているのよ。それで、ローズに目の敵にされてたんじゃ洒落にも何らないじゃない」
マチルダが言ってくれるんだけど、それは私が一番感じているわよ!
でも、私が魔法少女に変身したところをオブラートに包んで話しても理解してくれなかったのよ!
「そうなんだ。本当にあなたも人が良いというか、馬鹿と言うか」
マチルダが言ってくれるんだけど、馬鹿ってそれはないんじゃない!
「仕方がないじゃない。本来ならローズにもっとブラッドがちゃんと説明してくれた良かったのに、あいつが婚約を解消するから更に話はややこしくなったのよ」
私がムッとして言うと、
「それは、ブラッドがあなたに恋してしまったらから仕方がないんじゃない?」
「何言っているのよ!私みたいな地味な女にあいつが恋するわけ無いでしょ! あいつは無敵の私を護衛に使いたいだけよ」
「えっ? ブラッドの奴何しているのよ!」
私の言葉に、マチルダは何故か頭を押さえているんだけど。
「で、更にさっきの会話で、ジルにもバレた可能性があると」
マチルダは抱えているんだけど。
「困ります」
外で大きな声がした。
「良いだろう。私はマチルダ嬢の婚約者になったのだから」
「しかし……」
マチルダが何か合図した。
「申し訳ない、マチルダ嬢、突然お邪魔して」
扉が開いて、そこへジルが入って来た。謝っている姿も、相も変わらず麗しいと私は感心した。
「本当ね。いくら婚約者と言えども女の部屋に入ってくるのはどうかと思うのだけど」
「申し訳ない。何と食事中でしたか?」
更に申し訳ないようにジルは言う。
「ふんっ、知っていたくせに」
マチルダはお冠だ。
「あんたの分はないわよ」
マチルダは婚約者を立たせたまま言うんだど、そのまま食事を続けるマチルダは鬼だ。
「まあ、ジル様、お邪魔のようですから私はこれでお暇しますから」
私は肉をむしゃむしゃ食べているぴーちゃんを抱いて、下がろうとした。
でも、このぴーの野郎はなんとお皿を持ったまま、私に抱かれたのだ。
「ちょっとぴーちゃん、意地汚すぎ」
私が注意してお皿を取り上げると
「ぴ----」
と泣いてお皿に手を伸ばすんだけど、ちょっと食い意地の張りすぎよ!
「ぴーちゃん」
私が怒りの声を上げたら
「ぴーーーー」
この世の終わりみたいな声出すんだけど。
仕方なしに腕を緩めたら、そのまま机に飛びついて、肉をがっつきだしたんだけど……
ちょっと誰に似たのよ!
私がムッとして見ても吾知らぬ顔で食べている。
「本当に飼い主そっくり」
なんかマチルダが言ってくれるんだけど、
「私はここまで食い意地は張っていないわよ」
ブスっとして私は言った。
「ぷっ」
それを見てジルが噴出してくれたんだけど、そこは笑うことないじゃない!
むっとしてジルをにらむと。
「ごめん、ごめん、あまりにパトリシア嬢のしぐさが可愛くて」
「えっ」
可愛いと言われて私は少し赤くなった。
「パティ、あんた、男に免疫なさすぎよ」
「えっ」
私はマチルダが何を言っているか判らなかった。
「この手の男は女を見ればたとえ相手をブスだと思っても『美人ですね』、とか、生意気だと思っても「可愛いですね」っておべっかを使うのよ。それを貴族の令嬢で信じるのは免疫のないあんたくらいよ」
そうか、そうなんだ。まあ、地味な私に可愛いなんて、こんな見目麗しい令息が言うわけないわよね。信じて損した。
「いや、今のは本心で」
ジルが言い訳するが、
「今まで、あんたの事を、こんな地味で女の魅力のないツンとした冷たい女が、どうして、まだ多少は女らしいローズから、ブラッドを奪ったんだろうって不思議に思っていたところで、あんたがピースケとほほ笑ましい食べ物を巡って争っているのを見て少し心が和んだだけよ」
何か長々とマチルダが説明してくれるんだけど。
「ふんっ、どうせ、私は地味で女の魅力がないですよ」
小声で呟いた。
ところがだ!
ジルが私の目の前に現れて
「いや、パトリシア嬢はとても魅力的だよ」
そう言って私の瞳を覗きこんで来たんだけど。
ええええ!
な、何なのこれは! ちょっとやめて!
私はパニックになったのだ。
その時だ。
ダン
という大きな音がして、窓が開くと同時に
バシンと言う音共にジルが窓の外に放り出されたのだった……
ここまで読んで頂いて有難うございます。
さて、皇子を窓の外まで弾き飛ばしたのは誰でしょう?
続きは明朝です!





