誘拐犯に付いて行こうとして眠らされました
結局、私はお嬢様に私が見聞きしたことを話せなかった。
どう考えても、私が言う事よりデービーの事を信じそうだし……
私に対するお嬢様の態度も酷いし。
何しろ、あの後、部屋に呼ばれた私は
「あなた、デービー様に助けを求めるなんてどういう事?」
「また、デービーに流し目したのね」
「本当にいやらしいこと」
お嬢様ら3人に徹底的に虐められたのだ。
言葉の暴力で!
私は誘拐犯に私が聞いていたのを知られて殺されたらどうしようと、怖い思いをして昨日は寝られなかったのに!
皆お嬢様のためでしょう!
なのに、この扱いは何よ!
流石の私も切れかけた。
その後で、また、延々と部屋の掃除を一人でさせられたのだ。
まあ、慣れているから良いけど……
それやこれやで、私がデービーらに殺されないのなら、そのまま脅されたままで誘拐を実行させた方が良いかと思ってしまったのだ。
私の代わりにデービーがお嬢様を虐めてくれるなら良い気味だ、と少しも思っていなかったかと言うと嘘だ。
お嬢様を娼館に売らせるのはさすがに可哀そうだけど、少しくらいひどい目に合わせても良いだろうと……まあ、最後は魔法少女になれば万事解決なのだ。
こうなったのも全て私を虐げたお嬢様が悪いのだ。
まあ、怖い思いした後に最後に助けてあげれば良いだろう……
私はその後、お嬢様に下見させられたコースも全てデービーに全部話してやったのだ。
ついでに誘惑犯らのアジトの場所を聞き出そうと思ったのだけど、流石にそれは教えてくれなかった。
まあ、この屋敷には誘拐犯の仲間はデービーとケントだけみたいで、他のメンバーはここにはいないみたいだった。
ただ、領都には他に50名くらいはいるみたいだった。なんて大きな組織なんだろう。外国の人身売買組織にも通じているみたいだった。
私は親切にも、騎士団にも人身売買組織がこの領地で活動していると投書はしてあげたのだが、全く相手にされなかった。見る限り何の動きも無かったから。
そして、あっという間に、当日になってしまったのだ。
当日、ローズお嬢様は朝から機嫌良さげだった。
「出来たら私をお供に連れて行ってほしい」とお願いしたのだけど、
「流し目をするあなたは嫌よ」
とあっさり断られてしまったのだ。
「そうよ」
「あんたは罰としてこの部屋をピカピカに磨いておきなさいよ」
デリアとオードリーに命令されてしまったんだけど……
どうしよう? そんなんだったらお嬢様は守れない。
「でも下見したのは私ですし。何かあったときには対応できると思うんですけど」
私はなおも食い下がった。
「そうね……」
お嬢様は考えてくれた。
よし、これならうまくいくか、私が楽観した時だ。
「ローズ様、私もパトリシアの行ったコースは行ったことはありましてよ」
「私もですわ」
オードリーとデリアが余計な事を言ってくれたのだ。
「なら、パトリシアは良いわ」
あっさりと私は捨てられたのだ。
いや、でも待ってよ。この二人がいたところで足手まといにしかならないし、
「誰が足手まといよ」
「それはあんたでしょ」
「えっ、聞こえていました?」
まずい心の声が聞こえていた。
ますます意固地になった二人によって私は完全においていかれることが決まってしまったのだ。
こうなったら仕方がない。
私は後を付けていくことにしたのだ。
ルートは前もって、下見をしたので判っていた。
「行ってらっしゃいませ」
私はブラッドリー様がロビーに迎えに来たとの知らせにお嬢様らを部屋から送り出したのだ。
流し目をさせまいとお嬢様はブラッドリー様にも会わせてくれなかった。
会えば誘拐犯の事さりげなく注意できたのに。
「ちゃんとサボらずに掃除するのよ」
デリア達に注意されたが、そんなのは無視だ。
私は3人が見えなくなると慌てて、部屋を飛び出した。
3人が乗った豪華な馬車が見えなくなると後を追おうとしてはたと気づいた。
どうやって追いかけたら良いのだろう?
走っていくには遠すぎた。
でも、私が馬車を借りるなんてことは出来ない。
魔法で移動するにしても、3分間で賊退治まで出来ない。
だってどこで賊が襲ってくるかも判らないのだ。
途中で3分間だけ最強が終わってしまえばそこまでだ。
それだけは避けたかった。
しかし、幸運の女神は私に味方したのだ。
「デービー様」
なんと外に出ようとしたデービーを見つけたのだ。
こいつは今から襲撃の場所に行くはずだった。
「どうしたんだい。パトちゃん。家で大人しく待っていないといけないんじゃないかい」
「私も連れて行ってください。何かの役に立つかもしれませんし」
「うーん、そうだな」
デービーは考えてくれた。
後一息だ。
「お願い!」
両手を胸の前で組んで上目遣いに言ってみた。女の子の可愛い仕草になったと思うのだけど……
でも、デービーは何故かギョッとして残念なものを見る様に私を見るんだけどなんでだ?
「まあ、良かろう。確かに役に立ちそうだ」
頭を振ってデービーは私を使用人用の馬車の中に案内してくれた。
でも、乗り込もうとした時だ。チクリと首筋に痛みが走ったのだ。
「えっ」
私はデービーを見ようとして頭がくらくらして、目の前が真っ暗になってしまったのだ。
眠り薬を注射されたと気付いた時にはもう遅かったのだ。
気絶させられたパティの運命や如何に?
今夜更新予定です。





