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侍女頭は私の涙を勘違いして厳しく指導とてくれることになりました。

「でっかい!」

私は侯爵家の領地の邸宅の中に入って思わず叫んでいた。


我がロウギル男爵家の家なんて、この屋敷比べれば犬小屋以下だ。


何しろこの邸宅は庭からして、門を入ってから延々と森が続いているのだから。


ロウギル家の庭はちょこっと果樹園があった程度だ。塀はなかったし……


でも、ここは門から玄関までが遠い。


さすが、この国最高峰の侯爵家だ。50年前は公爵家だったらしい。帝国に負けて属国になって、降爵されたらしい。


そして、やっと出てきた邸宅は三階建ての巨大な建物だった。


「すごーーーーい!」

私は田舎のお上りさん宜しく、ただ、ただ、その建物を見上げていた。


「お嬢様! お嬢様!」

私はケインの言葉にあわてて振り向くと馬車が止まっており、扉が開いてケインがこちらを見ていた。

そしてその後ろには、数人の使用人が控えていた。


私はメチャクチャ恥ずかしかった。

「すみません」

慌てて、飛び降りるように降りる。

さすが侯爵家。使用人は誰一人表情を変えない。

呆れたように見ているのは我が家の執事だけだ。

こいつは口では私を敬っているように言っているが、絶体に山奥出身の山猿だと心の中では馬鹿にしているに違いない!


飛び降りた、拍子に、足を踏みつけようとしたら、さっと避けられてしまった。

そのまま、こけそうになったところを、支えてくれたんだけど……

もう一度踏もうとして、また、避けられてしまった。


「こちらです。宜しいですか?」

私がさらに踏もうとした時だ。侍女の方が遠慮がちに声をかけて来られた。

「「はいっ!」」

私達は慌てて、離れると侍女の方に付いて歩き出した。


屋敷は広かった。入ったエントランスは広い吹き抜けになっていて、私でも知っている有名な絵が掲げてあった。


「凄い!」

私が感嘆の声を上げると、

「パトリシア様」

ケインに注意された。

「すみません」

はしたなかったらしい。思わず、謝ると、

「私どもは使用人でございますので、お気遣いは無用です」

と侍女さんは言ってくれるんだけど、そういうわけにもいかない。何しろ、私もじきにその使用人の一人になるのだから。


私も言動を注意しようと歩いたんだけどこの廊下の長いこと。長いこと。途中で使用人に出会うと、その度に、横に避けられて、軽く頭を下げて、くれるんだけど。


我が家と違って多くの使用人がいるようだ。


そこにはホッとしたけれど、私は貴族の礼儀作法はほとんど知らないんだけど、そんなのが来て良いのか? こんな名門に!

私は少し不安になった。


そして、私は廊下を突ききった先、使用人エリアの、侍女長の部屋に案内されたのだ。



「失礼します。ロウギル男爵様の執事の方とパトリシア様をお連れしました」

「お入りなさい」

甲高い声が聞こえた。


そこには、メガネをかけた長身の女性がいた。

なんと、とあるアニメの侍女そっくりだ。

「私が侍女長のロッテンマイヤーです」

私はその紹介に目が点になった。名前まで同じなんて。


でも反応がそのせいで遅れた。侍女長が眉を上げる。

隣からケインが私の肘を突いてくれた。

はっとする。

これはやばい。


「すみません。今日からこちらでお世話になるパトリシア・ロウギルと申します」

私は思いっきり頭を下げた。


「パトリシア、なんですかそのお辞儀は」

いきなりロッテンマイヤーさんに注意された。


「ロウギル男爵家では基本的な礼儀作法も教えていないのですか?」

今度は目がケインに行った。


「申し訳ありません。何しろパトリシア様はついこの前まで平民の間で育てられていたものでして」

ケインが慌てて説明をはじめた。


「はああああ? その様な者をこの由緒正しきアーブロース侯爵家に奉公をさせるというのですか?」

ギロリとケインを睨みつけてくれた。


「申し訳ありません。仕事のできる侍女をとのことだったので、パトリシア様は我がロウギル家の中では一番仕事はできて……」

「何を言っているのです。それは当然礼儀作法がある程度できる前提なのです。全く出来ないものなど、この侯爵家には用がないのですよ」

ケインの言い訳を途中でぶった切ってロッテンはイヤーさんは言ってくれたのだ。


「どうしろというのですか? こんな礼儀作法のなっていない娘を」

そう言うとロッテンマイヤーさんは私の頭から爪先まで鋭い視線で見てくれたのだ。

わたしは完全に蛇に睨まれたカエルみたいに固まっていた。

でも、礼儀作法がなっていないって言われても仕方がないではないか。何しろ1ヶ月前までは平民で、この一ヶ月も下働きの下女のような仕事を延々とさせられていたのだ。まあ、確かに食堂の給仕や朝晩の義姉の身だしなみの手伝いで多少は注意されて出来るようにはなっていたが、全然出来ないのは当然といえば当然だったのだ。


貴族の中に入るという事はこんなに苦しいんだ。

おばあちゃんと一緒にいる時はこんなことはなかったのに。

私はおばあちゃんのことを思い出して悲しくなってきた。

私の目から涙が涙が止めどもなく流れてきたのだ。


「ちょっとあなた、何故泣いているの?」

ロッテンマイヤーさんは私が泣き出しのたので、慌てだした。ハンカチを差し出してくれたが、これで鼻をかんでも良いのだろうか?


「いえ、ちょっと家族のことを……」

「家族ってあなたの母は母ってアグネスよね」

「えっ、母を知っておられるのですか」

「まあ、少し」

「そうですか? 私は全然知らなくて」

そう言うとロッテンマイヤーさんからもらったハンカチで鼻をかみだしたんだけど、ケインが簡単に私の生い立ちを話してくれた。

家族から母が死んだのはお前が産まれたからだと嫌われていることなどを悲劇的に話してくれるんだけど。

そこまで言うかってくらい誇張して話してくれた。


「判りました。アグネスの忘れ形見ならば、私が一人前の侍女になるようにしつけます」

私が泣いたのが家族に虐められて泣いていたと勘違いしてくれたみたいだ。まあ、そんなに変わらないけど。

そして、きっとして決心したようにロッテンマイヤーさんは私を見てくれたんだけど、それってビシバシ鍛えるってことで何かろくでもないような目にあう気がしてならないんだけど……


でも、私の意志はここでも全く無視されてしまったのだ。






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