神々のゲーム3 ヒロインは何故か虐められていないのだが
俺は第一ラウンドを新ヒロインがクリアしてくれてほっとした。
これをクリアするのが結構大変なのだ。
大体みんな、この第一難関を通過できないのだ。
それにプラスして、今回はなんとヒロインはドラゴンを手下に従えている。
こんな展開は初めてだった。
戦神と悪魔は魔法少女の登場に喜んでいたし、女神だけが不満を持っていたが、まさか今回は女神が出現して云々という展開ではないだろうな?
俺は多少不安を持った。
それに村長の娘がやたらと王子に構おうとしていたのだけど、ここまで、王子に執着しているのは初めてだ。
王子が都に帰っても、その後エイダはぼうっとしているんだけど……
「ほら見てみなさいよ。今回のヒロイン、ロリコン気味でおじさん達には好かれても王子を惹きつけられていないじゃない」
女神がぶつぶつ文句を言ってきた。
「おいおい、誰がおじさんだ」
「そうですよ。まだまだ若い私達を捕まえておじさんなんて言うのはおかしいのでは無いですか?」
戦神と悪魔が抗議したが、女神は無視して、
「ねえねえ、黒服、いつからヒロインがエイダに代わったのよ」
女神がとても不機嫌そうに聞いてきた。
ええええ! 村長の娘が王子と恋するシンデレラ物語だったんだろうか? この話は!
いやいや、話はまだまだこれからなのだ。
「おい、無視するなこの淫乱女!」
「何よ。戦きちがい!」
戦神と女神が場外乱闘しそうなんだけど、頼むからこちらの世界だけでやれよ! 俺の世界に手を出すな!
俺は祈る気持ちだった。
ここからの第二ラウンドはパティがエイダに虐められる展開のはずなんだが、エイダの心の中は王子様で一杯で中々パティにからみに行かないのだ。と言うか、エイダの心ここにあらずという感じで、いまいち対応に切れがない。このエイダのいじめに耐えきれなくなって自殺したヒロインもいたのに……
今回はそこまでの大きないじめはないのだ。
「なんか面白くないぞ」
戦神がぶつぶつ文句を言ってきた。
おいおい、今まではパティが虐められていていつも切れていただろうが……虐められないからって今度は怒るなよ!
しかし、最後はパティの祖母が亡くなってやっとエイダもやる気になったみたいで、パティを家から追い出そうとしてくれた。
それを男どもが助言してくれて一日待たせた。
そう、ここでの一日は大きいのだ。
何しろ翌日に男爵家の執事が現れるのだから。
でも、何と翌朝、早朝からエイダは子分を集めてパティ宅を襲撃してきたんだけど、おいおい、そんなんじゃ、執事とぶつかるだろう!
それも今回はエイダは怒りのあまり思いっきりパティの頬を張ってくれたのだ。
「おおおお」
「さすが黒服だな。自分一人がヒロインの胸の中でいい思いしてヒロインに張られたのを、こんなところで仕返しするなんて!」
悪魔が余計な事を言ってくれるが、
「あんた、男の風下にも置けないわね」
女神まで言ってくれるのだが、これはわざとではない!
そらあ、ヒロインに叩かれたのはムカついたからどこかで仕返ししたいと思ったことは認めるが……
そこに、執事が現れて、いきなりざまー展開になってしまった。
男爵の娘だったと知らされたエイダは涙目だった。
何か第二ラウンドはあっさり過ぎるんだけど。
そして、第三ラウンド。
ここでは母が死んだのは全てパティが生まれたせいだと逆恨みした姉によって、恐怖のいじめが始まるはずなのだ。
このいじめのあまりの凄まじさに自殺した者もいるのだ。
ここからはさすがの強運のパティもすんなりとは行かないだろうと俺は思ったのだ。
なのにだ。何故かパティは姉の出したいじめならぬ、仕事を全てクリアしてしまったのだ。
一日目からだ……何故だ? そんじょそこらの量じゃ無かったはずなのに。
出来なくて、ご飯を食べる暇もなく、パティが途中で涙にくれる場面があるはずなのに、やり終えてしまったのだ。
俺は知らなかったのだ。
今度のヒロインは前世で洗濯機が壊れてしまって、一年間下着などをほとんど手洗いしていたことを。
何しろヒロインはブラックに勤めていて、洗濯機を買いに行く時間も、コインランドリーに行く暇も無かったのだ。
その事実が、転生チートとして、家事スキル倍増に繋がったことを。
チート能力の発現で、村長の娘が侍女として登場する必要はなかったのだ。
姉と娘でパティをいじめるというパターンにもならなかった。何しろパティ一人いれば男爵家は回るのだ。金のない男爵家がはした金でも、村長の娘を雇う義理も無い。
そして、最後の冤罪容疑で地下室に閉じ込められて、餓死するバッドエンドは、パティの餌をドラゴンが運ぶことによってつぶされた。
姉の代わりにクロイック男爵家に嫁にやらされての監禁エンドも、パティがいなくなると困る皆に阻止された。
最後はパティばかみたいな家事スキルによってその代わりに仕事をさせられる恐怖に姉が駆られて、冤罪を、今度はパティのペットのドラゴンになすりつけようとしたら……いや、殺されたくなかったらドラゴンになすりつけるなんてするなよ!……怒ったドラゴンに吠えられて終わってしまった……
第三ラウンドは全然虐められていないんだけど……
こんなので本当に乙女ゲームのヒロインと言えるのか?
いやいや、次の侯爵家のいじめは半端でないはずだ。
絶対にパティは次の侯爵家で洗礼を受けるのだ!
俺は訳の分からない使命感に燃えだしたのだが、ぜったいに何かおかしい!
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きは明朝です。
そこからはお待ちかね侯爵編です。
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