第5話 メンバーが輝く為に
「じゃあ、お願いします!」
そうして、始まる第1曲目『アラ・モード』。
5人全員がVの字に並んで、本来淳史が居るべき場所、センターに俺は立つ。
そして、俺が作ったアップテンポな曲と共に全員で踊り出した――
曲が中盤に差し掛かった辺りで俺は場所を本来の場所から移動した。
この後、友也がステージ中央でバク転をするシーンだ。
目立ちたがりな本人の強い希望により入れたが、成功率は低い。
いつも勢い余ってそのまま後ろに転びそうになり、その次のダンスの動きにも間に合わなくなってしまっている。
目立つシーンでヨロヨロとするのはやはり見栄えも悪い。
(もし、また友也が転倒しそうになったら……!)
何より、いつも怪我をしたら危ないからやめて欲しいと言っていた俺はフォローに動く。
案の定、友也はバク転した後に勢いそのまま後ろに大きくのけぞる。
いつもと違うライブに力が入ったのか、そのまま頭から地面に真っ逆さま。
その後ろにあらかじめついていた俺は友也を受け止め、そのまま持ち上げながら踊ってステージ中央に戻る。
アドリブという名のリカバリーだ。
大型モニターにはその様子が映しだされ、俺に抱きかかえられて顔を真っ赤にする友也と、それを見て会場中から「キャー!」という悲鳴にも似た歓声が上がった。
友也は可愛い系の顔立ちだ、本人は絶対に嫌がるだろうが、こういう姿も見せて良いと思っていた。
どうやらファンも友也の魅力にお熱のようだ。
その後も、各メンバーの苦手な動きやふらつく場面を熟知している俺はできるだけフォローを入れた。
観客からはメンバー同士の絡みに見えるようにできるだけ自然に、彼らの見栄えがさらに増すように。
俺という不純物が入ったことで彼らの新しい一面や、魅力に気が付かせたい。
そうすることで、観客の皆様に満足と楽しさを提供する。
――こうしてなんとか、俺はライブを乗り切ることができた。
翌日、世間ではこのライブがとんでもないことになっているとも知らずに……。