第3話 その素顔は……
「会場の皆様にお知らせです。『シャーロット』メンバーの淳史が諸事情により今回出演できなくなってしまいました。もうしわけありませんが、本日は代役でのステージとさせていただきます」
会場のアナウンスにどよめきが溢れる。
淳史は一番人気のメンバーだ。
素行の悪さで問題を度々起こしているが、その度に俺が表ざたにならないよう頭を下げて上手く誤魔化してきた。
だから、好感度も高い。
「ふざけんなー!」
「淳史様の代わりになれる奴なんているワケないでしょー!」
「ひっこめー! 淳史出せー! 代わりなんて要るかー!」
会場の声を聴きつつ、俺は少し安心する。
これで良い、俺だけが叩かれる分にはマシだ。
少しは観客たちの不満が『シャーロット』ではなく俺に向いてくれるかもしれない。
「……俺たちが平謝りして場を繋いでおくからさっさと準備して来い。少しはその貧相な見た目がマシになるようにな」
準備を終えた他のメンバーたちはため息を吐いて俺にそう言う。
「はい! お願いします!」
『シャーロット』のメンバーはステージに出て行った。
「すみません、そういうわけで俺が急遽出ることになってしまったのでお願いします!」
衣装を着ると、俺は楽屋のメイクさんたちにお願いする。
しかし、彼女たちは俺を見て頭を悩ませた。
「ボサボサ頭はなんとかなりそうだけど、眼鏡かぁ……せめてコンタクトはないかしら?」
「あ、あります! 鞄の中に!」
「そう! じゃあ、眼鏡を外してくれる? それでメイクを決めるわ!」
「はい!」
言われた通り、俺は瓶底眼鏡を外す。
「……え?」
――すると、メイクさんたちは何故か言葉を失った。