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エターナルシリーズ

永遠の心

作者: 仲仁へび



 いつか、どこかで。

 世界を守る戦いがあった。

 その戦いで、勇者達は勝利する。


 しかし……。


 犠牲は出た。


 一人の少女が心を砕いてしまった。


 そして感情を失ってしまう。


 その砕けた心は、様々な力を秘めたまま、世界中に飛び散っていった。


 少女の仲間は、少女を元に戻すために旅に出る。


 また、笑いあえる日を夢見て


 これは、最後の戦いの、その後の物語。


 脅威と苦しみから解放された後の世界のお話。







「強大な悪」は倒された。


 人々は歓喜し、肩を組んで笑いあう。


 新しい世界。


 平和の訪れ。


 何気ない日々を、誰もが喜んでいた。


 そんな中、勇者達が凱旋し、人々に語り掛けた。


「今度は俺達を助けてほしい」


 人々は奮い立つ。


 今度は、こちらが恩を返す番だと。


 勝利を願う事しかできなかった後悔を、無力を。


 力に変えようと立ち上がった。







 人々は探す。


 少女の心のかけらを探す。


 かけらは、とても巨大な力を持っていて、誰もが欲にくらみそうになった。


 願いを叶えてくれるかけらは、所有者の夢をかなえ、富を持たせるからだ。


 しかし人々はそれらを手放す。


 一番大きな脅威を払ってもらったのだから、自分の前に立ちふさがる壁は自分で取り払うと。


 一番大事な所で戦ってもらったのだから、自分の人生は自分で戦う、と。


 少女の心は次第に集まっていった。


 次第に少女は、心をとりもどしていく。


 光のない瞳に、感情という名の希望を蘇らせていく。


 しかし、簡単に進む事柄ばかりではない。


 病に伏した家族のために。


 死んでしまった友のために。


 心のかけらを握りしめたままの人々もいた。


 そう簡単には手放せない想いがある。


 世界を救ってもらった恩を返すよりも、大切な事がある。


 そういう人達も少なからずいたためだ。


 勇者達は困り果てた。


 だから少女は提案する。


 心を砕かれてしまった少女は提案する。


「私はこのままでもかまいません」


 優しさを、慈愛を、にじませながら。


「だからその人達に幸せになってもらってください」


 悲しさを、寂しさを、にじませながら。


「仲間達の人生をこれ以上邪魔したくはないのです」


 勇者達は旅を終える事になった。


「新しい世界に生きる人々の人生の邪魔にはなりたくないのです」

 

 他ならぬ少女がそう望むならと。


 けれど、人々が奇跡を起こす。


 恩を忘れなかった人々が。


 世界中の人達が少しずつ心を砕いて、少女にそのかけらをあたえはじめた。


 自分を壊す行為だけれど。


 寿命でもう長くはないからと。


 恩を忘れたくはないからと。


 そうして少女は、少しずつ、少しずつ心を取り戻していった。


 旅を再開した勇者達は、再び心のかけらを集めていく。


 世界中の人達の心のかけらを。







 最後の心のかけらが集まった時。


 巨悪を倒した後も終わらなかった、勇者達の本当の旅が終わりを告げた。


 少女はもう笑いたい時に笑い。


 怒りたい時に怒り、


 悲しい時に悲しみ、


 驚いた時に驚く事ができる。


 その瞬間に人々も、本当の意味で戦いが終わったのだと悟った。


「あの巨悪との戦いで、この世界の人達にたくさん助けられました。平和になった世界では、無力を嘆いて私達に協力してくれた人もいるけれど。あの旅の、あの戦いの中で何も力になれなかったという事はないんです。待っていてくれる場所がある、無事を祈ってくれる人達がいる。それだけで私達は勇気づけられて、無限の力で戦う事ができたんですから」



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