俺とヴィル 2-2
「最近スモーランド出身の孤児達がこちらで売買されているという情報が入ってきた。」
「…僕も父からその話を聞いています。」
「俺はなんとかリスラ共和国の関与している人間を探し出したいと思っているんだが、あいつらは手強い。」
「…スモーランド国内でも大公の動きが活発になっているようです。かなりの資金と人脈を増やしているそうです。」
「まずいな。」
「はい。ミハイルは何か知っているんでしょうか?オスカル殺害にも関与していたようですし。」
「なんだその話しは?」
「僕がオペラで会った時行っていました。オスカルを襲ったのはリスラ共和国の大統領の刺客集団だと。彼はその連絡に関わっていたと。」
「お前…よくその話を聞いてミハイル側につこうとか思ったな。お前の一番大切な人を殺した事件に関わっていた奴だろ?」
「…でも僕は、彼がそんなに悪い人間には思えないんです。絶対に信用できる訳ではありませんが、あの人は自分から望んで関わった訳じゃないと僕は思っています。」
「んー、確かにリネアもあいつをわりと信用しているみたいだしな。あいつの勘はわりとあたるし。俺はミハイルに昔から嫌がらせをされ続けてきたから奴が苦手だが、リネアに会ってから少し変わった気もするし…。」
「…聞いてみますか?」
「多分無駄だろうな。あいつ自信その話をする時かなり警戒していたんだろ?つまり俺たちに何か言うのは、自分にもリスクがあるってことだ。あの慎重な奴が俺たちに国の機密を簡単に話してくれるはずがない。」
「確かに…」
「時間はかかるが慎重に調べるしかないな。」
「はい…。」
「よしっ!じゃあ話しも終わったし、飲みに行くか!」
「はいはい…。」
◇◇◇
「ユーラ、話って何?」
昼に部屋で勉強をしていたらユーラに呼ばれた。
ユーラの部屋に入る。
部屋中アートだらけ。うわ、あれめちゃくちゃ有名な画家の絵?家具はベッドと小さいテーブルが一つ。
「どこで勉強してるの?」
「スクールで。一回聞けば覚えちゃうし部屋ではやらないよ。」
「そうですか…。」
すごいなあ。本当に天才型というか。
「座るとこないね」
「私以外部屋にいれないからね、必要ないんだ。ベッドにでも座って」
「じゃあ…」
僕はミハイルのベッドに座る。
ミハイルは床に座った。
「リネアは相変わらずうかつだね。簡単に私の部屋に入っちゃうんだから。」
「信用してるから」
「駄目だよ」
「で?用件は?」
「オスカル」
「…」
今、なんて言った?
「オスカル、君はオスカルなの?」
「な…なんで…?」
「聞きたいのは私の方だよ。どういう事なんだ?」
「どうって…」
「どうしてヴィルフリートは君をオスカルと呼ぶんだ?」
「いつ…呼んだ?」
「最初に聞いたのは彼が君を襲いそうになった日。次はパーティーの時、そしてクルーズ行った日。」
どうして…最初の日以外は誰もまわりにいなかったはず…
あ!もしかして…。
「読唇術…」
「…あたり。リスラ共和国の者は読唇術を使える者が多いから気をつけてね。普段は慎重なヴィルフリートだけど、感情が高ぶるとつい失態をおかしてしまうみたいだから。」
「…」
この人に言っていいんだろうか?
ある部分で信用しているのは本当だ。彼は僕がいやがる事はしない。だけど一方でリスラ共和国の大統領の長男だ。僕を殺した人の息子だ。
「ユーラ、これは個人的な質問?それとも君の仕事の為の質問?」
「へぇ…面白い。そう来るか。」
「答えて」
「個人的な興味だよ。仕事には関係ない。」
「じゃあ、言う。誰にも話さないと約束してくれるなら。」
「この話しは他に誰が知ってる?」
「君には関係ないことだよ」
「そうだね。言わないと約束するなら関係ないよね。…約束する。誰にも言わないよ。」
僕は、僕とリネアの体験について話した。
ミハイルは真剣に話を聞いてくれた。
「にわかには信じがたいけど…」
「まぁ、そうだよね。私だって今だに不思議だから。」
「でもヴィルフリートが信じていて、君にもオスカルの記憶しかないというのは確かなんだね。」
「うん。」
「君が男性に興味がなかった理由も説明がつく。私の女装を見た時の顔も…。」
「忘れて…」
「君は面白い…。ますます興味がわいたよ、リネア…。」
「面白くないよ、これでもいろいろ苦労してるんだから。」
「まあ、みんなそれぞれ身体を含め家庭の事情、生まれた国の状況が違うし、苦労のない人なんていないんだからさ。」
「フリッツにも同じような事を言われた…。」
「だから、君は君の与えられた状況を活かすしかないよね。
よかったんじゃない?生まれ変わったのが双子の妹で。これが知らない国の知らない人に生まれかわっていたならもっと苦労していたよ。」
「そう言われたら…そうだね。斬新な意見だ。」
「性別なんて私からしたらどちらでもいい話だ。少し楽しみ方が違うだけでする事はたいして変わらないし…。」
「ユーラ…それ何の話?」
ユーラが笑う。この人は…やっぱりずれてる。
「そしてヴィルフリートは男の君にしか関心がない。リネアの'入れもの'は、彼がオスカルを好きでいる為に丁度よい隠れ蓑になっていた訳だ。」
…なんでユーラはそんな事が瞬時にわかっちゃうんだ…?
「まぁ、私も君が女性でよかったな。男性なら結婚できないしね。」
「ユーラ?…冗談だよね?」
ユーラは何も答えずに笑った。




