僕とオスカル 1-3
「…つまり、僕が見たものは実際におこった事実だったということだね。」
「そう言うことになる。まさかお前があの時あの場所にいたなんて…驚いたよ。」
「僕も信じられなかったからね、もちろん誰にも言ってないよ。君は親友の僕には言わないくせに、あの侍女にある程度事情を伝えたみたいだけど」
相変わらず鋭い…。しかも刺のある言い方だ。
「いつ僕のこと気づいた?さっきのセムラ?」
「…言うかどうか迷うけど、僕は君に隠し事はしたくないから言うね。」
「また嫌み…」
「実は僕、君の死因をここ最近間探っていたんだ」
さっきまでのふざけた雰囲気から一転、ヴィルは真剣な顔つきになった。
「…死因?暴漢に襲われたんだろ?」
「まだ確信には迫っていないし、証拠も見つかっていないけど、僕はこれは意図的に起こされた犯罪だと思ってる。君が襲われたあの日、不自然なことがいくつかあった。多分僕の父や君の父も何か知っているはずだ。」
「どういう事?!」
「君の父を狙った政治絡みの事件だったんじゃないかってことだよ。今、側近に頼んで内密にいろいろ調べてもらっている最中だ。」
「そんな…。」
「僕が君を疑いだしたのは、事件を調べるようになってから。君の周りでリネアの言動がおかしいという話を度々耳にするようになってね。男みたいになったとか、オスカルの話し方そっくりだとか…。だからリネアの顔を見る決心がついたあの日、かまをかけてみたんだ。リネアを大切にしていた君にわざと怒らせるようなことを言ってね。」
「じゃあ、あの時すでに…」
「なんとなく、不思議だけど会った瞬間にね、あぁ、そうなんだって。僕にはわかったよ。
本当に、本当に嬉しかった。僕はまた一人になったと思っていたから。君がいないなんて…僕には耐えられなかったから…。」
ヴィルが泣いている。サファイアのような青い瞳から涙がとめどなく溢れる。
きれいだった。男なのに思わずみとれた。
「ヴィル、泣くな。僕はもう僕じゃなくなっちゃったけど、こうして君の前にいるんだから。」
「じゃあ…約束してくれる?もうひとりにしないって。」
ヴィルが僕を抱きしめた。
普段何の感情も表にださないこの男が震えている。僕はヴィルの頭を撫でた。
「約束するよ、前みたいにはできないこともあるけど。」
僕の目からも涙がでてきた。
「言えなくてごめんヴィル。僕だって会いたかった。だけどこんなことになって、こわくて会えなかった…。嫌われたらどうしようって、信じて貰えるわけないって…。」
「嫌うわけないだろ。どんな見た目になっても、君は僕の…。」
「ヴィル?」
「…そうだよね。君はリネアになってしまったんだよね。…ねぇ、リネア。」
なんだ?なんで、突然リネアって呼んだ?
「君とずっと一緒にいられる方法、今思いついたよ。」
「どういうこと?」
寒気がした。
「まだ秘密。」
あの悪い顔だ!!いつの間にかヴィルは笑ってる。
「僕には隠し事はしないんじゃなかったのかっ?!」
「今はまだ言わない、けど準備が整ったらちゃんと言うから。」
「準備って、何の?!」
クスクス笑いながらヴィルは僕を抱きしめた腕を離さなかった。
振りほどくことができなかった。13歳の男と女では、腕力に差が随分ついていることに気づいた。三人とも同じくらいだったはずの身長も、いつの間にか10センチくらい差があった。
「オスカル、僕と一緒に犯人を探す?君にとっては辛いだろたいけど。」
「…探すよ。どうしてこうなったか、僕はちゃんと知りたい。」
知って前に進まなきゃ。
「じゃあ、一緒に探そう。スクール入学まであと半年きった。時間はあまりない。」
「どれだけ時間がかかっても僕は見つけてみせるよ。」
「僕もそのつもりだ。」
結局ヴィルにはいつも叶わない。
僕が死んで落ち込んでると思ってたのに、いつの間にか先へ進んでる。こいつは次期国王に相応しいやつだと思う。すごく賢くて、何があっても絶対に諦めたりせず何とかしてくれるって、そう思わせるすごい奴なんだ。




