夢の中
クラブから帰った次の日の朝、ドアをノックする音がした。
…何時だろう?寝すぎたのか?
アンが起こしにきたんだな。
「どうぞ」
僕はベットの上で目をとじたまま返事した。
ベッドに腰をかける音がする。
ん?
「アン?もう起きる時間?」
「しっ…」
目の前にフリッツがいる。
しかも、髪の毛もセットされていなくて、白いシャツに黒のパンツ…ものすごくラフな格好が可愛い。
「…僕、夢見てる?」
「さぁ?」
フリッツが僕の髪の毛を撫でる。
気持ちいい…。やっぱり夢だ。
夢なら…
僕は目を閉じたままフリッツにしがみついた。
フリッツの匂い。
まだ頭をなでられたまま。
いい気持ち。ずっとこうしていたい。
「リネア、…来てくれなかったんだな」
昨日のこと?やけにリアルな夢だ。
「だって、行ったら駄目だもん」
「なんで?」
「行ったら、キスしたくなるから」
「…そう…なのか?」
「うん、だから行かない。」
「…夢ならいい?」
「いいよ」
「じゃぁ、する…。」
フリッツが、僕にキスをする。
もっと、して欲しい。
僕はフリッツの首に腕を回して自分からもキスをした。
「フリッツ…もっと。」
「リネア…」
目が覚めると当たり前だけどフリッツはいなかった。
凄く…恥ずかしい夢を見た気がする。
恥ずかしすぎて、朝フリッツに会ったら動揺しそうだ。
朝食の時間ずらそうかな?あ、でも不自然かな?
僕、そんなに…キスしたいって思ってたのか?
食堂に行くとフリッツが先に食べ終わっていた。整えられた髪の毛、仕事に行く服装、いつも通りだ。
顔を見れない。勝手に夢に登場させてごめん。しかも勝手にキスしてすみません…。
「おはよう」
「あぁ。」
フリッツは無言だ。
昨日行かなかった事、怒ってる?
「あの…昨日」
「え?」
「昨日行けなくて…その…寝ちゃって。」
「…」
「フリッツ…」
「…仕事いかないと」
「あ、うん。」
フリッツは僕を避けるように仕事に行ってしまった。
怒ってるのかな。
なんか、胸が苦しい。
スクールにつくと、目の前でキスシーンの再来だ…。
ミーシャとセルゲイが目の前でいちゃいちゃしてる。
人前でこういうのってありなのか?!
「会いたかった」
「私もよ」
ユーラはまったく気にすることなく本を読んでいる。
今日はメガネで髪をまとめている。大人っぽい…
「ユーラ…あれ、なんなの?」
「さぁ?来たらずっとあんな調子だ。」
「お弁当…」
「なんだそれ」
「…お持ち帰り」
ユーラのツボに入ったらしく机に突っ伏した。
「朝から笑わせないで」
「だって…。ねぇ、ユーラ」
「ん?」
「セルゲイってさ、ダンスすごく上手いの知ってた?」
「知らない」
「兄弟なんでしょ?」
「…興味ないし。一緒に踊ったの?」
「うん、僕が男のパートで」
今度はお腹を抱えて笑いだした。
「笑いすぎ」
「だって…、いろいろ面白すぎて。あ、リネア」
「何?」
「これ、一緒に行かない?」
ユーラがチケットを出す。
「カブキ…?」
「昨日ヤ-パンに興味あるって言ってたろ?ヤ-パンの伝統芸能。」
「行きたい!いくら?」
「いいよ、おごる。一応私も仕事して、稼いでいるからね。」
「…まともなお金?」
「人聞きの悪い…。行かないってことでいいね?」
「行く!行きたいです!」
「じゃあ、行こう。私も楽しみにしていたんだ。」
「あ、でも言葉わかんないよ。楽しめるかな?」
「翻訳機借りれるから」
「ユーラは…」
「一応分かる」
「凄すぎ…」
ランチになっても二人のいちゃいちゃは止まらなかった。
「あのさぁ、ミーシャ。」
「何?」
「一応、僕たちもランチに来てるんだけど。」
「だって…。分かるでしょ?恋の始まりってこういうものじゃない」
「…こういう…?」
「胸が苦しくて、いつも一緒にいたくて、キスしたりしたいの。」
思い当たる節が…いや、気のせい、気のせい。
「分かるよ、私もリネアの事を思うとそのようなふうになるから。」
「ロマノ様ったら。…リネア、早く受け入れなさいよ。こんなチャンスもう二度とこないわよ。」
「ユーラはからかってるんだよ。分かってないな。」
「リネア…、あなた本当に残念な子ね。」
ミーシャとユーラが同時にため息をついた。




