二次会へ 2
俺たちは、老舗のバーに来た。
俺はビールを、ミハイルはワインを注文した。
「ビールの味はあまり得意じゃないんだ。せっかくこの国にきたのにね、残念だよ。」
「ワインも特産だから」
「そうだね」
店の客がミハイルを見ている。男の俺から見ても、こいつは見た目だけは本当に美しい。精巧な彫刻のようだ。
「今日はどうして誘ってくれたの?もう嫌われてるから声もかけてくれないと思ってた。リネアにちょっかいかけた甲斐があったかな。」
「何が目的だ?」
「ん?」
「お前…、お前は気に入ってない奴には声もかけない奴だよな」
「そうだね」
「触りたくもないはずだ」
「そうだね」
「じゃあ、何で?」
「君以外の人間に興味をもったらおかしい?」
「…」
「自分でも不思議なんだ。今まで女なんて全員同じだと思っていたからね。」
俺もそう思ってた。
「フリッツが、あんな男みたいな少女のどこがいいんだって、最初は不思議だったんだよ。だけど、今はなんとなく分かる。彼女は面白い。あの見た目と話し方のギャップや、危機感のなさ、好奇心旺盛なところ、素直さ…。私が今まで会ったことのない人間だ。彼女は可愛い。」
「俺、死ぬほど嫌だが、初めてお前と意見があうと思った。」
「だからね、ヴィルフリートに取引を持ちかけたんだ。リネアを譲ってって。あの少年はリネアと婚約するつもりだろうからね。」
「ヴィルにメリットがない」
「彼がリネアより守らなきゃいけないものって分かる?」
「国とか?」
「さすが」
「…」
「じゃあさ、私がそのためにヒントを与えてあげたら?」
「…」
「フリッツにも、今はここまでね。あの子、ちゃんと国へ帰ったろう?真面目な好青年だ。」
「…よく分からんが、お前がそこまでしてリネアを手に入れたい理由が理解できん。」
「君が欲しくて手にいれたいものを私が手にいれるのは楽しいでしょ。」
「リネアはおもちゃじゃない」
「そうだね、まぁ、これは表向きの理由。でも、私は君にだけは本音を言うね。」
ミハイルの本音…?
「リネアに魅かれてる。」
「まだ会って間もないけど、多分、後にも先にもこんなふうに思える人間には会えないと思う。君を嫌がらせたい訳じゃない。」
こいつは本気だ…。正直一番聞きたくなかった言葉かもしれない。
「私は君と違って正面から堂々と戦ったりしないからね。ある意味ヴィルフリートと似ているな、使えるものは何でも使うし、本人の意思より自分の意思を優先させるところも…。」
「ヴィルとお前を一緒にするな」
「裏切った癖によく言う」
「な…」
「何かあったよね?君たち。だって、君たち今日何度もお互いを気にしていたじゃないか。僕がリネアの手を握ったら、彼女何度も君を見ていたよ。君に見られてないか確認してた。今までこんなことなかったよね。妬けたよ、君に。」
こいつ…。
「私はヴィルフリートに言うつもりはない。だけどすぐ気づくだろう。私が気づいたくらいだから。」
「…はぁ。知らなかった。お前、もっと嫌な奴だと今まで誤解してたかも。」
「いきなり何?」
「そう思っただけだ。」
「嫌われることをたくさんした自覚はあるからね。」
「…俺も悪かったよ、お前のことよく知りもしないで避けてたし。」
「…君はリネアと似てる。」
「え?」
「素直で純粋だ。」
「…俺は違う」
「似てるよ。」
「フリッツ…。意地悪してきたお詫びにもう一つだけアドバイスを。」
「何だ」
「私を信用したらいけない。私の回りも。」
ミハイルはそう言ってバーを出た。
その目が悲しそうだったのは気のせいだろうか。
帰宅後、リネアが部屋に来るのを待った。おそらく帰ってきているはずだ。酒が入っていたのもあるが無性に会いたかった。
だがリネアは来なかった。
こんなに近くにいるのに…
リネアに会いたい。キスしたい。




