初めてのスシ
積極的なミーシャがフリッツの横に座って目を潤ませ上目遣いで話かけている。噂の皇太子が気に入ったらしい。セルゲイが横でそれを観察している。
僕はユーラの隣に座ってスシが来るのを待っていた。
ヴィッキーたちは三人で話に夢中だ。
竹や木をふんだんに使った面白いインテリアだ。照明器具は紙で作られている。なんか落ち着くな…。
「これは何?」
「ハシだよ」
長細い枝のようなものが二本テーブルの各席に揃えて置いてある。
「これで食べるの?」
「手で食べてもいいけどね。」
「へぇ、オチャという緑の飲み物も初めてだ。器も面白い形だね。取っ手のないマグカップみたい。」
「オチャは元々紅茶と同じ茶葉だけど製法が違うんだよ」
「物知りだね、ユーラは」
「…ユーラ」
「ん?」
「フリッツに会いたかったんだよね?良かったの?席離れちゃったけど。」
「リネアがいるなら」
そう言ってテーブルの下で僕の手を握る。しかも恋人繋ぎだ、これ。
「あのさぁ。」
僕は恥ずかしくなる。フリッツには見えてないよな?
「友達だって手を繋いでもいいでしょ?」
ユーラが笑う。
「リネア、ロマノ君といい感じじゃない?」
エマが僕に話かける。
「私は彼女とお付き合いしたいんですが、なかなか良い返事をいただけなくて。」
「きゃー!!そうなの?!」
「リネア、こんな優良物件なかなかでてこないわよ!」
「そうよ、モタモタしているとスクール始まったらすぐにとられちゃうわよ!早く返事しなさい。」
フリーダとエマが興奮している。ヴィッキーは楽しそうにニヤニヤとこちらを見ている。絶対楽しんでるな。
ユーラの奴…。余計な事を。うわっ…フリッツたちもこっちを見てるし。
「僕は誰とも付き合わないよ。ここには勉強するために来たんだ。」
「リネア、人生は一度きりなのよ、たくさん恋をして楽しまなきゃ。ね、殿下?」
ミーシャがフリッツを上目遣いで見ながら話に入る。
「…学生の本業は勉強だろう?色恋ばかりに夢中になっていたら本末転倒だ。」
「あんたがそれ言う」
ヴィッキーが突っ込んだ。
「とにかく…」
フリッツが席を立つ
「おい、ミハイル、リネアに触るな。」
握られた手に気づいたみたいだ。
「まさかフリッツも?やだ…リネアモテモテ?」
「ずるいー!」
エマとフリーダが僕をからかう。
「二人とも…違うから。」
もう止めて…。
「あの…お客様方…。他のお客様からもう少し声を小さくしていただけるようにと…。」
僕たちが騒がしかった為、店の人に注意されてしまった。
…よかった、やっと静かになった。
「はい、お待ち。」
カウンター越しに木の器にいくつものご飯の塊と生の魚が切られたスシが並べられた。
「うわ…シンプルなのに綺麗だ。」
「この国な食べ物は、シンプルだけど視覚で楽しむ工夫をいろいろしているからね。リネア、そのショウユとワサビもつけて食べるんだよ。つけすぎないように…」
「からっ!!鼻にきたっ!!」
「…」
「ユーラはハシを上手に使えるね。」
食べ方がとても綺麗だ。この人は何をしても様になる。
「私の国は海を隔ててヤーパンと繋がっているからね。交流もあるし、あの国の美術はすばらしいんだよ。」
「行ったことある?」
「もちろん」
「どんなとこ?!」
僕はスシを食べながらすっかりユーラの話に聞き入っていた。いつか僕もいってみたいなぁ、ヤーパンへ。
「フーシェ、と言ったか?あの二人はいつもクラスでああいう感じなのか?」
「そうよね、セルゲイ?」
「まぁ、あんな感じですね。」
「君は彼の弟か?」
「はい、初めてまして。セルゲイ・アウグスト・ロマノです。」
「よろしく…。」
「私はミーシャです、よろしくお願いいたします!フリッツ様とお呼びしても…?」
「悪いが私は基本的にファーストネームで初対面の者とは呼び会わない事にしている。」
「またリネアだけ特別なのね…。」
「また?」
「ロマノ様も、リネアだけユーラって呼ばせているんですよ。」
「へぇ…。」
初めてのスシはとてもおいしかった。
今度ヴィルも連れてきてあげよう。
ヴィル…そろそろスモーランドについたかな。




