みんなでお出かけ?
今日からまたスクールが始まる。研修はあと一週間で終わりだ。
僕は朝食をとりに食堂に来た。フリッツが先に食べていた。
「おはよう、早いね。」
「あぁ、ゲオルグの奴が朝から大量に書類仕事を置いていったからな。」
僕は昨日あまりよく寝られなかった。フリッツとの間に起こったことが頭から離れなくて。思い出すと恥ずかしくなる。
「…」
言葉が見つからない。フリッツも同じような感じだ。気まずい…。
「おはよう、また今日からスクールね。」
「おはようヴィッキー」
ヴィッキーが来てくれてなんとなくほっとした。
「エマやフリーダがあなたに会いたがってたわ。時間があったら研究室にいらっしゃい。」
「嬉しい!」
「あんたは夏休みだというのに仕事ばっかりで、本当に陰気な男よね。」
「仕方ないだろう?側近たちが次々に仕事を持ってくるんだ。」
「仕事ばっかりしてないでもう少し遊びなさいよ。16歳の夏はもう戻ってこないのよ。二人でどこか出かけてきたら?」
「…じゃあ、行くか?」
フリッツの顔が赤くなる。
「…どこ、行く?」
僕もつられる。
「うーん、リネアは行きたいとこあるか?」
「そうだなぁ…」
サッカーに行きたいけどヴィルが一緒に行くのを楽しみにしていたから、あと他に行きたい所で…
「あ!スシ!!」
「スシ?」
「うん、ガイドブックに書いてあったんだ。遠い東の島国ヤーパンにスシという有名な食べ物があって、この国へ移住したヤーパン人がお店をやっているって…。」
「ああ、スシね。美味しいわよ。いいわね。私久しぶりにも行こうかしら。」
「姉上、そこは遠慮して…」
「うん、ヴィッキーも行こう!よかったらエマやフリーダも!」
「リネア…お前。」
「じゃあスクール終わったら図書館前のカフェに。6時でいいかしら?」
「うん!じゃあ、行ってくるね!…フリッツ、あの…仕事、がんばって」
「あぁ…。ありがと。」
「あんたたち、何かあった?」
「…言わない。」
「お姉さんに隠し事?あんたまさか…」
「してないから!頼むからそっとしておいてくれ…。」
「ふうん…?」
今日の僕たちのクラスの課題はフレーデル王国で出版された本を読んで、国の文化的特長と自国との違いを比較するというものだった。
僕たちは、図書館で課題の為の本を探していた。
「ユーラはどの本にする?」
「私はこれ、この作家が好きなんだ。」
「へぇ、知らないなあ。ユーラはすごくたくさん本を読んでそうだね。」
「基本一人でいるから。」
「…。」
「リネアはどれにしたの?私はもう決めたわ。」
「恋愛小説?」
「えぇ、ランク王国のものと比較したら楽しそうでしょ。セルゲイは?」
「まだ迷ってます…。」
「僕も悩んでる。」
「あら、料理の本と歴史の本?」
「歴史的な背景から料理の違いを考察するのも楽しそうじゃない?」
「確かに面白そうね。リネアは本当に食いしん坊なんだから。」
昼休み、話題は今夜のスシの話になった。
「私は食べたことあるわよ、自分の国で。とても美味しかったわ。ねぇ、その食事に皇太子殿下もいらっしゃるんでしょう?私もご一緒しても?」
「フリッツのこと?」
そういえば、あの人皇太子殿下だったんだ。
ふと昨日のことを思い出す。
「あなた、殿下まで愛称で呼んでいるの?フリーデル殿下は漆黒の髪、グレーのクールな瞳の美形だって噂を聞いたの。ぜひお会いしたいわ。」
…なんか胸のあたりがもやっとする。
「フリッツがくるなら私も行こうかな。」
「じゃあ、私も行きたいです…」
…うん、フリッツにバカ犬呼ばわりされるの確定だな。
夕方、僕たちは待ち合わせのカフェテリアに行った。
「あら、…何かとても楽しそうなメンバーね?」
「ヴィッキー、みんな行きたいみたい。いい?」
「私は構わないけど。」
「リネア、久しぶり!」
「エマ、フリーダ!」
「わっ!何この綺麗な少年!!モデル?」
「あ…えと」
「ミハイル・ユーリ・ロマノです。」
「きゃあ!!声も素敵!」
「こらこら、そうやってすぐにくっつかないの。ほら、ミハイルがビックリしてるでしょ。」
びっくりじゃなくてひいてるんだろうけどね…。ユーラが僕の手を握って耳元で呟いた。
「こんなことなら先に言ってよね。」
「だって、来るっていったのはユーラじゃん。」
「私がああいうの苦手って知ってるよね?」
「…じゃあ帰る?」
「リネアは行くんでしょ?行くよ…。」
「何をさっきからひそひそ話しているんだ?」
「フリッツ…」
フリッツがユーラが僕と繋いでいた手を振り払った。
「やあ、フリッツ、…会いたかったよ。」
ユーラがフリッツを抱き締めてそのまま頬にキスをした。
フリッツが僕を物凄い目で見ている。
…後で説教確定だな。




