秘密の午後 フリッツ視点
「…というわけでヴィルは急遽国へ一時帰国した。予定をすませたらすぐに戻るとのことだ。」
俺は、ヴィルと事前に決めた内容をリネアに伝えた。
リネアは納得のいかない表情をしていた。ヴィルのことは一番知っているこいつだ。何か違和感を感じたのだろう。
「リネア、少し話せるか?」
昨日のこと、まだ怒っているだろうか?
「うん…。」
俺は、リネアをエリザベスの散歩に誘った。
「昨日のことだけど…」
「フリッツが正しいよ。」
「リネア」
「僕は自分の置かれている状況に甘んじていた。ヴィルも君も、みんな僕に良くしてくれいるのに、僕はわがままばかり言っていたんだな、と分かったよ。」
リネア…
「俺も言いすぎた、お前の気持ちはお前にしか分からないのに。」
「ううん、フリッツは言いすぎてない。僕が悪い。リネアにもらった命と体を大切にしなきゃいけないって、本当にその通りだよ。」
「…。」
あぁ…やっぱり俺の気持ちを分かってくれた。嫌われたらどうしようか心配していたが、やっぱりこいつのこういう所が好きだ。
「僕が、リネアとして普通の恋愛ができるか分からないけど、少し努力してみることにする。…だから、付き合ってみようかなって。」
え?今こいつなんて言った?
「誰と?」
「ユーラと。」
「なんで」
何言ってんだ?!
「ユーラくらいだろ。僕みたいな変な奴に付き合ってみないかって言ってくれるのは。僕は彼の事はきらいじゃないし…。」
なんでそうなるんだよ?!お前のことをもっと真剣に好きなやつはここにいるだろっ!!
「だったら…!」
俺はリネアの腕を掴んだ。
「だったら?」
悪いなヴィル。…俺はもう、抑えられない。
「俺に…俺にしたら?」
「…フリッツと、僕が付き合うの?」
「…お前がよかったら」
心臓がドキドキしている。答えが怖い。
「…僕はフリッツとは付き合えない」
「何で!?」
「君は大切な人だから関係を壊したくない。君とは一生繋がっていたいから、付き合うとか別れるとか、そんなことで君を失いた
くない。」
やっぱりそうきたか。だよな、お前はヴィルが一番で…俺のことは友達としていたいってことだよな?予想していたがはっきり言われると相当こたえる。
…だけど俺は、もう我慢しない。
「俺は…俺はお前が…」
リネアは俺の口を手で塞いで俯いた。
「…言わないで。お願い。」
「リネア」
どうして…
「…僕は君に魅かれてる。これがそういう恋愛の感情かは分からないけど、僕は君と一緒にいたいと思うし、君が特別なんだ…。だけどこの気持ちを自覚したらヴィルはどうなる?僕たち三人はもう今までみたいにいられない。僕は…ヴィルを悲しませたくない。だから言わないで…。」
「リネア」
どういうことだ?リネアが俺に魅かれてる?
俺が特別で、気持ちを自覚したらって…
ヴィルを悲しませたくないって…
俺、自惚れてる?それってつまり、リネアも俺を…?
俺のことを…?
激情に駆られ、俺は口を塞いでいたリネアの手をつかんだ。
キス、したい。
「いやか…?」
「嫌…じゃないよ。」
嫌じゃない、つまり、良いって事だよな?
鼓動が早くなる、もう、自分を抑えられない。
俺はリネアの頬に触れて
口づけをした。
気づいたら、日はすっかり暮れていた。
俺はリネアを抱き締めながらこれは夢なんじゃないかと心配になった。リネアが可愛い。愛おしい。もう、このままずっと時が止まればいいのに。
「…フリッツのバカ。」
「…」
なんで?…こいつ顔、赤いし。何故か俺まで恥ずかしくなってきた。
「次こういう事したら国へ帰るからな。」
…昨日の仕返しのつもりか?可愛すぎる。
「駄目、帰さない。」
俺はリネアの頬をつねる。
リネアが俺を見つめる顔が可愛すぎてたまらない。
エリザベスが退屈したようで俺ににしがみついた。すっかりエリザベスの事を忘れていた。せっかくいい雰囲気だったのに…。仕方なく、散歩を続けることにした。
歩きながらリネアの言葉を思い出す。結果的にヴィルの不在を利用した形になってしまった。ヴィルに罪悪感を感じる。
「…もの凄く不本意だけど、しばらくはお前とこのままの関係を続けるよう努力する。俺もヴィルが大切なのは同じだ。」
本音はこのままリネアと付き合いたかった。だけどリネアがそれを望まないことは分かっていた。
「うん。」
ほっとした顔…。仕方ないが面白くない。
「だが、ユーラと付き合うのは俺が認めん。俺が嫌だ。」
「分かった。…遊びには行くかもよ?友達だし。」
そう言うと思った。こいつは、そういう奴だよな。
「それは我慢する。俺も他の令嬢たちと出かけることもあるしな。」
「なんで?」
「なんでって、授業後とかみんなで遊びに出かけるだろ?」
「…やらしいことするの?」
え?何言ってんだ、こいつ…?!
「や…らしい?」
「するの?」
「するか!お前と会ってからそういう事はしていない!」
なんで俺が後ろめたい気持ちにならなきゃいけないんだ?この前の男女の関係の話の時もこんな顔していたよな?
「ふぅん?」
…もしかして、妬きもち…?まさか、リネアが俺に?
「…俺が他の令嬢とそういう事したら嫌か?」
「…何か嫌だ」
リネアが顔を赤くして剥れる。可愛い。
「じゃあ、俺の気持ち分かるな?お前もミハイルに気を付けろよ。」
「うん」
好きだという気持ちが溢れてとまらない。俺にこんなにも大切な人ができるなんて。女なんて誰でも同じだと思っていたのに。自分の好きな人が自分に好意をもってくれるとこんな幸せな気持ちになるのか。
「…リネア」
「ん?」
「今日だけ、明日からはまた普通に戻るから、今日だけ許せ。
ずっと、…こうしたかったんだ。」
そして俺はリネアを抱き締めて何度もキスをした。
「このままの俺の部屋に連れて帰ってレクチャーしたい…。」
「それは駄目!」
いつまでも離れがくて、
何度部屋に連れていこうと思ったか。
明日からはもう、これまで通り…。
今日のことは2人だけの秘密にした。




