秘密の午後
「…というわけでヴィルは急遽国へ一時帰国した。予定をすませたらすぐに戻るとのことだ。」
僕に挨拶もしないで?…変だな。
「リネア、少し話せるか?」
「うん…。」
僕たちは、エリザベスの散歩にでかけた。少しずつ日が短くなるのを感じる。夕暮れがとても綺麗だ。
「昨日のことだけど…」
「フリッツが正しいよ。」
「リネア」
「僕は自分の置かれている状況に甘んじていた。ヴィルも君も、みんな僕に良くしてくれいるのに、僕はわがままばかり言っていたんだな、と分かったよ。」
「俺も言いすぎた、お前の気持ちはお前にしか分からないのに。」
「ううん、フリッツは言いすぎてない。僕が悪い。リネアにもらった命と体を大切にしなきゃいけないって、本当にその通りだよ。」
「…。」
「僕が、リネアとして普通の恋愛ができるか分からないけど、少し努力してみることにする。…だから、付き合ってみようかなって。」
「誰と?」
「ユーラと。」
「なんで」
「ユーラくらいだろ。僕みたいな変な奴に付き合ってみないかって言ってくれるのは。僕は彼の事はきらいじゃないし…。」
「だったら…!」
フリッツが僕の腕を掴む。
「だったら?」
「俺に…俺にしたら?」
フリッツの目がまっすぐ僕を見る。
「…フリッツと、僕が付き合うの?」
「…お前がよかったら」
「…僕はフリッツとは付き合えない」
「何で!?」
「君は大切な人だから関係を壊したくない。君とは一生繋がっていたいから、付き合うとか別れるとか、そんなことで君を失いたくない。」
「俺は…俺はお前が…」
僕はフリッツの口を手で塞いで俯いた。
「…言わないで。お願い。」
「リネア」
「…僕は君に魅かれてる。これがそういう恋愛の感情かは分からないけど、僕は君と一緒にいたいと思うし、君が特別なんだ…。だけどこの気持ちを自覚したらヴィルはどうなる?僕たち三人はもう今までみたいにいられない。僕は…ヴィルを悲しませたくない。だから言わないで…。」
「リネア」
フリッツが僕の手をとり
「いやか…?」
と聞いた。鼓動が早くなる。
「嫌…じゃないよ。」
僕はフリッツの目を見た。
フリッツは僕の頬に触れてそっと…
口づけをした。
…僕は、目を閉じた。
気づいたら、日はすっかり暮れていた。
僕はフリッツの腕の中にいた。心臓の音とフリッツの匂いが心地いい。もっとずっとこうしていたい。
「…フリッツのバカ。」
「…」
「次こういう事したら国へ帰るからな。」
「駄目、帰さない。」
フリッツが僕の頬をつねる。
フリッツの顔が真っ赤で可愛い。
エリザベスが退屈したようでフリッツにしがみついたので、僕たちはまた歩き始めた。
「…もの凄く不本意だけど、しばらくはお前とこのままの関係を続けるよう努力する。俺もヴィルが大切なのは同じだ。」
「うん。」
「だが、ユーラと付き合うのは俺が認めん。俺が嫌だ。」
「分かった。…遊びには行くかもよ?友達だし。」
「それは我慢する。俺も他の令嬢たちと出かけることもあるしな。」
「なんで?」
「なんでって、授業後とかみんなで遊びに出かけるだろ?」
「…やらしいことするの?」
「や…らしい?」
「するの?」
「するか!お前と会ってからそういう事はしていない!」
「ふぅん?」
「…俺が他の令嬢とそういう事したら嫌か?」
「…何か嫌だ」
「じゃあ、俺の気持ち分かるな?お前もミハイルに気を付けろよ。」
「うん」
「…リネア」
「ん?」
「今日だけ、明日からはまた普通に戻るから、今日だけ許せ。
ずっと、…こうしたかったんだ。」
そしてフリッツは僕を抱き締めて何度もキスをした。
「このままの俺の部屋に連れて帰ってレクチャーしたい…。」
「それは駄目!」
いつまでも離れがくて、
こんなふわふわした気持ちは初めてだった。
明日からはもう、これまで通り…。
今日のことは2人だけの秘密にした。




