日曜日の午前
「それで…?」
「だから、詳細は言えないが、ケンカした。」
「デートに誘って、余計なことを言って怒らせた、と。」
「…」
「殿下、普段のあなたならもう少し旨くやれるはずだ。何故リネア様のことになると、そう不器用なんですか?」
「俺にもわからん…。リネアがもう口を聞いてくれなかったらどうしよう。」
「はー…。とにかく書類を進めてください。…それから、一つ気になる報告が。」
「なんだ」
「例のフェルセンの事業が最近スモーランド国内でも動き出しているとの報告がありました。我が国でも顧客は増える一方のようでして…。」
「リネアのことでうかれてばかりいられないな。」
「はい。」
「ゲオルグ」
「はい」
「顧客として、フェルセンに再度接触を。…それから、リネアの留学の延長を。」
「最初の指示には従いますがリネア様の件は管轄外ですので。」
「後半年したら国へ帰ってしまうんだぞ?俺はもうリネアと離れたくない。仕事に支障をきたして欲しくなかったらなんとかしろ。」
「無理です、ヴィルフリート殿下に頼んでみたらいかがですか?」
「あれが良い返事をくれる訳がなかろう。ますます婚約に向けて段取りを強行するに決まっている。そういえばヴィルフリートに昨日から会っていないな。」
「今朝はいらっしゃいましたよ。」
「では、少し話をしてくる。」
部屋のドアをノックする。
護衛の者が俺を部屋に入れた。
「おはようございます」
「…顔色が悪いな、何かあったか?」
「…」
「どうしたヴィル?」
「今から言う話、リネアにも、他の人にも言わないでいただけますか。」
「分かった。」
「昨日、ミハイルに呼ばれ二人でオペラに行きました。」
「…意味不明だな?」
「アリーナに伝言をもらったんです。それで指定された場所に指定された時間に出かけたら、何故か二人でオペラをみることに。」
「あぁ、昨日最終日だったやつか。あれをそなたと行くとは…。笑っては不謹慎だが、あの男は本当に性格が悪いな。」
「やはりそう思いますよね。挙げ句、王女を連れ去りたいから取引しようと持ちかけてきました。」
「そなたへの見返りは?」
「'皇太子という立場を失うことになったら元も子もないだろう'
'何が一番大切か分かるはずだ'
…と。」
「とりあえず僕に与えられたのはこのヒントだけ。それから誰にも言わないよう口止めされました。自分にとっても危険だからあまり多くは言えないといっていました。」
「ミハイルにとってもリスクのある取引か」
「カフェで会ったのですが、わざわざ貸しきりにした上、スモーランド語で話しました。ミハイルは危険な人であるとは思いますが、僕は彼が嘘を言っているようには思えません…。」
「…俺にも情報が入った。フェルセンの取引が国内でも始まったらしいぞ。」
「スモーランドで?」
「ああ。何かが起こる可能性はある。ミハイルはそれを知っていて、そなたに謎かけをしてきた。」
「…僕は、いったん国へ帰ろうと思います。」
「俺がそなたなら同じことをするだろうな。そなたにしか手に入らぬ情報もあろうし、学校が始まるまでまだあと2週間ある。少し遅れてもそなたなら問題なかろう。リネアには何と伝える?」
「父の生誕40週年の記念パーティーが8月末に行われます。それに出席するよう要請があった、とお伝えください。」
「分かった。気をつけて行けよ。ゲオルグも後から行かせる予定だ。」
「分かりました。」
「ヴィル」
「はい」
「リネアの留学、半年から数年延長の許可を貰えないか?」
「お断りします。」
俺とヴィルのの交渉は決裂した。
ヴィルはその日に一時帰国をした。




