僕とミハイル
僕は今日、護衛の者を連れて指定された場所に来ている。何故、この人はこの場所を選択したんだろう。
「どうしてもこの演目を見たかったんだ。最終日が今日だったから。」
「何故僕を誘ったんですか?アリーナでもリネアでもなく。」
「君に用事があったから、ついでだよ。」
何故か僕はオペラハウスで男二人オペラを見ている。
流石フレーデル王国、音楽の本場だけあり建物も凄いが、キャストも楽団も有名どころだ。
「そういえば、外国でオペラを見るのは初めてです。」
「一流の政治家になりたければ、何にしても一流のものに触れておくことは大事だよ。」
「はい」
「君は素直な人だね。あ、始まるよ。」
物語の舞台は中世のどこかの国。傲慢な王に囚われていた王女を外国から来た美しい王子が連れ去る。最初は抵抗していた王女だったが、自由と王子の愛に気付き、いつしかひかれていく。傲慢な王は、王女がいなくなって初めて自分の愚かさに気付き嘆き悲しむ、というストーリーだ。
ストーリーはともかく、凄い迫力の演技と歌声に圧倒される。オスカルがいたら喜んだだろうな。
鑑賞を終えた僕たちは、近くのカフェに入った。土曜日だと言うのに客が一人もいない。おかしい。
「ヴェルナドッテ君、申し訳ないが、護衛を外してもらえる?この店は貸しきりにしてもらった。二人だけで話がしたい。あと、念のため言葉もスモーランド語に切り換えて欲しい。」
「…分かりました。」
「私のことは、ミハイルと呼んでくれればよいから。私も君を名前で呼んでも?」
「はい…。」
…何が目的だ?
「リネアから聞いているだろうが、君の幼なじみの少年は私の父の命令により消された。」
「…。」
何をいきなり言い出すんだ、この人は。
「私は事件当日父に指定された者に任務を遂行するよう連絡をとったものの一人だ。それがあの暴漢、と言われている者たちだが、あれは父の専属の刺客集団だ。」
「…何故それを僕に?」
「君と取引をしたいから。」
「何の…?」
「リネアを私に譲って欲しい。君の国は君主の権力が強いからね。リネアがいくら外国にでると言っても法的に縛れるだろう?手っ取り早いのは婚約したり、まぁ方法はいくらでもあるよね。」
「僕がそれを受け入れると何の得が?」
「やっぱりそのつもりだったんだ?でも、リネアはそれを知らない。」
「あなたには関係ないことです。」
「うん、今のところは。でも、君が皇太子という立場を失うことになったら元も子もないよね?」
「おっしゃる意味が分かりません。」
「今はヒントしかだせないから自分で調べて考えるんだね。これでも君に必要な情報を与えているつもりだよ。私も下手すると消される可能性があるからね。」
何を言っているのか全然分からない。だけど、この人は嘘を言っていない気がする。
「君がどうなっても私の結果は変わらないけど、どうせなら犠牲は少なくしたいからね。リネアの為にも。」
不快だ…。気味が悪い。フリッツの言う通り、この目の前の男は危険だ。
「なぜリネアを?あなたはフリッツに執着していたと聞きましたが。」
「あのフリッツが苦しむのを見てみたいというのもある。」
この人は…
「でも、一番は好奇心かな。あの男みたいな少女を自分好みの女性に育てたら楽しそうじゃない?素材は悪くないからね。」
「あなたはどうして僕にそのようなことを言うんですか?今の話を聞いてあなたを信用することもできないし、取引するどころか警戒心を強めただけだ。」
「警戒しろって言ってるんだよ。」
この人は、本当に僕に何かを忠告しているのか?
何のために?そもそもこれ自体罠なのか?
「とりあえず、今の時点で伝えれることは伝えたつもりだよ。」
「…」
「この事は他言無用だよ、もちろんフリッツにも、リネアにも。今後も情報が欲しがったら私に会いに来るといい。私も君に伝えれることができたら連絡するから。」
「…」
「ヴィルフリート、君は賢いだろいから、何が自分にとって一番大切か分かるはずだ。それに、リネアをフリッツにとられるくらいなら私の方がましだと思わない?少なくとも友人は残るからね。」
「ミハイル…」




