ヴィッキーの講義
夕食の後、僕はヴィッキーの部屋に行った。
ヴィッキーの部屋は城の歴史ある装飾や絵画を残しながら現代的な家具や小物をとりいれるロマーノ王国で最近人気のスタイルのインテリアだった。きょうだい揃ってセンスがいい。
ヴィッキーは僕にカフェオレとたまごを用意してくれた。
「何でたまご?」
「包みをとってみなさい。」
たまごの包みを剥ぎ取るとチョコレートが出てきた。
チョコレートを食べると中に何か入っている。
「ん?…おもちゃ?」
小さな動物の人形。
「うわー!可愛い!こんな楽しいお菓子初めてだ。チョコレート自体もおいしいね。ミルク味で。」
「こどものおやつよ、あなたにぴったりでしょう?」
「僕こどもじゃないよ。」
「男女の知識についてはまったくのこどもよ。今まで誰も何も教えてくれなかったの?お友達とそういう話、したりしないの?」
「したことないな。関心なかったし。」
「…仕方ないわね。あなたに何かある前に私が基本的な知識だけ教えてあげるわ。」
そう言ってヴィッキーは、年頃の男女が何をするか小さな声で僕に教えてくれた。
「…何で?!何でそんなことするの?!」
「何でって…男と女だから。」
「僕はいやだ。」
「いやって…。まぁ、まだいいんじゃない?無理にすることじゃないし。」
「ヴィッキーはあるの?そういうの。」
「あるわよ」
「ヴィルやフリッツもそういう経験あるのかな?」
「ヴィル君は知らないけど…」
「フリッツはあるんだね。」
なんかショックだ。
「僕、こどもは貰ってくるのか、欲しいと願うと勝手にできると思っていたよ。まさかそんな事をするなんて…。」
「新鮮な反応が楽しいわ。とりあえず、知識だけでも得たんだから、ミハイルには気をつけなさいよ。男女の関係に持ち込まれないように。」
「あいつ…僕に付き合わないかって言ったんだ、昨日。」
「え?だから昨日なんか変だったの?」
「うん…、フリッツに相談したのはその話。フリッツはミハイルの事知ってるだろ?」
「そうなんだ…。で、付き合って、図書館でいちゃいちゃしてた、と…。」
「付き合ってないし、いちゃいちゃもしてない。」
「あの場所はそういう場所なのよ。次は連れ込まれないようにね。」
「知らないよ。ちゃんと友達ならって断ったんだ。」
「甘いわね、リネア。年頃の男が気に入った女の子と友達のままでいられるわけないでしょう?」
僕はチョコレートの人形を眺めた。なんかこの人形、ヒョウっぽい。
「獲物が油断しているところに距離をつめて…」
ヴィッキーが僕を押し倒す。
「がぶっ!」
ヴィッキーが僕の上に馬乗りになった瞬間ドアが開いた。
「お前たち…何をしてるんだ。姉上もついにそっちに行ってしまったのか…?」
「フリッツ…勘違いしないで。ヴィッキーが僕に男女の関係をレクチャーしている最中だ。」
「姉上…、実技はいらないんじゃないか?」
「してないから!」
二人はビールを飲みながらフリッツに今日の話をし始めた。
「…油断も隙もないやつだ。」
「どうしたらいい?」
「関わらないのが一番だ。」
「でも、同じクラスだし、ユーラのことは嫌いじゃないよ。くっついてこなければ話しもあうし、楽しいし。」
「とにかく二人きりになるな!」
「リネア、この男にも気を付けなさいよ。」
「フリッツの事?」
「夜に部屋にいれるんじゃないわよ。あっちがヒョウならこっちは狼なんだから。」
「フリッツがそんなことするわけないだろ?」
「リネア、分かってないわね。」
「姉上…頼むから…」
フリッツの顔が赤くなる。
「フリッツ、顔赤いよ。」
「…」
「フリッツは男女の関係になったことあるんだって?」
「姉上…」
「僕、何となくショックだったよ。」
「…。遊びだし、お前と会う前のことだし。」
「…。」
僕はフリッツから顔を背けた。
「リネア、あなたがもう少し大きくなったらフリッツに男女の関係をレクチャーしてもらいなさい。」
「なんで?」
「面白そうだから。リネア、私あなたが妹になるなら歓迎するわよ。退屈しないわ。」
「僕が?ヴィッキーの?意味がわからない。」
フリッツが顔を真っ赤にしたまま部屋を出た。




