語学研修 4日目
語学研修4日目。今日もロマノの妹のアリーナが僕の隣に座る。
アリーナは、当初警戒していたが話してみたらとても気さくで賢い令嬢だった。変に媚びてくることもなく普通に話しやすい。
「ヴィルフリート、昨日の宿題はできました?」
何故か昨日から呼び捨てにされる。
「まぁ。」
「そしたら少し教えてもらえます?私どうしても理解できない問題があったんですが、お兄様に聞いても教えて貰えなくて…。
最近変なんです、お兄様。」
「変?」
「ええ。ボーッとしてたり、そうかと思ったら行きなりどこかにいかれたり。」
「君は、もうひとりの義理の弟さんとは一緒にいないの?」
「セルゲイのことでしょうか?父の所有する屋敷には一緒に住んでいますが、顔をたまに合わすくらいですね。」
「そう…。まあ僕も妹とはそんな感じだな。」
「あら、妹さんがいらっしゃるのですね。」
「あぁ。」
アリーナの勉強を見ていると他の令嬢数人が声をかけてきた。
「あの…私たちも教えていただけませんか?難しくて困っていたんです。」
「もちろんですわ!ヴィルフリート、さぁ、みなさんに教えてあげてくださいな。」
「アリーナ…君が言う?」
気づいたら5、6人僕のまわりに人が集まっていた。
以前の僕なら考えられない。こんなふうに他人に何かしようなんて思うことはなかった。
オスカルに会って、フリッツに会って、カールに会って…僕は少しだけ変わった。カール、元気にしているだろうか?
ランチを食べにクラスメートとカフェテリアに行くと、リネアたちも来ていた。既に注文して食べている。まだ僕には気づいていないみたいだ。
「お兄様が笑ってる…」
アリーナが呆然としている。
「笑わないの?」
「私以外の人に笑っているのなんて見たことありませんわ。しかも、あんなふうに…。」
ロマノは時折ふっと笑みを浮かべる。もちろん視線の先にはオスカルがいる。
「アリーナ、寂しかったりする?」
「…分かりません。でも、びっくりしていますわ。」
ロマノがオスカルに何度も触れる。オスカルは気にしていないようだけど、僕は不快だ。オスカルは僕のものだ。誰にも触れて欲しくない。
「やっと会えたね、リネア。」
僕はリネアを後ろから抱き締めた。
回りからキャーキャー言う声が聞こえる。
「…ヴィル、昼ごはん?」
「うん、今来たとこ。美味しそうだね、それ。」
「食べる?」
リネアはスプーンを僕の口に入れた。
「うん、僕もこれにする。」
「ヴェルナドッテ君、妹がお世話になっているようで。」
いつの間にかアリーナもこちらに来ている。
「ヴィルフリート、あなた、リネア様とそういうご関係なの?」
「…どうだろ、リネア?」
僕は抱き締めたまま離さない。
「どうもこうも…。お前後で覚えてろよ。」
リネアがぼそっと呟いた。
「アリーナ様、ヴィルと僕は幼なじみなんです。」
「そうでしたの。私たち、実はこちらにきてすぐお二人を街でお見かけしたんです。とても仲が良さそうでしたからもしかして…と思っていましたの。」
「リネアは違うって言ってたよ。」
ロマノが返事をする。
「そうなんですか?…では、私にもチャンスがありますよね?」
そう言ってアリーナは僕をリネアから引き剥がして僕の腕を引っ張った。
「チャンス…?何の?」
「まだ言いません、これからですから。」
アリーナが笑う。
何なんだ…?!
「さっ、元の席に戻りますわよ、お兄様、リネア様、失礼します。」
そのままアリーナは僕の腕をクラスメートのいるテーブルに連れて行った。アリーナの目が少し赤い。
「…君、お兄さんの事…」
「少し寂しいみたいです。さ、注文しましょう。」




