今日の報告
ヴィルとフリッツと僕の3人で夕食後集まってコーヒーを飲んだ。久しぶりにお菓子が作りたくなる。
「それで、そちらのクラスはひたすら文法の復習だったの?」
「そう」
「地獄じゃん。」
「そうでもないよ、フレーデル語は文法が論理的につくられているからある意味スモーランド語より学びやすい。」
「…確かにそうかも。」
「リネアはどうだったんだ?」
「うん、量が多くて宿題に持ち帰ってきたから、後少ししたら部屋に戻るよ。」
「俺が手伝ってやるぞ?」
「それじゃ意味がないじゃないか。」
親バカか。
「…そう言えば、ミハイルはどうだった?」
「頭いいよ、さらっと課題も終わらせてたし…、あ!」
「何だ」
「ねぇ、ユーラの弟までこっちに留学してたってフリッツは知ってたの?!」
「あぁ…、実は昨日知ったんだ、俺も。そいつと同じクラスだったんだろ?」
「うん、何でしってるの?」
「そりゃ、俺が皇太子だからだろ」
「意味不明だし…。」
「何それ、弟?あの男の?」
「うん、メガネの真面目そうな子だったよ。僕たちの一つ下で。静かな感じの子だよ。ユーラと違って。」
「あれも静かだろ、陰気、陰キャだ。」
「そうかぁ?笑い上戸だし、結構お茶目キャラじゃない?」
「…。懐かれたか。あれに。」
「…また。」
二人が凄く嫌そうな顔でこちらを見てきた。
「…とりあえず課題をやってくる。」
「リネア、本当に気をつけろよ。」
「リネア、食べ物につられたら駄目だよ。」
過保護な保護者二人を置いて僕は部屋に戻った。
「ヴィル…、まずいぞ。早くもリネアがミハイルに気に入られた。」
「…、まぁ大体予想通りですけど。フリッツへの当て付けじゃないんですか?」
「どちらにしても最悪だ。…とりあえず、クラス担当の講師に側近の一人を仕込んでおいた。何かあったら逐一報告が入るはずだ。」
「抜かりないことで。…貴方が敵じゃなくてよかった。」
「状況によるだろ?」
フリッツがにやっと笑う。
「確かに…。」つられて僕も笑う。
「ロマノの弟の情報はあるんですか?」
「正直ノーマークで全然知らない。あの妹とミハイルは定期的に会うが弟は今回が初めてだ。」
「僕は今日1日妹のアリーナにつきまとわれて一緒にすごしましたが…、そのニヤニヤした顔辞めてください。」
「だって…。すごく積極的な娘だろ?悪い奴じゃないぞ、兄と違って。」
「そうなんです。あの国の、あの家から来たと思えないくらい普通の令嬢なんです。いや、寧ろ普通の令嬢より擦れていないというか…。」
「あれは、ミハイルが唯一心を許し大切にしている肉親だ。あれの家は少し複雑でな。ミハイルとアリーナの母はアリーナを生んですぐ亡くなったんだ。」
「詳しいですね。」
「再従兄弟だから。」
「え?」
「俺の母とミハイルの母がいとこ同士だったんだ。」
「そうでしたか。…それで、何故フリッツはミハイルに懸想されているのですか?」
「俺にも全く理解できん。大体本気か単なる嫌がらせかも分からんしな。ああいうのは相手にしないのが一番なのだが…。」
「今回はそうもいきませんね。」
「まったく…。俺の当初の計画では今頃リネアが俺を男として意識し始めるはずだったんだが、ただライバルを増やしただけで何の進展もないとは。」
「勝手にそんな計画しないでください。僕に断りもなく。」
「そなたはアリーナと交流してろ。お似合いだぞ、人形のセットみたいだ。」
僕はフリッツの腕をつねった。




