語学研修 2日目
「…猛特訓だ。」
「…」
「情けない、俺と半月一緒にいながら、皇太子のクセにSがとれなかったなんて。」
「すみません…」
ヴィルがフリッツに叱れてしょんぼりしている。珍しい光景だ。
「まぁまぁ、ヴィルは忙しいから僕みたいに好きなことだけできる訳じゃないし。」
「リネア、情け無用だ。俺が恥ずかしい。ヴィルがいるからスクールに行かせたのに、クラスが違っては意味がない。お前Sランクだったんだろ?じゃあもう行かなくてもいいから俺の仕事を手伝え。」
「何を訳の分からない事を…。やだよ、そんなの。」
「言うこと聞かないと飯を抜くぞ」
「だから僕は犬じゃないって!」
ヴィルが部屋の片隅で勉強を始めた。相当悔しかったらしい。
「…」
「お前もうかうかしていられないぞ、新学期が始まったら数学や物理もある。ヴィルは一通りA以上とれるだろうが、お前はたまにあやしい科目があるだろう。特別に国賓対応してやってるんだ。単位を落としたら承知しないからな。」
「…好きなことだけやってたい。」
フリッツに頬をつねられた。
次の日、クラスに入ると生徒は僕を含め4人だった。
僕とユーラ、昨日カフェに一緒に行ったポニーテールのミーシャ、それから真面目そうなメガネの男の子。
「おはようリネア!」
「おはようミーシャ」
「思ったより少ないわね。」
「うん。」
「おはようリネア、ミーシャ。」
「おはようございます、ロマノ様」
ミーシャが目をキラキラさせてユーリを見つめる。
「お隣に座ってもよろしいでしょうか?」
「ごめん、リネアと昨日から約束してるから」
「僕はかまわ…」
僕はユーラに足を踏まれた。
「では授業を始める。私はアウグスト・フォン・マイヤーだ。よろしく。みんなも自己紹介を。」
「リネア・エステル・カールソン、スモーランド王国出身です。よろしくお願いします。」
「ミーシャ・カトリーヌ・フーシェです。ランク王国から来ました。」
「ミハイル・ユーリ・ロマノ。リスラ共和国から来ました。」
「セルゲイ・ロマノです。リスラ共和国から来ました。」
…えっ?!二人ともリスラ共和国出身?!
「ユーラ…、知り合い…だよね?しかも同じ名字?」
「…腹違いの兄弟。」
「…そう。」
…なんかすごいクラスに入っちゃったな。
ヴィルやフリッツに言うのがこわい。
授業はSクラスと言うだけあって、フレーデル語で書かれた論文を読んで要点をまとめ、自分の感想を発表するという初日からなかなか骨のある課題がだされた。
「リネア、お昼どうします?」
「行く。ミーシャは?」
「お腹へりました。ロマノ様は?」
「うん…、もう少しだけきりをつけたらにしようかな。」
「弟のロマノ君は?」
「私は行きます。お腹が減ったので。」
「じゃあ行ってくるね。」
僕が行こうとするとユーラが腕を引っ張った。
「…行く?」
「リネア。これ、この部分。」
「ん?」
ユーラが論文の12ページ目を指さした。
「納得できなくて、ちょっとだけつきあって。」
「いいよ?…じゃあ二人とも先行ってて、昨日のカフェテリアでいい?」
「分かった、まってるね!」
ユーラは論文を横に置くと僕を隣に座らせた。
「ん?」
「嘘」
「んー?」
ユーラが笑う
「んな訳ないじゃん。もうだいたい課題は終わった。」
いたずらっぼく笑った顔が…美しすぎる。
僕はまだ半分も読めていないのに。
「じゃ、お昼いこうよ、お腹減ったから。」
「やだ、ちょっとだけ肩かして。実はあまり寝れなくて。」
ユーラが僕の肩に寄りかかった。シトラスのいい匂いがする。
「凄くいい匂い。どこの香水?」
「うちの国のだよ。私がオーダーしたの。」
「うわー、めちゃくちゃ好きな匂い。」
「リネア…嗅ぎすぎ」
「ごめん…。」
ユーラがまた笑う。
「笑いすぎ。」
「リネア…君おもしろいね。まだ会って3日しかたってないのに、私がこんなふうになるって滅多にないんだよ。」
ユーラが笑うとさらに美しく見えた。
「もーいいからお昼行こうよー。」
「じゃ、行こ。」
ユーラが僕の腕に手を回す。
「綺麗なヒョウに懐かれた気分だ。」
今度はお腹を抱えて笑った。結構笑い上戸のようだ。
カフェテリアで合流した二人は先に食べはじめていた。
笑っているユーラを見てロマノ弟君が呆然としていた。




