夜のカフェにて 1
僕は夕食後ヴィッキーとカフェに出かけた。
「そりゃ怒られて当然だわ。」
「うん…、あとで自分でも悪いと思ったよ。ヴィッキーは、その二人のこと知ってる?」
「私はあまり知らないのよね。小さい頃は遊んだこともあったけど。年に一回くらいどこかの国で顔を合わせるけど、年も下だしね。綺麗な子だったでしょ?」
「うん…すごく綺麗だった。」
「あら、リネアのタイプ?」
「うん…。」
「あなた、そっちなの。」
「へ?」
「だから、女性に興味あるの?あ、ミハイルは一応男だけどね。」
「まぁ…どちらかと言えば。」
「そう…。私は駄目よ。男にしか興味ないから。」
「ヴィッキーは大丈夫だよ。好きだけどフリッツの女版て感じだもん。」
「…。なんて言っていいかわからないわ。でもリスラ共和国の人間だからね、気をつけるに越したことないわよ。」
「わかった」
「そう、気を付けるに越したことないよ。」
前の席にいる人がクスクス笑いながら振り返った。
今朝会った、綺麗な人…。
「ユーラ」
「リネア、だった?今朝はどうもありがとう。楽しかったよ。…久しぶり、ヴィクトリア。」
今度は髪を結んでいた。
「久しぶりね。」
まさか同じ日に二回会うとか…。
「偶然かしら?」
「こっちが聞きたいところだよ。」
ユーラは何人かの男性と来ているみたいだった。
「一緒にボードゲームしているんだ、君たちも参加しない?」
「何か賭けたりしないならいいわよ。」
「しないよ、遊びだもん。」
「いいわ。リネアはどうする?」
「やりたい!」
フレーデル王国はボードゲームが有名で、僕とヴィルもよく遊んでいる。ユーラが遊んでいたのはホルスデアガイラー。全員同じ数字のカードを15枚受け取り、場に出たマイナス5から10までのカードを自分の手持ちのカードを一枚ずつ出しながら取りに行くゲームだ。取ったカードの点数が一番高かった人が勝ち。駆引きと性格が勝敗を決める。
「へぇ、リネアは強いね。」
「何度もやっているからね。」
僕が連続で2勝した。
「じゃあ、私も本気をだそうかな。」
それから本気になったユーラにまったく勝てなくなった。状況判断力の高さ、駆引きの強さが半端ない。
「ミハイル、あなたかなり前からこのゲームやっていたわけ?」
「今日が初めてだよ。さっき買ってきたところ。
「…」
なるほど、油断しちゃいけない相手だって実感した。
ヴィッキーは一度も勝てないことが不満だったらしく僕とユーラを追い出してユーラと一緒にいた人たちとゲームを始めた。
ユーラが僕に声をかける。
「リネア、何か食べる?」
「うん、少し小腹が空いた。」
「じゃあ、マルチパンを頼む?アーモンドは食べれる?」
「うん、好き。」
ユーラは僕にマルチパンとコーヒーを頼んでくれた。
「おいしい、ちょっと甘いけど」
「うん、私には甘いな。嫌いじゃないけど。」
綺麗に結ばれた髪、長い睫毛。細い指。…本当にこの人が事件に関わっているんだろうか。
「見すぎ」
「え」
「私の顔、見すぎ。」
ユーラが笑った。
「ごめん…」
「嫌じゃないよ、かわいいなって。」
ユーラが僕の耳元で囁く。
「君が嫌じゃなかったら、また会おう。二人で。」
僕は自分の顔が赤くなるのが分かった。
ユーラが僕の髪に触れる。
「綺麗な髪の色。瞳は私と似た色だね。」
エメラルドグリーンの瞳…。
「君の兄も同じだったのかな」
ユーラが笑った。
「君が襲われた理由を知りたかったらおいで。他の人に言わないと約束して、一人でこれるなら。」
そう、耳元で囁いて、僕に書いた紙を渡した。
「リネア、勝ったわ、帰るわよ!」
「うん…」
帰りの馬車で僕は無言だった。
「どうしたの。何か言われた?」
「…ううん。強かったよね、ゲーム。」
「…強かったわ、あの子、侮れないわよ。」
明日の朝 10時 場所は美術館の前




