ご令嬢と社会見学
僕はどうしてここにいるんだろう。
しかもフリッツのお姉さんとその友人と…。意味が分からない。
「ヴィル君、次は?」
「はい、次はマヨネーズとサワークリームをあわせて…」
何故か僕はヴィッキーの研究室の隣にあるキッチンで料理を教えている。
スモーランドの料理で見映えのよいものを希望ということだったから僕はスモーガストルタというサンドイッチケーキを作ることにした。
ヴィッキーの友人はフリーダとエマと言う名前で二人ともフレーデル王国の公爵令嬢らしい。
僕の知っている令嬢たちと違ってこの人たちはとても話やすかった。政治や経済、社会情勢にも詳しく、自分なりの考えをもっていた。やはりこの国は進んでいる。
スモーガストルタの具材は小エビとハムをメインにサラダを合わせた。飾り付けにセンスを問われる。
「すごーい!ケーキみたい。綺麗!」
「僕の国は甘いケーキじゃなくてこれをお祝いに食べることもよくあるんです。」
「ちょうどランチの時間だからゲオルグたちと食べようか!」
ヴィッキーの研究室の仲間たちも加わって賑やかな昼食をとった。僕は学生生活がこんなに新鮮で楽しく感じられたのは初めてだった。この国では僕は一学生で、誰も皇太子として接してこない。居心地がよかった。
「殿下…おいしいですよ、相変わらず。」
「ヴィルヘルム公爵」
あ、いた。皇太子扱いする人。
「やだー、二人とも硬い。ここはスクールよ、ヴィル君とゲオルグ、ね?」
「ねって…」
ヴィッキーは軽い。
「じゃあ、ヴィル君、よろしく頼む。」
えっ!?そうなの?
「じゃあ…ゲオルグ、さん。」
「ヴィル君かわいー!」
エマが僕に抱きついた。
僕は昼から他の研究室を案内してもらったり、スクールのおすすめの場所を教えてもらった。
「ここが図書館、あの奥が学習室。ひとりで勉強したくないときはここに来るの。あのコーナーは人の目に入りにくいから、好きな子をあの席に誘う人も多いの。」
「あのカフェテリアのアップルパイはお薦めよ、クリームを多めに頼むといいわ。」
…令嬢の情報は役に立つようなたたないような内容が多かった。
「今日はみんなで夕食に出かけて、後でサッカーを見に行くわよ。」
「ヴィッキー、僕はあなたの親切に感謝しています、とても楽しいし…。だけど、今日だけですよ。フリッツにリネアを貸すのは。」
「ヴィル君、君はもっと遊ばなきゃ駄目。」
「…フリッツにも同じこと言われました。」
「一人の女の子ばっかりじゃなく、好きじゃなくてもいいからもっと他の人に目を向けてみなさい。世界が変わるから。」
「…努力します。」
このきょうだいは、そっくりだな。
…他の人に目を向ける、か。確かにフリッツに関わってから僕は少しだけマシになった気がする。僕も変われるんだろうか?
オスカルにとらわれている自分を。
…無理だろうな。
夜に連れていってもらった球技場は明るくとても現代的な建物だった。僕の国でもサッカーは人気の球技だけど、この国の人の感情の入れ方はまるで違う。違うチームのサポーター同士はまるで敵のような雰囲気でお互いを罵りあったり、殴りあったりする姿までみられた。
ゲームは白熱していた。片方のゴールが決まるとすぐに相手も得点を入れ返した。こちらの地元のチームが接戦の末勝利して、球技場は大歓声に包まれた。
僕も三人と一緒に応援していたらすっかりはまってしまい帰りに地元チームの選手のユニフォームを購入した。次はオスカルと来よう。絶対楽しんでくれる。
…そう言えば、どうしてるかな、あの二人。
フリッツが何もしていないことを祈るばかりだ。
僕はその後パブに連行され、酔っぱらい令嬢三人に絡まれた。
お酒を飲まされて、最後は記憶をなくした。
気づいたら朝、令嬢三人と研究室の仮眠室に転がっていた。
…服は乱れてないようだ、よかった…。




