二人でお出かけ 2
「やっと二人になれた」
フリッツが耳元で大きな声で話す。
「よく二人でエリザベスの散歩にいってるじゃん。」
僕も大きな声で返した。
「エリザベスもなしで。」
「ぶっ…なんだそれ…」
僕は笑った。
今日はフリッツがクラブというところに連れてきてくれた。先日ヴィルが行ったという話を聞いて僕が行きたいと頼んだからだ。ヴィルも誘いたかったけど、今日ヴィルは昼からヴィッキーたちにどこかに連れていかれたから二人で夕食後に出かけた。
「何飲む?」
「ビール、飲んでみたい。」
「ははっ!分かった。じゃあ俺の少し分けるから。」
フリッツは一応僕にはアルコールのはいっていないお洒落な飲み物を頼んでくれた。
「乾杯。」
「フレーデル王国へようこそ。」
「…うわ、おいしっ」
ビールってこんな味だったんだ。夏にピッタリだ。
「…飲み過ぎるなよ。」
フリッツがグラスを取り上げた。
地域のビール毎にグラスのデザインも違うらしい。
「うわ、あのグラスかわいい!」
「今度買ってやるよ」
「嬉しい!」
大音量の聞いたことがない音楽、色が変わるライト、煙がかった空間、楽しそうな笑い声、肌の露出が多い服装…。
すべてが初めてで、まるで異空間に来たみたいだった。
フリッツは僕に踊りかたを教えてくれた。僕たちの知っているダンスと違いすぎて難しかったけど、すごく自由にアレンジできて楽しかった。
「この音楽楽しいね」
「南の大陸の音楽だ。そういや、お前とのダンス…思い出した。」
フリッツが笑う。
「やめて…僕だって男の方ならそこそこできるんだから。」
フリッツはどのダンスもうまくて、いろんな令嬢に声をかけられていたけど毎回断っていた。
「僕に気をつかわなくていいよ、見てるのも楽しいから。」
「気を使ってるわけじゃなくて、俺はお前といたいの。」
「…なんで?」
「…」
フリッツの顔が赤い。ビールのせい?
次の曲は、また違う曲調で僕が一応女役だから首に腕を回すよう指示された。フリッツが僕の腰を支える。
密接度の高いダンスにこちらも恥ずかしくなってきた。
「リネア…顔赤い」
心臓がドキドキする
「なんか…めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。」
「俺も…何か飲む?」
「あ、くださいっ!」
男同士で変な雰囲気になる所だった。
クラブの建物をでると、外の涼しい風が心地よかった。
「気持ちいい…歩いて帰りたいな。」
「歩くと一時間くらいかかるぞ。」
「いい!歩こー!」
僕は最後にビールをグラス半分くらい飲んでしまって気分が高揚しているのが自分でも分かった。
「酔ってるな、危ないから馬車に乗せる。」
「やだやだー!歩く、フリッツのケチ!」
わがままを言う僕をフリッツは馬車に乗せた。
僕はそのまま寝てしまったらしく、目を覚ましたら城の庭園の前にいた。
「ついたぞ」
「…ごめん、また寝ちゃったみたい。」
僕たちはベンチに腰をかけた。
「酔いは覚めたか?ほら、水」
「ありがと…。まだ少しぼーっとするけどさっきよりはいいかも。」
「少し歩くか?それとも部屋に帰る?」
「歩きたい、…いい?」
「あぁ。」
僕たちはエリザベスの散歩コースを歩いた。
「僕さ、この国に来れてよかったよ。本当にありがとう。」
「まだまだこれからだろ?」
「うん、早くも移住したくなってきた。」
僕が冗談ぽく笑って言うとフリッツが僕を抱き締めた。
「フリッツ…?」
「移住…したら?手続きとかどうにでもなるし。」
「こっちに来たら僕どんな職業でもつけるしさ、みんな僕の見た目を受け入れてくれる人もたくさんいそうだし。」
「うん…」
「だけど…駄目だな」
「なんで?」
フリッツが僕の目を見つめる。
「ヴィルがいるから。」
「ヴィルが好き…だから?」
なんでそんな顔…?
「親友だから、裏切れない。僕がいないと駄目なんだって、あいつ。僕よりしっかりしているくせにさ、しっかりしてないとこもあるから…。」
僕は目を反らした。フリッツに本音を見抜かれたくない。
僕は僕のやりたい事をさがして、自由に行きたい、
好きな場所に行って、好きな事をしたい。
だけど
それは叶えられないと分かった。
僕はヴィルから離れられない。
「泣くな」
「僕、泣いてる…?」
「リネア…、本当はどうしたい?」
「ふぇ…」
僕はまたヴィルの前で大泣きしてしまった。
本当の気持ちは言えなかったけど、
多分フリッツは分かってる。
フリッツはそのまま泣き止むまで優しく頭を撫でてくれた。




