二人でお出かけ 1
週末、王都の街にヴィルと出かけた。フリッツは仕事があるから行けないと残念そうだった。
「二人で出かけるって久しぶりだな!」
「本当だね。何年ぶりかな…。」
小さい頃、二人で街を探検したことを思い出す。
「ヴィル、昔二人で街を探検してたら大雪が降ってきたの覚えてる?」
「目の前が突然真っ白になって怖かった時の話?」
「そうそう、迷子になったかと思ったよな。」
僕たちは昔の思い出を話しながら家具屋や雑貨屋をのぞいたあと、市場でブラットブルストを買ってベンチに座って食べた。とても大きなソーセージがフランスパンのような固めのパンに入っていた。
「うまー!」
「オスカル、マスタードこぼれてる。」
ヴィルがハンカチで僕の口をふいてくれる。
「フレーデル王国にきたらこれを食べろってガイドブックに書いてあったんだけど、本当だった!」
「うん、美味しいね。」
ヴィルがとてもリラックスしてるのが分かる。自分の国じゃないから皇太子としての人目を意識しなくて済むのが大きいのかもしれない。久しぶりにヴィルのこんな表情みた。
「ヴィル、嬉しい?」
「うん…。来てよかった。」
「まだこれからだろ?」
「確かに。」
本当にいい笑顔だ。…一緒にこれてよかった。
僕はヴィルに寄りかかった。ヴィルも僕にもたれた。
小さい頃と同じ…。
「僕たちいつまでこうして一緒にいられるかな?」
「…。約束したよね。もう僕をひとりにしないって。」
ヴィルが僕を見つめる目に怒りと不安を感じる。
「…もう僕は死なないから大丈夫だよ?」
「そうじゃなくて、僕の側にいてくれるんだよね?」
「…どういう意味?」
「僕は正直心配してる。元々自由で好奇心旺盛な君がこの国の自由で平等なところに刺激されて、もう帰りたくないとか言い出さないか…。」
「さすがヴィル。僕、そんなことちょっと思ってた。」
「ほらね…。」
ヴィルは僕の首に両腕を回して顔を近づけた。
「近い」
「駄目だよ、僕は認めない。」
「なんで僕の人生にお前の許可がいるんだよ。」
「オスカル…分かってる?」
「何が」
「君はスモーランド王国の国民で、僕は皇太子だってこと。」
「僕はお前より下だって言いたいのか?」
「違う」
何なんだ、こいつ…。
「僕は、いざとなれば使えるものは何でも使う卑怯な奴だからね、権力だって必要に応じて使うってことだよ。」
「本当に卑怯だ。…はっきり聞くけど、お前、僕とどうなりたいんだ?」
「…オスカルは?」
「僕は別に今と変わらない。お前が国王になるなら役に立てる職業に就きたいと思うし、国に貢献したいとも思う。だけどただ誰かに嫁ぐしかない将来なら、僕は国をでる、もう決めた。」
「…考えておこう。オスカル、前にも言ったけど僕はリネアに性的な感情を抱いているわけじゃない。」
「じゃあ、なんなんだ」
「僕もね、ずっと考えてた。僕がどうしたいのか、君をどう思っているのか。…聞きたい?」
聞きたいような、聞きたくないような、聞いたら僕たちの関係が壊れてしまうような気がして怖くなった。
「僕はね、オスカル以外はいらない。」
「え…」
何なんだそれ!?
「君以外に執着がもてないんだ。」
「…だから?」
「だから、君が側にいないと僕はまともな皇太子として役割を果たせるか自信がない。」
「…なんだよ、それ。」
「君がいないと僕は生きて行けないってこと。ずっとこうやって一緒にいたいってこと…。分かった?」
「分かったような、分からないような…。つまり、別に女としてみてるって訳じゃないんだな。」
「違う。」
「ならいいけど…。」
「ただ」
「…ただ?」
続くのか?!
「他の男にリネアをとられそうになるなら、僕は自分が男であることを利用して、リネアをとられないようにする。リネアとオスカルを切り離す事はできないからね。必要に応じて使い分けるつもりだから覚悟して。」
「覚悟って…。」
ヴィルは僕が反論しないことに満足したようで、のこりのパンを食べ始めた。
ヴィルは僕にどう言うと僕がヴィルの言うとおりにするのかをよく把握している。本当にこいつは卑怯な奴だ。だけど僕は拒めない。僕がいなくなったらヴィルがどうなるか想像できるから。
僕はヴィルに弱い。
そして、この時僕たちは気づいていなかった。
僕たちのことを影でじっと見ている人たちがいたことを。
「お兄様、あの方たちは?」
「スモーランドの皇太子と、お気に入りの令嬢、だったかな?」
「私あんな綺麗な殿方を見たの初めてです。」
「うん、美しい皇太子だね。変わった趣味をしてるみたいだけど。」
「私、お近づきになりたいですわ。」
「もう少し待っててね。」




