アンと僕
「アン…、ヴィルのことだけどさ。どう思った?」
僕の部屋でお茶を入れる侍女のアンに先程おこったことを聞いてみた。
「殿下のことですか?…そうですね。リネア様にご興味をもたれたかと。」
「リネアが本物のリネアだった時、一度でもオスカルがいない時に一人で訪ねて来たことなんてあった?」
アンはリネアの専属侍女で僕たちの7歳年上の姉のような存在だ。僕は密かに彼女に憧れていたけど、今もそれは心に秘めたままにしてある。アンに身の回りの世話をしてもらうことがリネアになった当初どれだけ恥ずかしかったか…。
リネアがおかしいと一番最初に気づいたのもアンだった。
僕は彼女にだけ、僕が本当はリネアじゃなくなってしまったことを打ち明けた。
最初彼女は半信半疑だったけど、今は信用して僕に協力してくれている。
「…ないですわね。オスカル様を訪ねていらっしゃることはありましたけど、今日のように手の甲に口づけをされるところは一度も拝見したことが…」
「うわー!言わないで!せっかく洗って忘れようとしたのに!気持ち悪すぎる!」
「あらあら、身分的にも釣り合いもとれますし、美男美女お似合いですよ。」
「アン?!冗談でも聞きたくないよ!なんで僕が男と…。」
「…今はまだ受け入れられなくても、ゆくゆくはリネア様はどこかの殿方の妻になられるのです。今までは幼少だったこと、またお体も弱かったことからあまりそういったお話が来ませんでしたが、今はご健康な公爵令嬢。しかも国王の重臣である父上をお持ちのリネア様にお近づきになりたいと思う殿方は殿下でなくともたくさんいらっしゃるはずですよ。私はいいと思いますけどね、殿下。思いきって殿下に本当のことをお伝えしたらいかがですか?きっとお喜びになりますよ。」
「…それだけは嫌だ!アン、僕は皇太子妃になんてなりたくない。世界中あちこち駆け回る父上のような外交官になりたいんだ。それはリネアの希望でもあるんだよ。…女じゃ無理だろうけど。」
なんで僕は女になんかになっちゃったんだ…。
「リネア様は、将来お姫様になりたいとも言っておられましたよ。ほら、殿下と叶えてあげたらいかがですか?」
「アン…僕をからかって楽しんでる?」
「ふふっ、ばれちゃいました?」
アンと僕の二人だけの時間。
君にこの気持ちを伝えることも、叶うこともない。
殿下を選べなんて言われて、いやなのに、
でも一緒にいられることは嬉しい。君がずっとそばにいてくれたらいいのに。




