フレーデル王国 初めての朝
「それで?」
「だから、寝てたから置いてきたの。」
スクールの研究室で殿下の姉のヴィッキーとレポートをまとめている。ヴィッキーは私の3つ下で幼なじみだ。今年から同じ医学部の研究室に入ってきた。
「ヴィッキー、どうして殿下と二人にしてやらなかったんだ?殿下が昨日をどれだけ楽しみにしていらっしゃったか伝えたはずだろう?」
「ゲオルグ、あんた、うちの馬鹿が興奮のあまり間違いを犯したらどう責任とるつもり?」
「そんなこと…。」
「ないとは言えないでしょう?あの馬鹿は手も早いのよ。今まではそうだったんだから。何かあったらヴィル君がぶちギレるわよ。」
「ヴィル君て…ヴィルフリート殿下のことか?よその皇太子に変なあだ名つけるなよ…。」
「とにかく、うちに滞在する間は私が責任をもってきっちり見張るつもり。」
「その為に寮に帰宅届けを出したのか…。いいじゃないか、何かあっても…好きなんだから。俺はむしろあの令嬢が殿下を受け入れてくれたら嬉しい。」
「駄目よ、まだ早い。」
気の毒な殿下…。
「…でもあの子、自分のこと男の子だって思っているのかしら?雰囲気もね、女の子じゃないみたい。不思議な子よね。」
そうなんだよな、ヴィルフリート殿下の女装姿に顔を赤くしたり、ふとした瞬間にみせる表情が少年のようだったり。ヴィッキーは男勝りとは言え、彼女のような違和感を感じたことなかった。
「あのフリッツが気に入ったのがあの子ってのが…。まぁ、普通のお嬢さんじゃないと思っていたけど。」
「姉として心配?」
「…面白いじゃない。好きな女の子に全く相手にされない弟を見るのは。もう一人のライバルも同じような感じだしね。」
「ヴィル君か?」
「今のところ、ヴィル君がアドバンテージをとっているわね。あの二人の雰囲気、普通じゃないもの。」
「かわいい弟なんだ、協力してやれよ。」
「それで留学を薦めるとか、あんたもどうかしてない?よその国の皇太子まで巻き込んで。」
「大切な殿下のためだからな。」
「ほんと、昔からあんたはフリッツを溺愛しすぎ。甘やかすのもほどほどにね。」
◇◇◇
場所は城に戻る
僕は朝食をフリッツと食べている。オスカルはヴィクトリア様の部屋に昨夜とまり、まだ寝ているらしい。
「…とまったのがフリッツの部屋じゃなくてよかった。」
「姉上が自分の部屋のとなりをリネアの部屋にするし、そなたは俺の部屋のとなりだしな。…まったく。」
朝食はコーヒーにハムの盛り合わせと穀類のつまったパンだった。ハムが美味しい。
「昨日は休めたか?そなた、すごく疲れていただろう?旅の間気を張っていただろうからな。」
馬車の旅は嫌でもオスカルの事件を思い出させる。気を張るなというのが無理だ。
「リネアは全く気にせず食べたり寝たり、道中の街並みを楽しんだりしてましたからね、いい気なもんだ。」
「あいつらしいな…。…それより、リスラ共和国の話、聞いたな?」
「はい。大統領の息子と娘が留学してくるという話ですね?」
「朝から食事が不味くなるような話だが、そなたには話しておきたくてな。」
「はい」
「兄のミハイルに気をつけろ。あれは、俺が今まで会った中で本当に最悪の男だ。妹のアリーナはあまり知らんが、とにかく兄は変人すぎる。」
「変人のフリッツがそこまで言うのは相当ですね。」
「俺なんか比較にならん。あれは人が嫌がることをするのが好きだし、見た目も性癖も謎すぎる。」
「リネアと合いそうですね、ある意味。」
「…それなんだ。俺の予想だと、ミハイルはリネアの好みの容姿だ。」
「違法取引の件といい頭の痛い話ばかりですね。」
「せっかく留学してきたのだ。ヴィルもなるべく学業に集中するように。あれはそなたと学年も違うから、寮以外ではそれほど会わずに済むだろう。」
「はい」
「ミハイルの妹がそなたらと同じ学年だがな。」
「…。いつこちらに来る予定ですか?」
「8月だ。とりあえず1ヶ月はゆっくりしろ。俺もその間はリネアに専念する。」
「しなくて結構です。仕事してて下さい。」




