フレーデル王国へ
「暑い…」
馬車が南下する度に気温が上がる。
日陰に入ればマシだけど、こんなに暑いのは始めてだ。
「最近特に温暖化で暑いみたいだからね。よかったんじゃない?髪の毛切ってきて。」
「まだその話…しつこくない?」
「だって、もともと短めだったのにさらに短く切るなんて、しかも僕より短いなんて…。」
ヴィルは僕が髪を短く切りすぎて不満らしい。毎日顔を見る度にぶつぶつ言われる。
「どうせ僕のことは誰も知らないんだ、変な奴だと思えばいい。」
「まぁ、令嬢だと思われないだろうから心配は減るけどね。」
城壁を抜けた。フレーデル王国の王都に入ったらしい。
道は広く、建物も街の規模も僕たちの国とは全く違う。
「すごい…大きい…。」
ワクワクが止まらない。
船にのり馬車にのり3日後、ようやくここにたどり着いた。
これからの半年、何が起こるんだろう。
「ソーセージ、食べれるかな?」
「…君は本当に変わらないな。」
ヴィルが溜め息をついた。
馬車がフリッツの住む城に到着すると、一番にフリッツが出迎えてくれた。
「…リネア…?」
「フリッツ!」
僕は馬車からジャンプしてそのままフリッツに飛び付いた。
「リネア!…会いたかった…!」
フリッツが僕を抱きしめる。久しぶりの匂いだ…。
「僕も会いたかったよ…。」
ヴィルが僕たちの真ん中に割って入る。
「お久しぶりです、僕も会いたかったですよ。」
あ、すごい笑顔。
「ヴィル、俺はこの日を半年以上待ったんだ。少しは我慢しろ。」
「半年以上待てたんだ。そのまま大人しくしていてください。大体こんな大勢の前で…みんなに噂されますよ。」
「それが狙いだ。」
「…」
僕たちの荷物を城に側使えの人達が運び入れてくれる。
「長旅疲れただろう?まずはゆっくり休むといい。食事はできるか?」
「もちろん!お腹減った。」
「馬車の中でもお菓子食べてたよね?太るよ。」
「うっ…。明日から運動する。」
「運動なら俺も付き合うぞ。」
「フリッツ、それよりあまり餌を与えないよう気を付けてください。決して食べ物でつらないように。」
「そなた、リネアは犬じゃないんだから…。」
フリッツがそれ言う…?
スクールの寮に入るまでの間、フリッツが僕たちに部屋を用意してくれた。城の歴史を感じられる重厚なインテリア。壁画や装飾が美しい。
家具は現代のものが置いてあり機能的で使いやすそうだ。
部屋をノックする音が聞こえる。一緒に留学についてきてくれたアンがドアを開ける。
アンは寮に入るまでこちらで僕の世話をしてくれることになった。
「殿下…、お久しぶりです。リネア様…。フレーデル殿下がいらっしゃいましたよ。」
「フリッツ…?」
「入ってもいいか?」
「もちろん!素敵な部屋だね!」
「気に入ってくれて何よりだ。…リネア、少し二人だけにしてもらえるか?」
「うん?…アン、じゃあ少し部屋へ戻っていてくれる?」
「承知しました。」
アンのニヤニヤした顔が…。相変わらずだ。
二人ともソファーに座るとフリッツが持っていた籠の蓋をあけた。
中から犬が飛び出して僕の匂いを嗅ぐ。
「…もしかして、エリザベス?」
「ああ。」
「これが例の…」
エリザベスは僕の存在を匂いで確認するとフリッツの膝に飛び乗った。尻尾がパタパタして可愛い。
「散歩に行く?」
「疲れていないか?」
「馬車でじっとしていて体が痛くてさ、むしろ少し動きたい。」
「じゃあ行くか。」
フリッツはは城の庭園を案内してくれた。
「花がきれいだね、彫刻も…。」
「…リネア、背が少し伸びたか?」
「うん、少しだけ。フリッツこそ…もう180くらいある?」
「ああ、ついに180超えた。」
「いいなぁ。」
僕だけ小さい。ヴィルもカールも大きくなったのに。
「あ、カールのこと、ありがとう。ヴィルとのきっかけ作ってくれて。」
「あぁ、あれから動きはあったか?」
「…あれ?」
「何だ?」
「僕たち、今スモーランド語で話してるよね?」
「そうだな。」
「スモーランド語話せないって言ってなかった?」
「話さなかったと言うのが正しい。」
「なんで…?」
「俺がスモーランド語が話せないってわかれば他のものは安心して自国の言葉を俺の前で話すだろう?そうすることで得られる情報もあるし、逆に俺も話したくない相手と話さなくて済む。」
「で、今は?」
「他人に話を聞かれないように、だ。」
「…相変わらず」
すごすぎだよ。この人は。
「なんだ?」
「別に…。」
ヴィルもフリッツもいつも僕の先にいて、追い付ける気がしない。背だけじゃなくて、勉強だって、将来のことだって…。
「僕、勉強がんばるよ、せっかく留学させてもらったんだから。」
「頑張れよ」
フリッツが僕の頭をぽんぽんとした。
この感触、久しぶりだな…。




