二人の皇太子 2
「そなたに嘘はつきたくないから、単刀直入に言う。
リネアのこと、好きになったかもしれない。」
フリッツが僕の目を見てはっきりそう言った。…僕の嫌な予感が当たった。
「…数日前にそれはないって言ったばかりですよね?」
僕はコーヒーを入れようとして、危うく溢しそうになった。手が震えてる…。
「…数日前は本当にそうだったんだ。俺だって自分にビックリしている。リネアが実は双子の兄で、男に興味持てないって分かった途端…。」
「途端…好きになったってこと?…おかしくないですか?その流れ。」
「俺もそう思うんだけどな。男の格好して、あの話し方で、しかもあいつ天然だろ?…なんか俺、今まであんな変なのに会ったことなくて…自分でもどうしたらいいか分からない。そもそも、これが好きというものかも分からないんだが、一緒にいるとドキドキするし、構いたくなるし…なんかあいつが言うことも行動も全部可愛いし…。」
…好きってことでしょ。絶対言わないけど。
顔を真っ赤にして動揺しているフリッツが普段よりずっと幼く見えた。
「ただ、妹みたいに可愛いって思ったんじゃないですか?もしくは弟とか。」
「…だって、妹ならキスしたいって思えないだろ?数日前には一緒にいても何も思わなかったのに今ならそう思える。」
ちっ…うまく誘導できそうもない。
「勝手に想像でもキスしないでください。」
「けち臭い奴だな。想像くらい俺の自由だろ?!」
「…とにかく、あげませんよ。あれは、僕のです。キスも駄目です。」
「分かってる、そなたは大切な友人だし、分かってるが…。」
「…何ですか?」
「俺も自分が抑えられるか自信がない。」
「…抑えてください。どうせもうすぐ国に帰るんですから。早く案件を片付けてお引き取りください。」
「そなた…ひどいな。」
「ひどいのはどちらですか。先に言ったもん勝ちですよ。フリッツ、僕は後だしジャンケンは認めません。」
「ふん、女とまだ関係を持ったことも無いガキのくせに。」
「か、関係ないでしょ!」
なんなんだ、この会話は…。
「俺は、次期国王になるためにそういう感情は必要ないと今まで思っていたし、女に振り回されて国の仕事に支障を来すような奴はバカだと思っている。だから、そなたとの関係を崩す気はない。そなたは俺の将来にとっても重要な者だからな。」
「では…」
「だが、リネアは今のところ俺たちのどちらも男として意識していないじゃないか。そなたは親友で特別だとしても、それは男としてではない。」
「…で?」
「だから、どちらが選ばれても恨みっこなしだ。」
なんだそれ。何を言っているんだこの人は。
「…そんな話しには乗りませんよ。僕はもうすぐリネアを婚約者にするよう段取りを進めています。」
「卑怯じゃないか?リネアは外交官になりたいと言っていたのに。」
「皇太子妃になれば嫌というほど外国にも行けるし外交もしなくてはならないでしょう?」
「そなた…なかなかの策士だ。嫌いじゃない。」
「では、諦めてもらえますか?」
「スモーランドの皇太子妃になれるなら、フレーデルの皇太子妃にもなれるってことだろ?」
何をふざけたことを…そんなこと僕が許すわけないじゃないか。
「…とりあえず、僕も公私混同するのは好きじゃないので、この話はいったんこれくらいに。明日の話もしたいので。」
「リネアが家で待ってるから手短にしてくれ。」
「そういう言い方やめてください。なんなら今日にでも城に移動してもらうことも考えますよ。」
「そなた…、言うようになったなぁ。」
「楽しそうにしないでください。」
フリッツが今度は僕の頭をくしゃくしゃした。
一番嫌なライバルになったというのに…この人を嫌いにはなれない。むしろもっと近づいてみたいと思うのはなんでだろう。
それから僕たちは明日に備えて打ち合わせをした。
フェルセンがただ僕に会いにくるような阿呆じゃないことを祈るばかりだ。




