再会と私の観察
「…すごい人数ね。」
結局ニコライ大統領とミハイルとフリッツは同じ飛行機に乗って来た。この建物に全員泊まるらしい。
「初めまして、ソフィア様。フリードリヒと申します。」
弟のフリッツがソフィアの手の甲に口づけをした。
「お話はいつもリネアから聞いています。噂通りのイケメンね。」
「そのようです。」
…フリッツ…。恥ずかしい奴。
「ソフィア、久しぶり。」
ニコライ大統領もやはり手に口づけをした。
「別にそこまで久しぶりでもないでしょう?」
ソフィアは手をハンカチでふいた。
「冷たいっ。」
…この二人も不思議な関係だ。
「ヴィクトリア、久しぶりだね。」
ミハイルが私の頬に口づけをした。
「ミハイル…。久しぶり。」
髪の毛が少し伸びてる。…可愛い!!
平静を装っているけど絶対私今顔がにやけているわよね?!
私に最初に挨拶をしてくれたのも、気を使ってだと分かっているけど嬉しい。
「ソフィア様…。ご無沙汰しております。」
ミハイルがその次にソフィアの手に口づけをした。
「…久しぶりね。あなたとは改めてゆっくりお話をしたいと思っていたの。」
「はい。私もです。」
なんとなく場の空気が微妙な感じになった瞬間、
弟の大きな声がその雰囲気を変えた。
「リネア!!会いたかったぞ!!」
フリッツがリネアを抱き締めた瞬間、リネアがフリッツの頬を引っ張った。
「嘘つけっ!」
「…なんだっ!?」
「連絡が全くない。ユーラもニコちゃんも定期的に電話をしてくれたのにフリッツは私が電話してもかけ直してもこない。ほぼ1ヶ月連絡もなしによくそんな事が言えるね?」
「…悪い。めちゃくちゃ忙しかった。」
リネアがフリッツを振り払ってミハイルに抱きついた。
「ユーラ、会いたかった!」
「…私も会いたかった。お土産買ってきたよ。」
「ありがとう!」
…なんというか、一体どちらが彼女の婚約者なんだろう?
弟は本当に仕事バカで没頭すると他の事を全く考えられなくなる。リネアが婚約者じゃなかったらおそらく破綻するだろう。
「…リネア、僕は?」
「ニコちゃんは…最近会ったし?」
「ひどっ!だから二人を連れて来たくなかったんだ。僕の有り難みが減るしっ。」
「…元々有り難みなんてないわよ。」
「ソフィアまで!」
イーチェンがミハイルの所に来た。
「ミハイル…久しぶりだな。」
「…君には会いたいような会いたくなかったような。」
「…謝っただろ?しつこくないか?」
「…まぁ、今はリネアの面倒を見てくれていると聞いているから我慢しよう。」
「我慢て!」
「まー、イーチェンが悪い奴なのは諦めて付き合えばいいよ。」
「リネア…。ひどくないか?俺ほぼ毎日飯もおごってるぞ?」
「それはそれ。」
「それにお前が毎回クラブで酔っぱらって誰かに連れていかれそうになるのを誰がふせいでいると…。」
「…それはそれ。」
「おい、リネア、お前何をやっているんだ?皇太子の婚約者らしい振る舞いをするよう伝えたはずだぞ?」
フリッツがリネアの肩をつかんだ。
「…あなたに言われたくありません。」
リネアが顔を反らした。
「…何だ?!その態度は!?」
どうやらリネアは拗ねているようだ。明らかにフリッツを無視しているのが分かる。
今までの彼女ならあまり気にしなかったと思うがよほど寂しかったのか腹が立ったのか…。
セル君とシャーロット、ソフィアとマルク、レナートは関わるのが面倒だと思ったのかキッチンで食事の用意を始めてしまった。私もあちら側に行こう。
…それにしても
私が結婚したらこんな賑やかな感じになるのかしら?
…悪くない気がする。
知らない家に嫁ぐよりずっとよかったと思う。
「騒がしいわね。」
ソフィアが呆れている。
「…賑やかで楽しいな。」
シャーロットは楽しいらしい。
「…いつか毎年こんなふうに集まれたら楽しそうですよね?」
私がそう呟くと
「…誰かも覚悟を決めて欲しいんだがな。」
とシャーロットがセル君を見ながらそう言った。
「セルゲイ、早くしないとシャーロットを別の人にとられてしまうわよ?」
「母上…。私はまだ17ですよ?」
「婚約くらいしておきなさい。あなたの父親が国王になったら言いやすくなるはずよ?」
「…そんな…。」
「そうよ、セル君。さっさと覚悟を決めるべきよ。あたし、リネアとシャーロットが妹になったら嬉しいわ。」
「私もだ。ヴィクトリアとリネアの親戚になりたいからさっさと決めてくれ。」
「シャーロット…。動機がおかしいよ。」
「おかしくない。見てみろ、あの馬鹿馬鹿しい事を真剣に話し合っている奴らを。あんなのを見て楽しめる女性なんてそうそういないぞ?」
目線の先にリネアとフリッツ、イーチェン、ミハイル、ニコライ大統領がいて、いつの間にかどのジーンズが格好いいか品評会が始まっていた。
あれから何度もリネアとイーチェンがデイヴィッドと買い付けに出かけているらしい。コレクションが大分増えてきたようだ。
ミハイルとニコライ大統領が年代とデザインの解説をしていてあとの残りが真剣にその話を聞いている。
かなり楽しそうだ。
「…セル君は興味ないの?」
「ない。」
「あの子達は本当にいつまでたっても少年みたいね。」
「…今日は絶対に宴会だな。」
「…間違いないわね。さっ、料理を仕上げてだしましょう。」
今日はソフィア特製のリスラ料理をメインにたくさんのご馳走が並んだ。
私はミハイルの隣に座った。
リスラ料理の解説をしてくれたり取り分けてくれる、彼のさりげない気遣いにドキドキしてしまった。
良く見るとセル君もシャーロットに同じようにしていた。
フリッツは…と気になって見てみたら、ソフィアとニコライ大統領にあれこれ質問しながら楽しそうに食べている。
…フリッツ…。我が弟ながら残念すぎる。
マイペースにも程がある。
リネアは特に気にしていないようで料理の話でイーチェンと話し込んでいた。彼女はメルア大陸でのレストラン経営に関心があるようで最近イーチェンとその話をしている事が多い。
…お互い本当にマイペースなんだわ。フリッツは政治、リネアはビジネス、お互い関心がある事中心で生活しているからうまくいくのかもしれない。
私は…あの二人みたいな関係は無理だと思う。
好きになったらずっと一緒にいたいと思うし、自分を見て欲しいと思ってしまう。
食事があらかた終わるといよいよお酒が大量に運ばれてきた。
いよいよ恒例の宴会が始まる、というところでイーチェンと話し込んでいるリネアをフリッツが引っ張った。
「…ちょっといいか?」
「…うん。」
弟に手をひかれ、二人は別の部屋へ行ってしまった。




